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壊れたアンドロイドン

作者: 中津川 菫




 麗かな春の朝。一人の少年が俯きがちに土手をとぼとぼという擬音でもしてきそうな足取りで歩いていた。これだけなら青春というさわやかな響きの裏にひそむ失恋という罠にかかったのだろうと推測されては誰ともなく同情の目を向けるだろう。しかし、土手を歩く通行人や空を飛ぶ鳥でさえ彼を一目映したとたんにたっぷり固まることから、彼がいかに普通ではないとわかるだろう。少年はそれを傍目に映しながらも、いつものことだとばかりにため息をつき、さらに俯きがちに歩くが、

 「おっす、優」

 そこで彼と知り合いらしき少年が後ろから声をかける

 「……ああ、おはよう……雷」

 優と呼ばれた少年も落ち込みながら声を返す

 「うん?どうしたんだ?」

 「お、おお、俺は……」

 雷と呼ばれた少年もさすがに疑問を感じたようで、問うと、優は目に涙をため、体をふるわせた。

 「ああ、もしかしてまたか……」

 「またかじゃね―っ!!なんで……なんで俺はこんなにモテないんだ―!!バカヤロ―!!」

 優は己の鬱憤を晴らすように叫ぶ。ついでに雷をなぐることを忘れずに。

 「いや、だから女がお前の顔見て逃げんのはそうじゃねえって……」

 「悲鳴をあげたんだぞ!?悲鳴を!!お前みたいなイケメンに俺たちみたいなブサメンの気持ちがわかってたまるかってんだバカヤロ―!!イケメンなんで死ね!!」

 優は雷の胸倉を掴み、ガクガクとゆさぶる。しかし、本人は涙すら浮かべるこの悩みは杞憂としかなりえない。雷は、確かに世の中の標準からすれば整っている範囲だが、優はそれのさらに上を行く。本人はなぜか気付いていないが、一つ一つの顔のパーツが絶妙なバランスをもち、中世的な美は天使かと見紛うほどだ。先程の通行人の石化はその顔に見惚れていたからである。

 「しかも顔が真っ赤だった!!なに、そんなにハンカチ、ブサメンに触られたのいやだった   の!?しかもダッシュで走り去った!もうやだなんで俺こんなにモテないんだろう……」

 その少女がなぜか怒っていることになっている優の脳内。実に残念な美形である。

 「毎度のお前の勘違いをちょっと楽しみにしている俺自身に引く……」

 雷は人知れず涙した、そのとき、

 「おっはよ―!!」

 雷と優の前方から一人の少女が走って、否、爆走していた。リアルに土煙を巻き上げて爆走する姿はなにか鬼気迫るものがある。

 「おはよ―、鶴井」

 「おはよう、夏希」

 しかし二人の少年はいつものことだとばかりにスルーする。ギャグではない。

 「せやっ」

 オリンピック選手も真っ青な空中三回転を十点満点でやってのけた鶴井夏希と呼ばれる少女は、目立っていた。もちろん行動にも原因はあるのだが、それだけではない。ポニーテイルがトレードマークな引きしまりながも成熟した体が目を引き付ける美少女だったこともある。

 「い、いっしょに学校行こ!」

 彼女は少し赤くなりっつ、二人を、否、チラチラで優を見ていることから、明かに雷はお呼びではないことがわかるため、優のみをさそっているのだろう。雷のHPは半分けずれた。この様子を見て、100人中99人は明かにこの夏希という少女が優に好意を寄せていることを察することができただろう。しかしながら、優という少年は残りの一人であった。

 (っ一か鶴井の家って学校のすぐ近くだよな。わざわざ俺たちと行く必要がない、ということは… …!)

 ここまでは正常であったのだが、

 (雷目当てか!!コンチクショウっ!!これだからイケメンはモテない男の敵なんだよバカヤロ―!!っつか俺はお邪魔虫かくそが!!!俺なんて、俺なんて……!!俺がなにをしたっていいうんだよ……!?)

 彼は残念な美形であった。

 「あ、じゃあ俺先行くわ」

 (ああ、わざわざ御膳立てしてあげる俺ってなんてやさしいんだろう……)

 本当に残念な男である。

 「ええっ!?」

 (絶対こいつなんか勘違いしてやがる!)

「ええっ!?」

(絶対優くんなんか勘違いしてるよ!)

 さすがの二人であった。

 「……え?」

 (なん……だと……!?こいつら二人きりだからって俺を巻き込もうとしてやがる!!リア充共のピンク色の空気の中にいろと!?冗談じゃね―!!)

