俺が指揮官になってやる
「あ~らよっと」と、軽いノリではあるが、しっかりとパンパンなリュックを持って、進は謎のゲートを通過した。
その先に有るのは……。
所々に岩石そびえる荒野。そこでは実にダウナーな雰囲気の会話が行われていた。
「いやもう、ヤバくね? 地の軍と水の軍が結んだワケっしょ? 戦力的に俺っちら不利じゃん!」
よく言えばフランク。悪く言えばチャライ口調の持ち主は人間ではない。
弓を装備した、人馬のようなロボットであった。
「サジタリアスⅨ(ナイン)。確かに私たち火の軍は戦力的に劣勢です。ここは目には目を。ジェミニⅢ(スリー)ら、風の軍と同盟を結ぶのはどうでしょう?」
紳士的な声・口調で提案をしたのはエレガントな雰囲気の羊ロボ。アリエスⅠ(ワン)であった。
ここで、サジタリアスⅨとアリエスⅠの間にいる雄々しき獅子機獣が口を開く。ワイルドなハスキーボイスで彼はこう言う。
「アリエスⅠの策は悪くねぇ。だがな、地水同盟もバカじゃねぇ。こちらが風の軍へと向かう可能性を呼んでいるハズだ。そこを突け狙われるのは厄介だ。最悪、すでに風も地水と汲んでいる可能性もある。袋叩きにされてしまう。迂闊に動くべきじゃねぇのさ」
「レオⅤ(ファイブ)……。裏の裏を考慮すれば、貴方の推測通りになりそうですね……。では我々はどう動けば……」
彼ら機械生命体の種族名はシデロスと称す。
大きさはそれぞれ人間世界の羊や獅子の倍ぐらい程ある、この世界の住人である。レオⅤたち3名の会話を岩陰に隠れて聴いていた進は大体の事情を把握した。
(なーるほどな。あのロボット? らは戦争中で、現在不利な状況らしいな。俺もまだこの世界の情報不足だし、ここは……)
リーダー格のライオンロボ・レオⅤは苦々しく呟く。
「奴らと違う戦闘方法が採れればな……。奴らに出来ない事をこちらがやらねば勝機はまずないだろう」
「レオっち、簡単に言ってくれるねぇ~」
打開策があると言えばある。しかし、簡単にそれが出来ないから困っている。火の軍のシデロス3名は苦悶するのだった。
そこへ、「だったら、この俺に任せろ!」と聴き慣れぬ声がレオⅤらの聴覚センサーに反応した。
視線を向けた先。そこには岩上に堂々と仁王立ちしている人間。彼らにとって、見知らぬ生命体の姿を確認した。
「見知らぬ生命体ですね。あれは一体……?」
「ヘイ、ユー。何者だYO!」
人馬ロボは弓で進を指差した。進は臆することなく、ハキハキと返答した。
「俺は我道進! 有り難く思え! 俺様のアルティメット天才的頭脳でお前らを勝たせてやるぜ!」
「何っ……?」
グルルと喉を唸らせるレオⅤ。
1人の少年と3体の機械生命体。
果たして、この邂逅がもたらすものは………?