帝国2:野営
砦へあと6kmばかりで着くというところまで、1日もかからずにたどり着いた。
「今日は、ここで野営を張る。交代で歩哨に立ち、翌日に砦へ攻撃をかける」
ラウストが全員に告げる。
「従者諸君は、全員がゆっくりと眠っていてほしい。君たちも、明日には有力な戦力となる」
そう言って、ラウストは全員の顔つきを見る。
精強な顔立ちに、恐れの色はない。
「砦は、ここから3km離れたところにある岩山の入り口から入らなければならない。そこは、共和国との国境に当たる。そのため、向こう側と戦闘になる恐れもある。従者とオタスとテルケダは殿として、最後尾に。その他の者は、私について、砦の内部へと入る。今回は参謀をマネスが務める。よろしく頼む」
「そのような重責、年少のわたくしには重すぎかと存じますが……」
マネスがラウストに言う。
「いや、若いからこそ見えるものがあるというもの。その視点を大事にしたい。皆の者、それでよいだろう」
「我は問題ない」
オタスがラウストへ答える。
他の者も、特に異議はないようだ。
「ならば、そのようにする。歩哨は、2時間交代で、オタス、ギープイ、テルケダ、マネス、私の順番とする。それぞれの従者は、ゆっくりと休みなさい。今回、何らかの功績を挙げた者には、私から団長へ騎士団員となるために推挙しよう」
従者たちにとって、この話はとても興味深かったらしい。
誰もがジッとラウストを見つめている。
「我は、皇帝陛下の忠臣である。我が言葉は皇帝陛下の言葉。皇帝陛下の言葉は絶対である。ゆえに、我が話す言葉は絶対である」
これは、武士に二言はないという意味である。
「では、こちらは、そろそろテントを張らせていただきます」
「うむ、よろしく頼んだ」
従者の一人が言った言葉にも、すべて真面目に返答する。
こうして、夜は更けていった。