 甚だ以て残念な男である。

 三人の間に降りた沈黙を救ったのは、少女の声だった。

 「あれ~?ど―したの~?優く~ん」

 声の持ち主は、まだ10歳にも満たしていないようにみえる女の子であったが、その容姿は100人中98人がかわいいというだろうというもの。ちなみに二人の中、1人はショのつく性癖をもち、1人はホモである。

 「え?いや……」

 「お、お―すっ、はよ―神宮」

 優を神宮と呼んだ少女は、一言で言えばスケバン、であった。今の世にはむしろめずらしい昔ながらの不良ファッションの彼女だが、顔立ちだけは整っていた。

 「おは……」

 「邪魔よ、どきなさいこのウジ虫」

 またしても優の言葉をさえぎり、初登場でいきなり毒を吐いた少女もまた目立っていた。ストレートの黒髪をなびかせ、悧巧な顔立ちの冷たい印象を受けるどちらか言えば美人という容姿で、出る所は出ているスタイル。Mの性癖をもつ者にきっと神のように敬われるだろう。

 「俺が何をしたっていうんだ……」

 「お、おはよう!べ、べつにあんたにあいさつした訳じゃないんだから!!」

 一部の人々には大好物なTのつくものをもつこの少女も、また美少女だった。気の強そうなすこし吊上がった目と、ピョコピョコとはねるツインテイルが特徴だ。よく言えばスレンダ―なスタイルも、一部の人々の間では大歓迎に違いない。

 (ツンデレ萌え――!!!……でもどうせ雷になんだろうな……)

 「おはようございます。優さま」

 いつもながら残念な優の思考をまたしてもさえぎったのは、いかにも良家のお嬢様といった膝までの長い黒髪が目立つ美しい少女だった。にっこりと微笑むその様子は、その少女の将来のパートナーの幸せを予感させる。

 「オハヨーアル!ユウ!」

 恐らく誰かにだまされたことを声高高と叫ぶ金髪碧眼の少女。やはり整った顔立ちだが、この少女の目立つ所はそこではない。

――乳。

少女が動く度にゆれる胸はもはや凶器の域に達している。


 「ねえ―速く行こ―優く―ん」

 

 「だっこして~優く~ん、ぼく疲れちゃった~」


 「ほら速く行くぞ神宮!」

 

 「なにを這いずっているのウジ虫、はやく行くわよ」

 

 「いいいっしょに行ってあげないこともないわよ!神宮!」

 

 「一緒に学校まで行きましょう?優様」


 「ワタシユウト一緒に行キタイアル!」


 この集団は、もはやこの一帯の名物となっている神宮ハーレム。

 誰が見てもわかる好意だが、優は

 (コンチキショウ!!だれから見ても雷ねらいなのにわざわざ俺に声かけやがってこの尼共!!期待させて落とす気なんだろ!?その手にはのるかバーカ。)

 などと脳内でのたまっていた。

 (ううっ俺なんてどうせバレンタインでチョコ一つももらえなかったモテない男の代表だよっ。ああ!!あのときとなりのば―ちゃんにもらったしけったチョコ、大事に引き出しにしまって三ヶ月は経ってら……)

 その時のことを思うと優はちょっと泣きたくなった。

 ちなみに、バレンタインにチョコが一つももらえなかったのは、ファンクラブの抜け駆け禁止令による。

 (ってかこいつら学園のアイドルだろ!ファンクラブもあるっぽいし… …。雷はハーレム王だから当然だけど……なんで俺はいじめとか受けないんだ?どう考えても俺みたいなブサメンがここにいていい訳ね一のに……)

 それは優のファンクラブの方が大きいからである。むしろハーレムメンバーに嫉妬がいっている。だが優は残念すぎてもうアレな美形である。

 (……ハッ、もしかして俺って召使い扱いされてたのか雷後でしめる)

 当然のようにななめへと行く。


 「今日一緒にご飯食べよ~」


 「あ~んしてあげるね~」


 「ア、アタシお弁……」


 「ふん、あなたのスライムのような捕食の仕方を見てあげる」


 「べ、べつにあんたのために早起きして作ったお弁当じゃないんだから!」


 「お弁当を作ってきましたわ。味見してくださる?」


 「ゴハン食べヨ―ユウ!!」


 (……ハッもしかして俺ってストーカー扱い!?)


 「俺って毎朝無視だよね~」

雷はぼやく。


(……ハッ、もしかして俺って存在すら認識されてない……!?」


 「あ―あ、ま―やってるねぇ」

 「神宮ん所のボンは鈍いからねぇ」


 (……モテたい……)


