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三人称視点  作者: 反町樹
学園物語
4/18

第四話:木曜日の朝と消えた放送委員

 木曜日の朝、彼は目覚ましに勝利した。

 アラーム音より先に目を覚まし、堂々と時計を止め、二度寝を始めた。

 ……30分後に負けた。

 「うわあああああああああ!!!」

 彼の叫びが、家中に響いた。もはやそれが、近所の“毎朝の放送”と化している。

 学校に着いたとき、教室にはすでに数人が集まっていた。

 でも、いつも聞こえるはずの朝の校内放送が、今日はなかった。

 BGMもない。アナウンスもない。ただ、シーン……という音が、心にやさしく突き刺さる。

 彼は言った。

 「もしかして、地球終わった?」

 ケンタが真顔で答えた。

 「地球が終わったら、お前が学校に来れてるわけないだろ」

 彼はそれに深く納得し、教室の椅子に腰を下ろした。

 そのまま机に突っ伏したのは、地球が終わってなくても、疲れていたからである。

 一方そのころ、ミナミは放送室のドアの前にいた。

 なぜなら彼女は今、「今日の放送がない理由」という謎に引き寄せられていた。朝の放送は、時に空気よりも自然に存在しているが、なくなると案外、気になる。

 ドアは開いていた。

 中には誰もいなかった。

 そして、マイクの上には――食べかけのどら焼きが置かれていた。

 「………………は?」

 ミナミの冷静な脳が、思考を一瞬停止した。だが、すぐにメモ帳を取り出し、書き込む。

 《事件の可能性:高。食べかけの和菓子、現場に放置。しかも放送室。謎は深まる。》

 ミナミの頭の中では「名探偵ごっこBGM」が流れていた。

 そのころ、オオタくんは、図書室で今日の一冊を吟味していた。

 選ばれた本のタイトルは――

 『もし校内放送が止まったら』

 まさかのピンポイント。

 オオタくんは本を開いて、真顔でつぶやく。

 「……参考にならない」

 なぜなら中身は、恋に悩む放送委員と転校生のラブコメだったからである。

 仕方がないので、本を戻し、窓の外を見た。

 そのとき、風に吹かれて、誰かが書いた紙がふわっと舞い込んできた。

 そこにはマジックでこう書かれていた。

 「おれは自由になる」

 オオタくんは静かに納得した。

 「……放送委員、辞めたな」

真相たぶん

 放送がなかったのは、放送委員のアヤカさんが、突発的に「もうやだ!」ってなって、

 どら焼き片手にどこかへ逃げ出したからである(※たぶん)。

 だがそれを知る者は、まだ誰もいない。

 彼は今日も昼休みにパンを落とし、

 ミナミはその瞬間を見逃し、軽く悔しがり、

 オオタくんは「今日の事件はノーカウントだな」と独り言をつぶやいた。

教訓(?)

 ・放送は、あるべきときにあるべき。

 ・どら焼きは、最後まで食べるべき。

 ・地球は、意外とちゃんと回ってる。

 ・「三人称視点」は、今日も絶好調。

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