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第十話 赤騎龍ブレイブヒート・サラマンダー

今回はバトル描写はありません。

 娯楽の町「スパシエール」での出来事より、数日の時が経過した。やって来た次の日に、すぐさま町を出たルカ達は、街道を歩き続けて小さな町にやって来ていた。幸い、近辺で争いは行われていないようで、特に危険な目に合う事も無く進むことが出来た。

「うぅ~、足が痛い。」

 取った宿の部屋へと入ったサナは、すぐさま部屋のベッドの上に倒れこみ、靴と靴下を脱いで足をマッサージすると、こう言った。この町に来るまで歩き通していたので、足に疲れが溜まっている。

「大丈夫?」

 一方のルカは、旅慣れしているのか特に疲れた様子は見せず、お茶を淹れながらサナに訊いた。サナはこの問いに、

「あんなに歩いたのは初めて。」

 と返すと、ふと気になって、ルカに訊いた。

「そういえばさ、ルカは路銀に困る様子は見せた事無いけど、どうやって路銀を集めているの?」

 この問いに、ルカはサナに淹れたお茶を差し出し、こう言った。

「まあ、両親が残してくれた遺産がいっぱいあるから、そこから切り出して使ってる。それが出来ない時は………」

「出来ない時は?」

 サナがルカの言葉を繰り返すと、ルカはこう言い放った。

「無頼漢をのして金を巻き上げてる!!」

 ちなみに無頼漢と言うのは、所謂「ごろつき」 特定の住居を持たずに各地を流離い、人々に迷惑を掛けながら生活をする者の事。早い話が賊の事である。

 サナに言わせれば、ルカの見た目は暫く前に自称した「15歳」の割に、どこか華奢で可愛らしい、女の子のような印象を持たせる。荷物を見る限り、身を守る道具も持たない彼が、賊を倒して回っていると言う話を聞き、サナは呆れつつも驚いたが、

「あぁ、それは働くとは言いませんよ。」

 突然、どこからか声が響き、ルカにこう告げた。声の主は、カードで有りながらなぜか実体化が出来る「サイコ・ファクトリー」の兵士、本名ヴィクトル・フランケンシュタインである。

 彼女はカードから実体化すると、ルカが自分用に淹れたお茶を啜りながら、ルカに言った。

「こっちの世俗には疎いからよく分からないけど、そういう成果を然るべき場所に報告すれば、大なり小なり報奨金が出た筈よ。ただボコボコして取るべき物を取って行くのは、彼らと同じ賊の行い。働くとは言わないわ。」

「え、そうなの?」

 ヴィクトルの言葉にルカの返した言葉は、本気でそういう常識を初めて知ったと言う印象があり、今まで賊退治の成果を誰かに報告すると、それに見合った報奨金が貰えると言う常識を知らなかったようだ。

 ルカの今までの路銀集めの方法に、サナは驚きを隠せないまま、こう訊いた。

「所で、そのボコボコにする無頼漢が居ない場合はどうするの?」

「その時は、真面目にアルバイトするよ。仕事を手伝って宿代免除してもらったりとか。」

 ルカが答える、ボコボコにする無頼漢が居ない場合の対処法は、以外にも普通であった。





 その後、何だかんだでルカが調達してきた食事を取りながら、ルカはサナに相談した。

「所で、次はどこに行く?」

 要は行き先の事を相談しているのだ。以前はルカが一人で旅をしていたため、適当に歩き回って適当に好きな事をしていられたが、現在はサナと+αと言う同伴者が居るため、彼の独断で適当な事をする訳には行かないのである。

「そうねぇ、私は特にここに行きたい!! と言うのは無いけど。」

 サナがこう言うと、何かを考え込んでいるヴィクトルは、ルカとサナにこう告げた。

「そう思うなら、あの場所に行ってみない?」

「あの場所?」

 ヴィクトルの言葉に、サナとルカが同時に訊くと、彼女はこう言った。

「クインテッド・ソルジャーズ、始まったのはこの大陸だけど、この世で最も普及しているのは、極東にある島国、ヒノモトよ。」

 ヴィクトルのこの言葉に最初に反応したのは、他でも無いルカであった。

「この世でクインテッド・ソルジャーズが最も普及した国、つまり、他の大陸には存在しない指揮官と戦えると言う事?」

 ルカのこの問いに、ヴィクトルはその通りだと答えると、サナにこう告げた。

「貴方はどう思う? ヒノモトに行けばこの大陸に無いような、珍しい兵士や戦術、軍略があるかもよ。」

「まあ、それは良いけど。」

 ヴィクトルの言葉に、サナはこう返すと、どこからか大きな地図を取り出し、それを指出しながらこう言った。

「と言うか、ここからヒノモトに行くとなると、物凄い時間がかかるよ。今居るのがここで、ここからいくつか町を超えて、海を渡って隣の大陸に行ったら、そこを横断してまた船に乗らないと。」