 今日もいつも通り平和な一日であった。


 ――といいたい所なのだが、日常とは儚いものである。

 たとえば、

 「どこだここ―――!!!???」

 「はじめまして、マスター」

 学校への登校途中にまぶしい光がまたたき、目を開けたら真っ白い部屋にいて自分の前にはマスターと呼ぶメイド服の少女がいたり、とか。

 「マスター、モテたいですか?」

 この少女は、初対面で実に正確に優の心をつかみ当てた。普通なら反応はしないだろう、普通ならば。 

 「モテたいです!!」

 速攻この非常時を忘れてしかも即答であったことから優の残念っぷりと鈍感っぷりがわかるだろう。

 「では言うとおりにしなさい」

 「はい!!」

 そしていつの間にか少女と立場が逆転していることにも気がつかなかった優は、光が満ちると同時に、元いた場所に戻された。


 「……ハッ」

 ど―したの―?優くーん」

 「え?い、いえ……」

 辺りを見回していた優は残念そうにため息をついた。恐らく夢だと思ったのであろう。

 『マスター、夢ではありません』

 「ほべっ」

 夢だと思っていた少女の声が聞こえ、優は文字通り飛び上がり、むせた。

 『安心して下さいマスター、私の声はマスター以外には聞こえません』

 「は、はあ」

 『今はマスターの脳内に働きかけていますが、ケータイでもつなげることができます』

 「おう」

 「先程からぶつぶつと気持ちが悪いぞゲルスライム」

 「そんなスライムいんの!?」

 『恐らくこの世界には生息していないかと思われます』

 (じゃあ異世界にはいんのかよっ)

 『はい、恐らく』

 (へえ……ってぇぇえええっ!?)

 『そういえば脳内で会話ができることを伝え忘れていました』

 (忘れんなよっ!)

 『すみません、マスター。かくなる上は切腹を……』

 (いやいやいやいいっていいって!)

 『冗談です』

 (……おい)

 『マスター、質問などはございませんか?』

 (ああ!!そうだった!!お前は……)

 『はい』

 (俺をハーレムキングにできるか!!?)

 もうなっていることにも気付かない上に最初の質問がもう手遅れだった。

 『はい』

 (ヨッシャアアアア!!!)

 『ではマスター。まずは私の存在を説明させていただきます』

 (……あ。そうだった!お前は何者だ!?)

 言われて初めて気付いた優はもう手遅れだろう。

 『はい、私は、「ホラーっ」社に属するアンドロイドンです』

 (アンドロイド!?)

 『いいえマスター、アンドロイドンです。アンドロイドンとは、遺伝子改造をした卵子と精子を人工授精させ、奇跡の確率で誕生した「人に似た生物」です。アンドロイドンは皆なにかしらの特種な力を持っております。私の場合は、そうですね……強いて言うならばカンが異常に良いことでしょう』

 (へ―……。聞いたことねえな―)

 『はい、私たちアンドロイドンは「ホラーっ」社が独自に開発した「もの」なので』

 (……ものじゃね―だろ?)

 『……いいえマスター。私たちアンドロイドンは「ホラーっ」社に所属する「もの」です』

 (さっき自分でいったじゃん。自分は「人に似た生物」だって。お前は確かに「人」ではないが、生き物だ。生き物である以上、お前はものじゃない)

 『………はいマスター。それよりも先の説明をさせていただきます』

 (ええええっ!?俺今せっかくかっこいいこと言ったのに!やっぱりブサメンだからか!?お前もかアンドロ……。あ、お前名前は?)

 『ありません』

 (……このシチュエーションはもしやあれか!?ラノベの異世界物でよくあるいたいけで無邪気な少女に主人公が名前をつけそしてご主人様と呼ばれそしてあーんな)

 『では私の名前はアンドロイドを略してアイン、アインと呼んでくださいマスター』

 (できればご主人様とかが……)

 『いやですマスター』

 (チッ)

 『では説明を続かせていただきます。「ホラ―っ」社はいままでもすばらしい功績を各分野であげてきました。しかし、気まぐれな現ホラーっ社長のご提案で、いわゆるモテない男の恋愛をサポートして恋愛成就に本当に効く物をおつくりになりたいと。私は、ただ社長はゴシップが三度の飯よりも好きなのが原因ではないかと思いますが』

 (なん……だと……!?なんてやさしい社長なんだ!!)

後半をすっぱり無視した優

『はい、という訳で私はここにいるのです。ご理解いただけたでしょうか?』

 (おう……ところで、あの白い部屋は)

 『マスター、この世には知らないほうが幸せなこともあるのですよ』

 (……おう)

 優はなぜか寒気を感じた。そうしてこうしている内に学校についた優たちだが、学校の校門はしまっていた。時計を見ると9:05。30分以上の中遅刻だ。大は一時間以上に分類される。優は彼のハーレムメンバーが校長を呼び出して説教というよりも拷問をしている時もぼんやりとつっ立っていた。


 『マスター?』

 「……え?あああ、どうした?」

 『はい。まず、もてるためには相手を知る必要がありあります』

 放課後までぼんやりとしていた優は今、無人の教室でアインとケータイで対話している。いや、もはやケータイではない。ケータイは開かれたとたん23インチのテレビスクリーンに変身した。比喩にあらず、訂正はない。仕組みについては、アイン日く世の中には知らないほうが幸せなのだそうだ。スクリーンに写ったメイド服を着用している少女は、やはり美しかった。年相応の見目の幼さとその年よりも遥かに大人びた雰囲気が妙な違和感を生み出し、その違和感と見た目の美しさでどこか色気すら感じさせる。

