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三人称視点  作者: 反町樹
学園物語
5/18

第五話:金曜日の朝と黒板のメッセージ

 金曜日の朝、教室の黒板には意味深な言葉が書かれていた。

 「もうダメかもしれん」

 白いチョークで、やたら綺麗な字。

 しかも、右下に小さく「?」が付いていた。

 彼がそれを最初に見たとき、

 口にしていたあんぱんの中身が一瞬止まった(気がした)。

 「……誰だよ、金曜の朝から終末宣言みたいなこと書いたの……」

 彼は思わず周囲を見回すが、誰も犯人らしき動きをしていない。みんな普通に席に座って、普通に金曜を迎えている。

 ただ、ケンタだけがやけに深いため息をついて言った。

 「いや、むしろ真理じゃない?金曜日って、気力ギリだし」

 彼はあんぱんの食べかけを持ちながら、深くうなずいた。

 ミナミは、登校してすぐに黒板を見て立ち止まった。

 (もうダメかもしれん、?)

 この一文の曖昧さに、彼女の探偵魂(非公認)がくすぐられる。

 《文末の「?」が心理的不安定さを示唆。自信喪失か、単なるネタか。だがなぜ金曜。なぜ黒板。なぜチョークで。》

 ミナミの思考はすでに高速回転モードに入っていた。

 ちなみに彼女は、ノートに「校内謎事件ファイル」というコーナーを作っている。

 今回の件は、間違いなくNo.7:黒板の絶望文として記録される予定だ。

 そのころ、オオタくんは、ただ黒板を一目見ただけで、

 「あー、先生の字だな」と即答した。

 筆跡でわかるのかって? わかるのだ。

 彼はすでに、先生たちの板書の書き癖を把握しており、黒板の左下に書かれた「ちょっと斜め気味の“し”」を見て、

 「ああ、これは数学のカトウ先生ですね」と判断していた。

 そしてその直後、カトウ先生が入ってきて言った。

 「いや〜、すまんすまん、昨日のテスト採点してて徹夜してたら、なんかテンションおかしくなってさ〜、つい書いちゃった☆」

 教室がざわついた。

 ケンタがつぶやいた。

 「カトウ……あんたが一番ダメかもしれん……」

金曜日の本音

 放送が止まった昨日に続き、今日は黒板に謎の終末文。

 だが、それが事件でもトラブルでもないという事実に、なんとなく皆が安心した。

 彼は、あんぱんの最後の一口を食べながら思った。

 「まあ、ダメかもしれんって書いた時点で、まだダメじゃないってことだよな」

 ミナミは、「先生も人間だったか……」とメモを取りつつも、

 「このレベルなら毎日書いてほしいかも」と思っていた。

 オオタくんは、机の上で物理の教科書を開きながら、

 「むしろ、毎日ひとこと黒板に書いてほしいな。“先生の心の一句”ってコーナーで」と本気で考えていた。

今日のまとめ(ゆるめ)

絶望的メッセージが黒板にあると、わりと盛り上がる。

金曜日は、先生も生徒もだいたい限界。

「?」をつければ、なんでもちょっとだけ柔らかくなる。

ミナミのノートにはまたひとつ事件が追加された。

オオタくんは、今後“黒板筆跡鑑定士”として何かに目覚めるかもしれない。

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