 地図の影響上、ルカとサナが居る大陸は地図の左端に描かれ、逆にヒノモトは右端に書かれている。地図自体は大きいが、世界の尺図で有る為、実際の移動距離は計り知れない。だが、ヒノモト以外に行く所も存在しないので、ヒノモトを目的地に今後の移動プランを考え出した。

「港に行くのに最も短いのが、次にあるお菓子の町と、妖虫の森を抜けて、神聖国エルサレムを通るルートよね。」

 ヴィクトルが地図を眺めてこう言うと、この場に居るメンバー、ルカ、サナ、ヴィクトルとは違う声が響いてきた。

「エルサレム? そこはやめた方が良いぞ。」

 普通なら皆驚くところだが、その声の主が誰なのか分かっている三人は、特に何も言わなかった。ルカはサイコ・ファクトリーのデッキが入って居るのとは違うデッキを取り出すと、そこから一枚のカードを抜いた。

「やめた方が良いって? どういう事? ブライトクール・ドラゴン?」

 ルカは抜き取ったカード、「白騎龍ブライトクール・ドラゴン」にこう訊いた。理由はどうあれ、彼やヴィクトルと言った兵士の何人かは、こうしてルカやサナと言った指揮官に干渉する能力があり、個体によってはヴィクトルのように勝手に実体化する事もある。

 それはともかく、ブライトクール・ドラゴンは体積の影響上実体化が出来ないので、カードのままルカ達に説明した。

「エルサレムと言う国では今、二つの宗教勢力が争っているだろう。それに乗じて、ホーリークルセイドと言う軍団と、デモンズリベリオンと言う軍団が争っているんだ。」

「そういえばそうだったわね。確かそれぞれの宗教勢力が、それぞれの軍を代表する兵士を旗印に掲げているんだったわね。」

 ブライトクール・ドラゴンの説明に、ヴィクトルが思い出したように補足を付け足すと、ルカが訊いた。ホーリークルセイドと、デモンズリベリオンと言うのは何なのか、と。

「ホーリークルセイドは、聖十字架に選ばれた聖なる乙女の元に、聖騎士や神官と言った兵士が集まった軍団。能力自体は標準的なんだけど、戦術の中に神罰を組み込んでいるせいで、実質的な破壊力はドラゴンフォースの陣形スキルにも匹敵すると言われている。デモンズリベリオンは、まだ聞いた事無いな。」

 ルカの疑問に、サナはすぐさまホーリークルセイドの説明を行うも、デモンズリベリオンと言う軍については聞いた事が無いため、詳しい説明を他に求めた。彼女の求めに応じ、ブライトクール・ドラゴンは説明を開始した。

「デモンズリベリオンと言うのは、言ってしまえば悪魔による悪魔の為の軍団。かつてホーリークルセイドの神罰等によって命を落とし、罪人として地獄へと落ちた悪魔が、ホーリークルセイドに復讐するために結成したんだ。」

「? 復讐(リベンジ)? でも、名前は叛乱(リベリオン)だよね。」

 説明の途中に浮かんだルカのこの疑問に対して、ブライトクール・ドラゴンはこう答えた。

「確かにホーリークルセイドは、邪悪を挫いて弱き正義を助ける正義の軍だ。だが、デモンズリベリオンに参加する、彼らに挫かれたかつての邪悪は本当に少数、大半の構成員は、その邪悪を挫く過程で犠牲になった者達だ。それ故に、自分達の行動が正しいと証明するために、あえて反乱軍を名乗っているんだ。」

 ブライトクール・ドラゴンの説明が終わってから、皆は再び黙り込んでしまった。ルカの知らなかった事を説明したのは良いが、肝心なヒノモトへの道行については、全く決まっていないのだから。