 「そうだな……あ!じゃああの7人だ!」

 『あの7人……とは?』

 アインからしてみればもう攻略しているがための当然の問いだったが、優にとっては愚問だったらしい。

 「あの7人はあの7人だろ。雷のハーレムメンバーんお、俺が1人ぐらい……いや、やっぱり友達のハーレムとっちゃまずいか……」

 ここまできいてアインはやっと思い当たった。そういえばこの男、己をブサメンだなどとたわけた寝言をのたまっていたな、と。事前調査書にもひどく鈍いとかいてあったことを思い出したアインは決心した。とりあえず自覚してもらおうと。

 『ところでマスター。自分の顔のことをどう思いで?』

 「ぐはっっっお前普通に傷をえぐりやがった!!!」

 『はやくして下さいマスター』

 「……なあ、だんだんお前の敬語に敬意がなくなってきてないか?」

 『そんなことはなのではやく言って下さいマスター』

 「まあ、いいけど。正直言ったら、俺は幼い頃、自分の顔はいいって、そう勘違いしていたんだ… …」

 むしちそれは正常な思考ではないかとアインは思ったが、黙っていた。

 「それは近所のおばさんたちにかわいいかわいいほめられたり、幼稚園ではよく幼女にモテたから調子にのっちゃまったんだろうな……頭大丈夫か、昔の俺」

 最後のはむしろ十倍して今の優に返した方がいいだろう。

 「でもさ……成長するにつれて街を歩けば悲鳴をあげられハンカチを拾えば怒られ、女子とは目が合えばそらされるってことをくり返されて気付かないわけがないと思うんだ……俺は雷みて―な鈍感イケメンじゃねーんだ」

 アインは思った。この男、バカであろう。

 『はい、マスターが実にアホでバカでまねけでアンポンタンなのかがわかりました』

 「……なぁ、お前実は俺のこと嫌いだろ」

 アインは考えた。とりあえずもう一度あのハーレムメンバーを攻略すればいやでも自覚するだろう、と

 『ふむ……ではマスター、さっそくあの7人のことをよく知りましょう』

 「無視!?」

 『ではマスター、まずはだれからですか?』

 「まずって……一人でいいけど」

 『いいえマスター、真の男たるもの、ハーレムの一つや二つ作れなくてどうするのですか』

 「え、そういうもの?」

 『はいマスター』

 「そうか……じゃあまずは……鶴井でいいぜ(キリ」

 『はいマスター』

 声とともにモニターが切り変わり、どこかの部屋……部屋?が写し出された。なぜ疑問形なのかというと、その部屋には至る所に小さい骨や血が染み込んでいる、拷問部屋のような形相を呈していたからである。

 「え……これなに……?」

 明らかにドン引いた優

 『はいマスター、鶴井夏希の一人部屋でございます』

 「はいぃ!!??」

 『彼女は、世で言う「ヤンでれ」です』

 「……はい!?」

 『くわしく描写しますと、小さいときに飼っていた鳥は一度逃げられたあと、二度と逃げられないよう羽の骨をすべて折られ、小学生の時に拾ってきた猫が部屋から出て他の部屋に行ったときはしっぽをもぎとり、毛をすべてぷちぷちとぬいていました。また、へびの場合は、うろこを一枚一枚はぎとったため途中で死亡。カメレオンは舌をひっこぬいたため死亡、カメの場合は甲羅をはぎとったため死亡、兎やりすは歯を折ったりぬいたりしまして、そして中学生には彼氏ができたのですが、彼が他の女のことと話す度に病みはエスやレートして、最初は髪をぷちぷちとぬく程度でしたが、後からつめ、指、耳、足、などになりまして、その後その男の子は自殺しました。彼女のすごいところは自分とその対象以外には狂気を悟られない所ですね。まあ、たとえ悟ったにしても、運動能力に関しては最高のスペックを誇る彼女をどうこうできる訳ではありませんが。彼女とつきあえば、彼女だけを見て、彼女だけを愛することになるでしょう。たとえ相手が虫でも見てはいけませんよ。彼女以外の生物を見たが最後、永遠の暗闇に閉じ込められるでしょう。まあ、その内無機物でも見ることを許さなくなるでしょうが。あおり文句は「私だけを見て、私を見ないなら、私以外の物も見せない……」でどうでしょうか。……あれ、マスター、どうかしましたか』

 「俺はなにも見なかった俺はなにも聞こえなかった俺はなにも知らない……」

 『マスター?』

 「……もう少し女の子に夢を見たかった……」

 『女性にそのようなものは存在しませんよマスター』

 「お前は今俺を支えるものを粉々に打ち砕いたぞ!!」

 『ではマスター、付き合いますか?』

 「付き合うか!」

 『では次は誰にしましょう』

 「切り返え速っ!……じゃあ本崎で。言っとくけど俺はロリコンじゃないからなっ!」

 「はい、分かっています。マスタ―の守備範囲はゆりかごから墓場までですよね。」

 「ちげ―よ!?」

 『本崎鈴、身長120CM体重28KG見た目は幼いが、若干10歳でドンになった天才……』

 「えっ、ちょ、ちょっと、ドンってなんだよ」

 『頭という意味です』

 「……なんの?」

 『マフィアですが』

 「ノォ――――!!!できれば知りたくなかったゼコンチクショウ!!」

 『マスターが……ついにご乱心に……』

 「しとらんわ!!つかついにってなんだよついにって!!」

 『祖父が一代目頭、父が二代目となり、彼女も幼い頃から英才教育を受けていたようで、若干十歳で父を殺し、アメリアのマフィアを統一。今はイギリアとフランスを支配下に置き、次はバングラデシュを目指しているそうです』

