第六話:月曜日の昼と「好きです」
月曜日の昼休み、彼は言ってはいけないタイミングで、言ってはいけない言葉を言ってしまった。
「……好きです」
――そう、給食の時間、焼きそばパンを一口食べた直後の彼は、
口いっぱいに麺をくわえたまま、ぽろっとその言葉をこぼしてしまったのだ。
原因はシンプル。焼きそばパンが想像以上においしかった。
だが、彼のその発言は――
教室の真ん中あたりでちょうど飲み物を口にしていたミナミの耳に、クリティカルに届いた。
ミナミは、口の中の牛乳を危うくリバースしそうになった。
(……え?今、聞こえた? いや、まさか……でも……「好きです」って……)
しかも問題は、彼がちょうどミナミの方を見て言ったように聞こえたこと。
彼の顔には真剣味は一切なかったが、それが逆にリアルだった。
まるで、「恥ずかしさを隠すために軽く言ってるけど、本気」みたいな、
そんな一番厄介なパターン。
(……いや、待って。これは、事件。校内謎事件ファイルに、記録すべき……?)
ミナミは内心パニックになりながらも、ノートを開いた。
《No.8:突然の告白事件。対象=自分? 状況未確認。パンが関係している可能性あり。調査継続。》
一方、オオタくんは、なぜか3歩離れた場所でこのやり取りを聞いていた。
そして、脳内で勝手に全てをまとめ上げていた。
(ふむ、彼はついにミナミさんに……焼きそばパンを通して、思いを……)
しかもその直後、ミナミがメモを取る姿を見て、
「彼女も彼の気持ちを……受け止めようとしているんだな……」と、また勝手に解釈。
オオタくんは、静かに給食の牛乳パックにマジックでこう書いた。
「青春、爆発寸前」
で、当の彼はというと。
焼きそばパンを食べ終わったあと、隣のケンタにこう言っていた。
「マジでこれ、コンビニのやつより10倍うまい。うちの給食班、天才すぎない?」
……つまり、「好きです」は完全にパンへのラブコールだった。
だが、それがここまでの誤解を呼んでいることに、
彼は気づいていない。むしろ、明日もパン出ないかな〜とか思っている。
その後の教室
ミナミ:
(もしかして本気なの?でもパンの話だった可能性もある?いや、でも「好き」って……どういう「好き」?)
オオタくん:
(次はどんな展開が来る?返事はいつ?ケンカ?感動?映画化?)
彼:
「今日のパン、持ち帰りできんかな……」
今日のすれ違いまとめ
「好きです」は文脈が命
食べ物の感想は感情を込めすぎると危険
言葉は伝え方より伝わり方のほうが難しい
そして、校内恋愛フラグはパンひとつで立つ(←?)