 エルサレムでの騒ぎがいつまで続くのか、それが周辺にどれほどの影響を与えるのか、それは実際に見てみないと分からないので、ルカはこう言った。

「それじゃあ、お菓子の町、妖虫の森のルートで行って、エルサレムに寄るか否かは、そこで決めると言う事で良いかな?」

 ルカのこの提案に、カードであるヴィクトル達はともかく、サナは特に反対しなかった。なので、この結論を持って、今後の話し合いは御開きとなった。





 今後の話し合いを終え、昼食も済ませたルカ達は、町へと繰り出していた。これからの旅に備えて、色々と買い込む事になったのだ。

「えっと、テープに薬に替えの下着に………何で俺がサナのまで………」

 これからに必要と言う事で、色々と買い込んで前が見えない程に荷物を抱えたルカは、荷物の一つを見ながらこう言った。買い物の内容をくじ引きで決めた時、ルカは医療品と替えの下着を買う担当になってしまったのだ。自分のはともかく、サナの為の女性用下着まで買う羽目になってしまい、店の人や他の客に変な目で見られて恥ずかしい思いをしたのである。

「さてと、後はこれを上手くまとめて、サナと合流するだけだけど。」

 ルカはこう言いながら、サナとの合流場所に定めている場所へと続く道へ行くため、曲がり角を曲がろうとした。

その瞬間、ドスンと言う音が響くと、ルカはその場でしりもちをつき、購入した荷物を落としてしまった。

「いたたた。」

 ルカが倒れた態勢のまま、お尻を摩ってこう言うと、

「悪い、大丈夫?」

 声の印象から考えて、ルカと同い年くらいの少年の物と思われる声が響き、目の前に手が差し出された。

「あ、大丈夫。」

 ルカはこう言ってその手を取り、その場で立ち上がるとこう言った。

「こちらこそ悪い、目の前が良く見えなくて。」

 ルカとぶつかったのは、ルカと同じくらいの年の少年であった。背丈はルカより少し高いくらいで、青み掛かった黒髪が特徴の美少年であった。

 目の前の少年を確認した後、ルカは足元の様子を確認した。そこには散らばる自分の荷物と、先ほどの衝撃で落としてしまったのだろう、何枚ものカードが散らばっていた。イラストには赤を基調とした兵士が多く描かれているので、自分のカードでないのは明らかである。となると、目の前の少年のカードだろう。

「あー。」

 ルカと少年は二人でこう言うと、それぞれの荷物を拾い始めた。少年はルカの落とした荷物、ルカは少年の落としたカードである。

「あれ、何で女物の下着が?」

 少年は荷物に紛れていた物に疑問を覚えていたが、特に気にすることは無かった。と言うより、気にしては負けだと考えたからだ。

 一方、カードを拾い集めるルカは、

「えっと、ドラゴンフォースの赤龍隊?」

 カードの名称を見ながらこう思った。

(俺の使うドラゴンフォースには、白龍隊の名前が付いているけど……)

 彼ら赤龍隊と、自分の白龍隊には何か関係があるのだろうか、そう考えてカードを拾い集めると、最後の一枚となった。ルカがそのカードを拾った瞬間、戦慄が走った。今まで拾ったカードは、赤を基調とした兵士のカードと、何枚かの戦術、軍略カードであったが、兵士の淦は全て鎧等の装備の色であった。だが、今手元にあるカードは、装備では無く全身が燃える炎のように輝いていた。

 名前には「赤騎龍ブレイブヒート・サラマンダー」と書かれている。

「これは………?」

「? どうした? ああ、それ珍しいカードだから。」

 ルカが言葉を失い、少年がこう声を掛けると、

「おーい、ルカ~?」

 先に集合場所に来たものの、待ちくたびれたのか、サナがルカを探してこの場へとやって来た。彼女はルカの姿を見つけるや否や、彼に声を掛けようとした。だが、ルカの持っているカードを見て、彼女も彼と同じく戦慄した。

「あ、赤い龍の…カード?」

「え、え? どうしたの?」

 少年は何がどうなっているのか分からず、オドオドとしていた。





 その後、落ち着いて話をしようと言う事になり、三人は近くにあった喫茶店に入っていた。そこで出会った少年は「グレン」と言う名前であり、各地を旅してバトルの腕を磨いているのだと言う事が分かった。

「この赤騎龍ブレイブヒート・サラマンダーは僕の家に代々伝わるカードで、一定の年齢になるとこのカードを主軸にしたデッキで、修行をする決まりになっているんだ。」

 グレンはこう言うと、ルカの出した白騎龍ブライトクール・ドラゴンを見ながら、ルカにこう言った。

「僕も結構旅をしているけど、白龍隊最強の兵士のカードを見るのは初めてだよ。赤龍隊と白龍隊はドラゴンフォースの主軸で、それぞれのトップは長きに渡りライバルであると言う話は、幼い頃から良く聞かされたから。」