 「……なにも聞かなかったことにしよう」

 『映像を見ましょう』

 「え、いや……」

 優の抗議を無視して、モニターの場合が移し変わる。そこには小柄な女子生徒が写っていた。本崎鈴である。

 

 「……だよね~」

 「うん、ぼくもそう思う」

 「ってかさあ。そのぼくってのはなんなの?」

 「え~なんとなく~」

 ―ピリリ!ピリリ!

 もう一人の女子生徒と話し込んでいた鈴はベルの音にハッとしたようにケータイを見る。そして申し訳なさそうにいう。

 「ごめん、ちょっとぼく電話」

 「あ、うん」

 「ごめんね」

 女子生徒に謝罪をした鈴は校舎裏へと走る

 そして、電話を受けた鈴は豹変した。

 『ド、ドン!緊急でやんす!』

 「ああん!?んなくっだらねぇことでいちいち俺にかけんじゃねんよカスが」

 『で、でも』

 「でもじゃねえだろうが!!んなもん自分でやれやハエが」

 『い、一代目が死にやした!!』

 「はん、それが?」

 『え?』

 「じゃあてめえらだけでどっか土に埋めとけ。俺は忙しいんだよ!!」

 『あ、ド』

 ―ピッ

 電話を切った鈴は舌打ちを一つすると、校舎裏を出て行った。


 『と、いう映像ですが、どうされました?マスター』

 アインはつくえにつっぷしている優を見て、首をかしげた。

 「…………次に行こう。俺は何も見ていない」

 『はぁ……付き合わないのですか?』

 「付き合うか!」

 『付き合えばマスターの身の安全はバッチリですよ?まあ、そのかわりと言ってはアレですが、裏切ったが最後、コンクリート詰めで海へと返りますが』

 「やだそんなの次!田上!スケバンはマフィアよりマシだ!」

 『はいマスター。田上百合、身長170CM、体重56KG、両親と姉での四人暮らしです。』

 「今回はまともか……」

 『はいマスター。しかし彼女もまた、少し変わった癖を持ちます。』

 モニターが切り変わり、部屋(?)が映る。なぜまたしても疑問符がつくかというと、その部屋には「骨」と「どろどろとした死体」が沢山置いてあったからだ。

 「……なぁ、まさか田上が死体愛好家とかいうなよ」

 『はいマスター、彼女は死体愛好家です』

 「はいの意味が違う!!!」

 『彼女は姉との仲が険悪です。それは、幼い頃から姉に沢山のものをうばわれてきたからでしょう。しかも、それは意図的な行われてきました。幼稚園時代、彼女には友達が一人もいませんでした。すべてうばわれたのです。その時すでに小学校だった彼女の姉がどのような方法で友達をうばったのは分かりませんでした。すみませんマスター。その内彼女は小学生になるも好きになった男子や、友達になった女子はすべて彼女の元を去りました。彼女はあきらめました。私は一生姉にすべてをうばわれ続けるのだろうと。しかし、彼女はあの日死んだ小鳥を見つけ、それを家に持ち帰りました。埋葬してあげようと思ったのえしょう。その途中で姉がきたので、彼女はこの小鳥も姉にうばわれるのだろうとあきらめましたが、姉はそうしませんでした。死体なんていらなかったのです。「そんなきもち死体があんたにはお似合いよ」。そういわれた彼女は考えました。つまり死体であれば姉にはうばわれないのだろうと。その証拠に死体となった捨て猫やペット達は姉に持っていかれませんでした。家族は彼女の性癖にはうすうす勘違いてはいますが、気味悪がってなにもいいません。という訳で、彼女と付き合えば速攻天国へと旅立ち、遺体はそれはもう大切にされるでしょう』

 「……よし次に行こうか」

 『付き合わないのですか?』

 「付き合うか!」

 『では次は誰にしましょう』

 「……じゃツンデレの岩崎で」

 『はいマスター、岩崎千秋……ふむ、彼は心に問題か一つもありません、おすすめしましょう』

 「……ちょっとまて今はお前彼って言わなかったか」

 『はいマスター岩崎千秋は正真正銘の「男」です』

 「あはは―だろうと思ったぜチキショウ!!!」

 『彼は曰く体は男でも心は女だそうです。こうなってしまったのは、彼は生まれた時、両性具体だったことが原因でしょう。手術によって体は男になりましたが、心は男ではなく女になってしまいました。彼の家族は己らの息子の好いている者が男だと知り、非常に気に病みましたが、今はふっきれて応援しているそうなので、マスターさえよければすぐにでも結婚できますよ』

