帝国1:出陣
皇帝直隷騎士団の団員の一人である人類のラウスト・エパルーゲンは、騎士団長であられる神人のルバース・キリグンから皇帝の勅令として、命令を拝領した。
「これは勅令である。よいな」
勅令が書かれた最高の紙である最紙を巻き直し、ルバース騎士団長がラウストに命じた。
「この命にかえて、命令を違わず遂行いたしますことを、お約束申しあげます」
その命令とは、共和国近傍にある山賊の砦を襲撃し、制圧せよということである。
この山賊の砦は、岩山の高いところにあり、周囲を見回すには絶好のポイントである。
のみならず、この岩山全体を制すれば、共和国の国境へ龍人または鳥人を送り、進攻することが可能となる。
ならば、この土地を制圧するしかないであろうというのが、皇帝が下した結論であった。
そのためならば、ありとあらゆる便宜を図るという、皇帝直裁の許可証が、ラウストに対して手交された。
これによって、帝国全土に散らばっている爵地領の当主たちは、ラウストに物資を供給する必要がある。
「では、飛んで行け。龍よりも力強く、鳥よりも素早く!」
急ぎの際の定型句をルバースがラウストにいう。
「はっ」
立て膝の礼から直立不動の礼をとり、そのままくるりと背を向けて、駆けだした。
必要な人員は、すぐに集めることができた。
なにせ、騎士団員の中から、選ぶことが義務となっているからだ。
無論、従者は騎士団員ではないが、彼らは例外として連れて行くこととなる。
「では、君たちと共に、今回は出陣といきたい」
騎士団員の4人と従者5人を引き連れることとなった。
すなわち、騎士団員の龍人のオタス・アンプレッス、鳥人テルケダ・エルンセント、人類ギープイ・ハシバント、全神人の中で最年少であるマネス・グランスーリイだ。
そして、それぞれの従者と一緒に、物資と共にラウストが先導して山賊の砦へと向かいだした。