第八話:火曜日の放課後と、張り込み作戦(未遂)
ミナミは、決めていた。
「今日こそ、彼に“直接聞く”」
“あのメモ”が彼の手に渡り、そして返ってきたあの「パンってたまに刺さるよな」の返答――
どう考えても告白への返事とは思えなかったが、可能性はゼロじゃない。
ゼロじゃないけど、もはやマイナスに近い。
(ていうか、「パン」って言った?私、パンじゃないよね?)
彼女は午後、真剣に考えてしまった。「パン顔」と言われた経験はないが、もしかして新しい隠語か?と。
一方、彼はと言うと。
放課後、理科準備室の前でスマホのカメラロールを見ていた。
パンの写真が7枚あった。
しかも全部、昨日の焼きそばパンのアングル違い。
「これ、マジで光の入り方で全然違うんだよな……これとか、もう芸術……」
そう、彼は今日、パン専用インスタ垢を作った。
アカウント名:@yaki_love_365
(※この名前を見たミナミが、後に深く誤解することになる)
そのころ、オオタくんは、
ミナミと彼がついに接近すると信じて、図書室で隠密張り込み中だった。
場所は、カウンター脇の観葉植物の影。
視界は悪いが、彼には「気配」で察するスキルがある(と思っている)。
彼の持参したメモ帳には、こう記されていた:
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《観察メモ:Day8》
・二人とも行動に変化なし。
・しかしミナミ、鉛筆を2回落とす(=緊張の表れ?)
・彼、スマホの画面を見て笑ってた(=彼女からのLINE?違う、パンだった)
・あいつ、どこまでパンなんだよ……(※個人的感想)
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そして、運命の放課後。
ミナミは、ついに彼の元へ歩み寄った。
(今度こそ、ちゃんと聞こう。遠回しじゃなくて……)
深呼吸して、真正面から声をかける。
「ねえ、昨日の……“好きです”って、どういう意味だったの?」
彼は振り返って、少しだけ戸惑った。
「ああ……あれ?」
そして言った。
「……なんか、急に食べたくなってさ」
その瞬間、空気が爆発的に誤解方向にねじれた。
ミナミ:(……え?急に“私”を食べたくなった???)
彼:(あ、パンの話してるよね?)
オオタくん:(気配が一気に変わった……これ、完全に告白返事タイム入ったな……)
ミナミは、顔を赤くしながら笑った。
「え、そっ……そんなに……?」
(いやこれ、言い方やばいって!なに言ってんの!?)
彼も、微笑み返して言った。
「うん、昨日のパン、マジで神だった」
(ほら、オオタのメモ、まじ当たってたわ。あいつ、分かってるな)
その瞬間、ミナミの思考はまた数秒間フリーズした。
張り込み終了
オオタくんのメモ帳に、でかでかと書かれた。
>「ついに両想い確定。焼きそばパン=合言葉説、濃厚」
そしてそのページの下に、さらにこう書かれる。
>「※だが、彼は少し頭がゆるい可能性あり。検証必要。」
今日の誤解まとめ:
ミナミ:
→「彼、めちゃくちゃストレートに気持ち言ってくるやん……こわ……」
彼:
→「パンの話って通じる人、やっぱいいな〜」
オオタくん:
→「観察は、愛より深い。(←名言っぽいけど意味不明)」
教訓(だれも得してない)
「食べたくなった」は、使う文脈を選ぼう
人をパンにたとえると、わりと重い
オオタくんのメモ帳は、たぶん後世に残ると面倒