 「親止めろやぁ!!いい両親だけど違うだろ!?そっちじゃないだろ!?」

 『付き合いますか?』

 「付き合うか!」

 『では次は、誰にしましょう』

 「正直に言ってこの人がへんな癖もってたら俺の心は折れる。理想の嫁ランキング一位の羽ノ城さんで」

 『羽ノ城優美、羽ノ城財閥総師の一人娘、妄想癖をお持ちですね』

 「……」

 「マスタ―?」

 「……いや、これは比較的マシな方じゃないか……?」

 アインはぶつぶつとなにかをいい始めた優をついにくるってしまったのだろうか、などという優が聞いたらおこりそうな目で生暖かく見ていた。

 「具体的に教えてくれ」

 ユウは、コウワクに負ケタ!

 という言葉がアインの脳内でチカチカと光った。

 『はいマスター。彼女は妙な性癖は持っていませんが、とても面倒くさい人だと断言できます。小学生時代好きな男の子に同じ掃除当番だったのでそうじにさそわれましたが、彼女は両想いだからさっそってくれたのだろうと考え、その好きな男の子が、彼の好きな女の子としゃべったり出かけたり、最後には付き合いましたが羽ノ城さんは彼とおどされているのだ、自分が助けなくては、と二人は幸せそうにデートするのを尻目に考えていました。そして彼女には脅迫の電話や手紙、時には実力行使をして、彼には気持ちの悪い手紙を大量に送りました。警察にも届けられましたが、やはり彼女には大量の嫌がらせをして、ついには二人を引き裂きました。彼女と別れぐれてしまった彼が言い寄っている女子を反対に彼に近づくために脅迫しているのだろうと大量の嫌がらせをしました。その中でノイローゼリになり、引きこもりや自殺してしまった女子生徒もいるそうです。そういうことを最近まで続けていましたが、好きな人が変わったためやめました。毎朝の大量の手紙がないことを確認した彼は泣いたそうです。そして彼女の今好きな人は、自分が好きだが他の女子におどされているというのが彼女の中では成立していまして、他の女子に嫌がらせを大量にしても全く効いていないので苛立っているそうです』

 「あ―そう……」

 『付き合いますか?』

 「付き合うか……」

 優は目に見えて萎えていった。

 『あとは、茜山伊月、と薬師・マリアベルですね』

 「……俺はMじゃない……」

 『では薬師・マリアベルになさいますか』

 「……おう」

 『彼女は変な性癖はありませんが……』

 「おおう!今の一言ものすごく期待できそうだぜ!」

 『性格が悪いです』

 「……へ?」

 『映像をご覧下さい』

 モニターが切り変わり、どこかのものすごいお城を歩くマリアベルが写る。優の目線はマリアベルの歩く度に揺れる体のある部分に向けられる。マリアベルはある豪華な扉の前にくると、声をはりあげた。