 グレンはこう言って昔の話をしているが、ルカはブレイブヒート・サラマンダーのカードを凝視しており、サナはそれを見守り、こう訊いた。

「どうかな?」

 この問いに、ルカはこう言った。

「改めて見たけど、はっきりと宣言出来る。これは違うと。」

「違うって?」

 ルカの言葉に、グレンが疑問符を浮かべると、ルカは手っ取り早く説明した。何年か前に自分に住んでいた村が壊滅し、その首謀者として、赤い龍のカードを持った人物を探していると。

「赤い龍ね、赤い龍と言ったら、ブレイブヒート・サラマンダーしか居ないと思うけど。」

 ルカの話を聞いたグレンは、こう言った。





 一方その頃、クインテッド・ソルジャーズの世界では、

「いよぉ!! 久しぶりじゃねえかブライト!!」

「ええい、寄るな暑苦しい!!」

 ブライトクール・ドラゴンこと「ブライト」が、全身が赤い鱗で覆われたドラゴンに絡まれていた。ブライトクール・ドラゴンはうっとおしそうにしているが、どこか悪からず思っている節もあるのか、満更でも無い顔をしている。

「相変わらずですね、赤龍隊最強の兵士、赤騎龍ブレイブヒート・サラマンダー殿?」

 ブライトクール・ドラゴンと一緒に居た、彼の副官「白龍隊軍師シゲハル」も、どこか懐かしがる表情を浮かべながら、両者の様子を見ていた。

 彼の姿を見たブレイブヒート・サラマンダーは、シゲハルにこう言った。

「よおシゲハル、お前もこっちに来ないか?」

 ブレイブヒート・サラマンダーは、暫く前よりシゲハルに赤龍隊入りするように誘っているのである。シゲハルはこの誘いを断っているので、毎度の如くこう言っている。

「その点についてはお断りする。俺は白龍隊が好きなんで。と言うか、そっちにはヨシタカが居るだろうに。」

 彼の言うヨシタカと言うのは、赤龍隊に所属する兵士の一人「赤龍隊軍師ヨシタカ」の事である。彼とシゲハルは、元々ドラゴンフォースの兵士を養成する施設出身であり、その頃からの付き合いなのである。施設を卒業した後は、それぞれ違う部隊に引き抜かれた為、現在は時折しかあっていないが、今でも友情によって結ばれている。

 ブレイブヒート・サラマンダーは、今回ヨシタカを伴っていないと言う事で、彼の伝言をシゲハルに伝えようとした。しかし、

「白龍隊、赤龍隊のトップが揃った状態、都合がいいわ。」

 突如このようなセリフが聞こえ、その場で話は一旦お開きになった。コツコツと足音を鳴らしながら、ヴィクトル・フランケンシュタインが三人の前に現れたからだ。

「ヴィクトル・フランケンシュタイン?!」

「お前、どうやってここに来た?」

 突然のヴィクトルの登場に、ブレイブヒート・サラマンダーは驚き、ブライトクール・ドラゴンは呆れながらこう言った。

 ヴィクトルはブレイブヒート・サラマンダーの殺気を感じ取ると、彼へのけん制とするために、ある兵士を呼び出した。全身が銀色に輝く、大きさだけはこの場に居る二体の龍より上の兵士「人造生命(バイオロイド)№0 バイオドラゴン」である。

「お願いだから彼だけは大人しくさせておいて欲しいわ。私はすごく真面目な話がしたくてここに来ているの。」

 ヴィクトルはバイオドラゴンを撫でながら、ブレイブヒート・サラマンダーにこう言った。彼自身も、サイコ・ファクトリーとの戦いは経験した事が有り、ヴィクトルに並ぶ軍の主力、バイオドラゴンの力はよく分かっているので、一旦殺気を治め、彼女に訊いた。

「所で、一体お前は何を話しに来たんだ?」

 この問いに、ヴィクトルは一息を付いてこう言った。

「白龍隊の面々にはもう話してあると思うけど、“禁ジ兵”の事を彼らに教えるべきだと思うわ。」

「禁ジ兵をだと?」

 ヴィクトルの一言に、ブレイブヒート・サラマンダーは驚いた。

「待て待て、それは例え軍の上層部に位置する者でも、決して口にしてはいけない名前だぞ!!」

 彼がこう言うと、ヴィクトルはこう返した。

「そういっている暇は無いわ。前に会ったある人物の話によると、その禁ジ兵を使って何かを企んでいる組織があると言うわ。それに……ルカがブレイブヒート・サラマンダーが違うと言ったとなると、考えられる可能性は一つだけ、奴の正体は……」

