三人称視点
街の片隅にある小さなカフェ「ミルクティー」。そこには、毎日決まった時間にやってくる三人の客がいた。
一人目は、窓際の席に座る若い女性。彼女はいつもノートパソコンを開いて、真剣な表情で何かを書いている。名前は紗季。夢は小説家になることだった。
二人目は、カウンターでコーヒーを注文する中年男性。彼の名は健一。毎朝同じ時間にここに来て、新聞を読みながら静かな時間を過ごしていた。彼は定年退職したばかりで、新しい生活に少し戸惑っている様子だった。
三人目は、店の奥のテーブルでスケッチブックを広げている少年、翔太。彼は美術部に所属していて、ここで風景や人々を観察しながら絵を描くのが好きだった。
彼らはそれぞれ別々の世界を生きているが、毎日このカフェで顔を合わせる。互いに名前を知らず、ただ存在を感じながら過ごす時間は、それぞれにとって小さな安心の場所だった。
ある日、紗季がふと隣のテーブルを見ると、翔太が自分の書いているものを興味深そうに見ていた。健一もそれに気づき、三人は自然と話し始めた。
「君の書いている物語はどんなもの?」紗季が尋ねる。
「風景を描いているだけだよ。でも、いつか物語になるかもね」翔太は笑った。
健一は静かに頷きながら言った。「人生は色んな視点から見ることが大事だ。三人称視点、ってやつだな。」
その言葉に三人は顔を見合わせて微笑んだ。それぞれの視点が交わり、新しい物語が始まった瞬間だった。