 『ちょっと召使い共!!さっさと開きなさいよ!!』

 ただただ傲慢に。

 『は、はいお嬢様』

 彼女は開かれた扉に足音荒く踏み入れ、

 『お父様!!どうしてまだ優様にたかる忌々しい女共がまだいるの?さっさとチンピラでもなんでもいいから始末させてよ!!』

 優の前で「演じた」無邪気さを欠片もかんじさせずに喚く。

 『もう指し向けているのだが、すべて返り討ちされた。失踪した奴もいる。全く、せっかくこのワシが飼ってやろうと思っているというのに』

 服を着た豚は下劣な笑みを浮かべた

 「なんて忌々しぃぃぃぃ!!』

 マリアベルはぎりぎりと目を吊り上げ、外での美少女が―っ欠片もなくして鬼のような形相になっていた。

 『お父様、何か良い案はないの!?』

 『そうだな……』

 と、豚とマリアベルが頭を寄せ合い、相談を始めた所で映像はプチッと途切れた。

 「……よし、次にいこう!」

 『付き合わないのですか?』

 「付き合うか!」

 『彼女をパートナーにすれば将来安泰ですよ?他の人間と話してもなにも言われません。ただし話した者が女だった場合はマスターの知らぬ間に年齢問わず始末されますが』

 「お前って本っ当最後に冷水かけんの得意だよな!」

 『あと一人しか残っていませんが』

 「……じゃあ茜山で」

 『はいマスター』

 モニタが切り変わり、部屋が写る。今度はちゃんとしたシンプルだが女の子らしい部屋だった。だが、家主がすべてを台無しにしていた。

 『ムシケラはムシケラらしく地を這うがいい。クズが』

 「あ、ああ……もっと……」

 ケータイから聞こえる声に、彼女は、

 『人間のクズ風情が、生きているのもおこがましい』

 「も・と、もっと……」

 恍然とした。

 『お前のくさった存在がこの世には必要ないのだよ、ちり』

 「もっと…罵って……」

 表情を浮かべていた。頬が紅潮し、目がうるむ美人というのはなかなかの見物だが、このシチュエーションでは全くそそらない。

 プチッとモニターがアインに切り変わったとき、優はぼんやりとそう思った。

 『どうしましたか、マスター』

 「……あれ、茜山の声じゃね?」

 『はいマスター、その通りです』

 優はケータイからもれ出る声は彼女自身のものだと知って、知ってしまった。

 『彼女は自分限定ではマゾヒストです』

 「あ―うん、この世には知らないほうが幸せなこともあるな、うん」

 『この中でしたら、岩崎千秋が無難ではないかと』

 「俺はホモじゃないっ!!」

 『マスター、わがままですよ?』

 「えっ!?悪いの俺!?ねぇ悪いの俺なの!?」

 『はぁ……しようがありません。最終手段です』

 「なんかすっげ―理不尽なため息つかれたっ!?ってか最終手段って?」

 『はいマスター、マスターのようにモテない男が走る背水の陣、すなわち―ナンパ、です』

 「……え?えええっ!?無理、俺には無理だっ!女の子とまともに話したこともない俺がそんんあ高いハードル跳べるか!」

 『なるほど、つまりマスターは普通のナンパは無理だと?』

 「そう!そうだ!俺には普通のナンパ……ん?普通の?」

 ようやくわなにかけられたことに気付いた優だったが、もうその時すでに遅し、目の前にはニッコリとしたアインの笑顔があった。顔色一つ変えずに冗談を言うアインのレアな笑顔は万人中全員が美しいと想うような頬笑みだったが、優にはそれは獲物を口に運ぶ肉食獣のような悪魔の頬笑みに見えた。その野性の勘とも言える物は鈍ちんの優にしては当たっていた。当たりすぎていた。既視感ある広い光が教室のすみずみまで照らし、その一瞬後、「この世界」から神宮優という少年は消えていた。


 「ってどこだここ―――!!??」

 デジャブを感じる叫び声を上げた優

 「マスターうるさいです」

 それをさえぎったのは、一人の少女だった。

 「かえせ―!って、え?え!?あ、アイン!?」

 優は少女を振り返り、驚愕する。そうこの少女はアインだ。正真正銘のメイド服を着た「生身の」アインである。

 「はいマスター、アインです」

 いつもの無表情で応えるアイン。

 「お前……そういや厚みがあったんだがフッ」

 アインは男として口にしてはいけないことを言った優を無言でけった。

 「マスターでは、この「アーク」でナンパをしてもらいます」

 「お前はマスターに対しての敬意が最近消えてきてないか?」

 「すみません、だんだん面倒になってきたもので」

 「ぐフッ」

 コウは、HPに1000のダメージが!

 「……まぁいいや、てか、ここどこだ」

 優はやっと落ち着いて周りを見てみた。優たちがいるのはジャングルの中だった。……優たちがいるのはジャングルの中だった。

 「ここどこだ―――――!?」

 優の悲痛な声にジャングルの鳥は何びきか飛びたった。


 「ここは、アークという世界です」

 恐慌に陥った優を落ち着けるのに30分もかけたアインの言葉には若干怒りがにじている。

 「へ、へ―」

 反対に優はアインをちらちらと伺いながら正座していた。

 「ここには、マスターのいうラノベリに出る、エルフやドワーフ、フェアリー、サキュバスなどがいる、いわゆる剣と魔法の世界です」

 「うおっふ、マジで!?」

 一転してキラキラした目をアインに向ける優。

 「よっしゃあああ!!……ってか異世界に普通にくるホラ―っ社って……?」

 「マスター?」

 アインは物凄く優しい聖女のような微笑を浮かべたが、優はなぜか命の危険を感じたため押し黙った。

 「はい、では行きましょう」

 「え、もう?」

 「はい、思い立ったが吉日、です」

 「……それナンパにつかうのにあってんの?」

 「ではやめますか?」

 「まさか!待ってろ俺のハーレム!!!」

 「……そこまで気迫を上げられると、さすがにオワタですね」

 「やめろよ?今マジテンション上がってるからそういう氷ぶっかけるような真似やめろよマジで!」

 「はい、マスター」


 と、いう訳で優たちはナンパした。

 

 「ギャママママアっ!!!」

 「マスター、早く走らないと追いつかれますよ」

 「なんで異世界初日で巨大グモに追われてんだよっ!?」

 雌グモに追いかけられたり、


 「「「ギャアアアア!!」」」

 「よっしゃ恋愛フラグだ!でも俺yoeeeeeeee!!!アイン頼む!!」

 「…………」

 「やめろその蔑むような目を!!」

 「……はいマスター」

 ―ドガバキドヤ!!!

