"Sprinkles"
「駄目っ………」
「駄目だよ、こんな事……!!!」
瞳を覗き込む僕の視線に怯えながらも、君は拒絶を口にする
しかし其の心の内が、何を映して居るのか
僕は、君自身よりも深く知って居た
「───眼が」
「違う事を、云ってるよ」
食卓を挟み
向かい合って座りながら、君の顎に触れる
背筋を弾かれた様に跳ねさせながらも、君は僕の指を拒ま無かった
厚切りにして入念に揚げた馬鈴薯の横に、マヨネーズの小鉢を添える
油をキッチンペーパーに吸われ、粗熱を奪われた馬鈴薯を、僕は指で摘むとマヨネーズに一度沈め、君の唇に近付けた
「駄目だから───」
「───気持ち良いんだよ?」
君は熱い瞳で、はあはあと息を吐きながら僕の手を──そして馬鈴薯を視る
数多の逡巡が、瞬間のうちに君の意識を巡るが
最期には君は抗えず、瞼を降ろすと、恐る恐る口を開き、待ち侘びる姿勢を取った
濡れた君の舌に
僕は、そっと食餌を着地させる
『んっ…』と云う、君の鼻腔からの吐息が手の甲に掛かり、僕は嗤う
欲望が勝利する瞬間はいつ視ても、胸のすく光景だ
僕は、君の耳に唇を寄せると「もっとひどい事しようよ」と囁く
君が蕩けた表情で、びくびくと躰を震えさせた
マヨネーズに、加熱して溶いておいたチーズを加え落とす
「僕の前では」
「おかしくなっちゃって良いからね」
金属の匙でチーズを混ぜ合わせる
君は、其の有様を覗き込みながら瞬きもせず、唾液が零れるままの姿で視詰めて居る
匙を引き抜く
息を吹き掛けて、君の口に入れる
君は微笑みながら
涙をテーブルに、ぼとぼとと落とした
「たすけて……」
「おかしくなっちゃう………」
笑いながらも涙でべたべたになった君に、僕は何も言わずフォークを握らせた
「僕からは指示しないから」
「───好きにしていいよ」
狂いそうになりながら、君は馬鈴薯を食べ尽くす
時間はそんなに掛からなかった
其れだけは、確実に記憶している
食べ終わりが視え始める頃には、君は意味のある言葉は何一つ話せなくなって居た
最終的に、調味料には七味唐辛子にガーリックペースト、黒胡椒などが加えられ、掛け算の様に加わった快楽に、理性はいともたやすく破壊され尽くした
此処まで来れば、調略は終わったも同然だろう
僕は、冷蔵庫からチョコスプレーの小鉢を取り出すと、君に囁きかける
「これも入れちゃおうよ…………」
残念な事に、僅かに残されただけの理性すらが拒絶したらしく
僕は引っぱたかれ
一時間に亘り、君から叱られる事となった




