第七話:月曜日の午後と、返事のつもりじゃない返事
5時間目の理科の授業。
教室の空気はやけにピリついていた。
原因は、昼休みに飛び出した「好きです」事件である(※パンに対する発言)。
もちろん彼自身は、そんなこと忘れている。
今はスライドに映るカエルの消化器官を見て、
「この図、ちょっとラーメンに見えない?」とか思っていた。すごく平和。
しかし、ミナミは違った。
彼の言葉が本気か冗談か、パンなのか自分なのか――その真相を探るため、
授業中にもかかわらず、机の中で密かに**「返事メモ」**を書いていた。
>「えっと……もしさっきのが、パンじゃなくて、そういう意味だったら……えーと……私も、わりと……」
自分で書いておいて、赤面。
(なにこの乙女文?誰これ?私?)
ミナミの自意識が一時的に爆発した。
で、あろうことかそのメモを落とした。
理科のノートに挟んだつもりが、**つるっ……**と机から床へ。
そしてその紙は、偶然にも……オオタくんの足元へ。
オオタくんは見た。
ミナミの筆跡、そして「わりと……」の文字。
……ついに来たな、と。
(ああ……これはつまり、告白への返事の下書き……!ミナミさん……ちゃんと向き合おうとしてる……!)
そして彼はそっと紙を拾い、ごく自然な動きで彼の机の上に置いた。
「……はい、落とし物」
彼は言った。まるで、ただの親切なクラスメイトかのように。
でもその内心はこうだ。
(ついに二人の物語が動き出す……!“返事を渡す橋渡し役”、オオタ、ここに爆誕)
問題は、この紙を受け取った彼本人である。
彼は、さっきまでラーメンに見えていたカエルの腸から意識を戻し、
紙を受け取り、読んだ。
読んだが。
(え?……なにこれ……「私もわりと……」?なにが??)
彼の脳は1.2秒で混乱に陥り、2.5秒で誤解した。
(……あっ、これ、オオタのメモか)
そう。彼は、オオタくんが突然「自分も焼きそばパンわりと好きだよ」ってことを伝えてきたんだと思ったのだ。
それが5秒後に返された言葉:
「お、わかる。パンってたまに刺さるよな」
──当然ミナミは、
(……今のって、私への返事……?)と、頭を抱えた。
情報の流れ(※間違ってます)
ミナミ:「わたし、もしかして返事書いちゃった……」
オオタ:「彼に渡した。完璧。青春、進行中」
彼:「オオタ、パンの話わかってくれるやつだった」
結果的にこうなった
ミナミ:「多分、フラれた……?」
オオタくん:「おめでとう、カップル誕生!」(勝手に祝ってる)
彼:「あいつ、焼きそば派かと思ったらあんパンもいけるのか〜」
みんなそれぞれ、自分の答えを手に入れた(つもり)。
だが現実の答えは、誰も知らない。
今日の教訓
メモは落とすな。
パンと恋は、同じ言葉で語るな。
「私もわりと……」というあいまい表現は、人類にはまだ早かった。