 「「「ありがとうございました!!!」」」

 「……ちっ、おっさんか」

 魔物に撃われている荷物車を助けて、三つ子のおっさんに感謝されたり、


 「私を嫁に!」

 「アタイが幸せにしてやるよ!」

 「わ、私も恋人になりたいですぅ」

 「マスター、最初の方は恋人の心臓を掘り出して保存し、次の方は前の旦那さんの脳みそを吸いだして食べ、最後の方は家へ入れた男性の目球をすべてえぐり出して水槽に沈めたという前科がありますが」

 「さようならっ!!!」

 美人に迫られたり、

 

 「ギルドへ行こう!!」

 「あたしらのパーティーに入らないかい?」

 「マスター、このパーティーに入った男性はすべて骨を残して失踪しているというのは有名な話ですが」

 「すいませんでしたぁぁぁ!!!」←優

 美人だらけのパーティーに誘われたり、


 「あら、あなたがカンミヤ?」

 「はい、王女様」

 「まあ!あなたは、王になってみる気はありませんか?」

 「マスター、この方は幼いころに聞いたロミオとジュリエットにとても憧れているそうです。特に死に方に」

 「全力でお断りしますごめんなさいっ!!」

 王女様に迫られたり、


 「愛してる――――ツ!!」

 「いやだ――――!!」

 「マスター、早く走らないと追いつかれますよ」

 「他人ごとみたいにいうなよ――!!!」

 マッチョホモに追い回されたり


 した。


 「なんで俺にはまともな恋愛フラグが立たねぇんだドチクショウ!!!」

 「マスターはモテていました」

 「まともなモテ方がしたいんだよ!!」

 「はぁ……ところでマスター」

 「……なんだ?」

 「私の趣味はマスターに近づく女の恥ずかしい秘密や性癖を暴露することです」

 「いじめ!?」


 青白い光を発するモニターが一面を埋め尽くす部屋で、二人の男がいた。

 「あーあ、アンド……今はアインちゃんかな?落ちちゃったね~」

 「……うるさい」

 「だ―いじょ―ぶ。アインちゃんに失恋した悲しみは僕がいやしてあげるよ~。今晩は忘れられない夜にしてあ・げ・る♡」

 「気味悪い」

 「冗談冗談。僕だって男とやるなんていやだもん。」

 「当たり前だ」

 「でも、あのアインちゃんが恋するなんてね~しかも相手の男めっちゃイケメンじゃん。……君以上に」

 「ウッ」

 「まぁアインちゃんは顔で選んだりはしないよ~」

 「まぁな」

 「君は選ばれなかったけど?」

 「き…貴様という奴は……」

 「にしても、あのイケメンくん、色々と大変そうだね~」

 「ああ、人が生まれながらに持つ運……女運はMAXだ。ただしマイナス方面に」

 「でもあのアインちゃんに好かれたからね~そこまで悪くないよ~イケメンくんも満更でもなさそうだし」

 「クッ……」

 「なにしろよってくる女の子は全員狂ってるか、狂っちゃうんだから。せめて女運0だったら寄ってこないだけなのに。……まあ女の子限定だけど。まぁ、アインちゃんはアンドロイドンだから影響がないけど、アインちゃんはアインちゃんでまともじゃないよね。やきもちはかわいいものなのにアインちゃんのやきもちはこわいし~。それは元からみたいだけどさ」

 「そうか?アインのやることはすべてかわいい」

 「君ってアインちゃんがからむと途端にバカになるよね……」

 「む、なんだと」

 「どちらにしろ君は選ばれなかったんだから、男らしく潔ぎよくあきらめなよ。」

 「だ、だ、だが……」

 「ってか旦那さんは将来そこらへんの女子の秘密全部知ってそうでうらやま……こわいよね~」

 「まだ旦那じゃない!」

 「あ、まだって言った」

 「う、うるさい!そもそも、お前がホラーっ社長であるお前が!!こんなくっだらないことでアインを遣わしたりしたからだろうが!!」

 「テヘぺ口。だっておもしろそうだったんだもん!」

 「もんっていうな!男が!……ああ、もう社内会議の時間だ……」

 「うえっ、まだアインちゃん見てたいのに~」

 「俺もだ。俺もだが、しょうようがないだろ!?」

 「はいはい、じゃあいくよ~」

 「ああ」


 「「ホラーっ社は時の狭間に生ける使者。それは神の意志さえも届かね永遠の楽園。ホラーっ社に栄光を!!」」

 

 「「ホラーっ」」


 「ってか毎回想うけど、これって必要なの?なんか何か中二病だし」

 「仕方あるまい。先代の命令だ。ところで、中二病とはなんだ?」

 「え~知らないの~?遅れってるぅ」

 「ぐっ……貴様……」


 男たちの去ったモニター室で、モニターの画面はいつまでも青白く光っていた。


                    ☆


 「……なぁ、本当に俺でいいのか?お前はすっげ一美人だし、俺はブサメンだし」

 「はあ、どうして私が美人だってわかるのに自分の顔がブサイクだと思うのか知りたいのですが」

 「はぁ?」

 「別に、当然です。あなたが好きになったのですから」

 「あ、ありがとう……」

 「はいマス……舛田」

 「誰っ!?」



                 ~Fin~








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