「また奴と戦う事になるのか。ドラゴンフォースは以前奴によって、桃龍隊、緑龍隊、紫龍隊を全滅させられ、他の隊も尋常では無い被害を受けたと言うのに。」

 ヴィクトルが言わんとした事が分かったのか、シゲハルが言葉を繋げ、こう言った。

 最終的に、ヴィクトルの提案に白龍隊の二人は特に反対はしなかったが、ブレイブヒート・サラマンダーは賛成も反対もしなかった。





 一方、ルカとサナはグレンと、クインテッド・ソルジャーズの話に華を咲かせていたが、突如現れた人物によって、その話は遮られた。

「ちょっとよろしいかしら?」

 突如光り輝いたカードの中より現れたヴィクトルは、ルカとサナ、そしてキョトンとしているグレンにこう言った。二人には慣れた物だが、グレンはカードの兵士が実体化する所は初めて見たのだ。言葉を失っているのである。

「えっと、ヴィクトル・フランケンシュタインだよね。何で実体化を?」

「コスト5以上の兵士は実体化出来るみたいよ。」

 有り得ない物を見た、そんな表情を浮かべるグレンにサナがこう言うと、ルカは聞いた。

「と言うか、何で実体化したの? さっきまで大人しくしていたのに。」

 いつもの彼女なら、ここで何等かの冗談を言うのだが、今回は真面目な話をするために実体化したので、真剣な表情でこう言った。

「ルカ、貴方の探す赤い龍の正体だけど、ほぼ確定で予想が付いたわ。禁ジ兵、名前くらいは聞いた事あるでしょう?」

「? なにそれ?」

 初心者のルカは知らないため、キョトンとした顔でこう言った。だが、サナとグレンの方は、驚きを隠せない表情を浮かべていた。

「禁ジ兵って、そんな……」

「いやいや、禁ジ兵は名前だけ知られている都市伝説だよ。」

 サナ、グレンが揃ってこう言うと、ルカは二人に訊いた。禁ジ兵と言うのは何なのか、と。

「昔のことなんだけど、まだクインテッド・ソルジャーズが世界に広まって間もない頃、公私のバトルでの使用は勿論コレクションとしての所持、その他製造と流通の一切を禁止され、この世に一枚も残っていない兵士のカードが存在すると言われているの。それが禁ジ兵と言われているの。」

「とはいえ、単なる都市伝説。一枚もカードが残ってない以上、そんなカードがあるかなんて確認できないし、単なるうわさ好きが勝手に流した噂かもしれないし。」

 サナの説明に、グレンが補足をすると、ヴィクトルはこう言った。

「いいえ、伝説なんかじゃ無く、禁ジ兵は実際に存在している。いえ、正確に言えば、存在していたけど存在してない事にした。」

 ヴィクトルが説明するには、禁ジ兵と言うのは「軍に存在していると色々と厄介」な懲罰兵とは違い、存在するだけで治安を乱しかねない危険な力や思想を持った兵士の事であり、かつて様々な軍が面目を潰してでも彼らを世界より排除したのだと言う。

「ルカの村が崩壊したのも、彼らの仕業と考えるのが妥当ではないかしら。」

 最後にヴィクトルはこう言うと、光と共にカードへと戻った。あそこまで真剣に話をしたと言う事で、彼女にもやる事があるのだろう。

 残されたルカとサナ、グレンはしばらく黙っていたが、やがてグレンが口を開いた。

「あ、やば。もうこんな時間!!」

 彼が見る時計は既に4時過ぎを指している。日暮れにはまだ早い時間であるが、彼には都合が悪いのか、席を立ちあがりこう言った。

「これから用事があるから、僕は先に失礼するよ。」

「あ、ああ、間に合うと良いね。」

 ルカがこう声を掛けると、グレンは最後に、今度バトルしようと言い残すと、その場を去って行った。

 その背を見送った後、ルカはこう思った。

(グレンか、近いうちに、また会う事になりそうだ。)


次回予告

 ヒノモト行きの準備を終えたルカ達は、ヒノモトを目指す旅を始めた。道程の中に組み込まれた最初の町、甘味の町「スィーティー」に立ち寄ると、その町にグランドジェネラルが居ると言う情報を手にする。

 早速その場所を尋ねると、そこにはグランドジェネラルと思われる指揮官と、彼の操る面白い軍団があった。

次回「お菓子な侵略者」


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