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第二王子の婚約が白紙になったせいで思わぬところにお鉢が回って来ました。目的が果たされれば小さなことは気にしません

作者: 直江あき

はじめまして、もしくはお久しぶりです。

一年ぶりの投稿です。

前半はたんたんと進みます。ご自身の所属環境でイメージしていただけるとよいかもです。恋愛に仕事をぶちこんだらこんな感じかなと。モブからしたら結構いい迷惑な感じです。

後半は生温い感じで読んで頂けるかなと。

少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

宜しくお願いします。

 




 モーリス国王は大きな溜め息をついた。

 一体どんな心配事かというと、二番目の王子とその婚約者候補達の関係だ。


 候補者として、彼女達が王城に呼び出された時からそれは始まった。


 一人は王子より年下で、賢く快活だが恋愛の機微は苦手な娘。もう一人は年は些か離れているが女性の色気を全面に出したタイプで、令嬢間では情報操作が得意。年下の娘は名をミネルヴァ、年上の方はコンスタンスという。


 初めは年が近いミネルヴァと王子が仲良くなった。コンスタンスはあからさまに王子に好意を見せつつ()()した。お色気路線過ぎたのか王子は接触に苦手意識を持っていたが、実は好きな食べ物が一緒だったり、女性としては珍しくボードゲームが好きで対戦もできることから打ち解けていった。


 彼女達は年齢差と共通点が少ないこともあって王子妃としてのスタンスが全く違う。二人足して2で割れればいいのに……と洩らされるほど、大変選び難かった。


 もともと性格もあわない2人はある時とうとう正面から対立した。


 某国使節団を迎え入れる準備で、二人の婚約者候補にも仕事が割り当てられた。生真面目なミネルヴァは率先して仕事をしていく。一方年嵩のコンスタンスは王子に何かとしおらしく現状を報告し、困っていることを匂わせ、何にでも興味をもって首を突っ込みたがる王子の特性を利用し、彼を巻き込んだ。実質コンスタンスの業績の半分は王子が担っていた。


 うまく使われているというのか、尻に敷かれているというのか。いつのまにか王子はコンスタンス寄りだ。本来なら年下のミネルヴァの方が経験が少なく、助けが必要だと考えられていたが、彼女は頑固で頑張り屋でもあったため、頼りなさげにして男心を揺さぶるコンスタンスのようには王子に頼ることはせず、一人で頑張るためにどんどん疲れていった。しかもコンスタンスは面倒で手間のかかる仕事はうまくミネルヴァに担当させ、自分はきちんとプライベートの時間は確保した。逆にミネルヴァはそんなコンスタンスに思うところはあるものの、時間を惜しまず仕事に取り組んだ。胃も痛むし頭痛もするし、体調不良を感じながらも責任感に囚われ必死に仕事をした。周りも王子もそんな彼女を心配し労う言葉をかけたが、コンスタンスにいいように使われている王子をミネルヴァは冷たい微笑で拒絶した。


 とうとう限界がきたミネルヴァはコンスタンスに冷たく言い放った。大きな通路でのことで、侍女や文官達も大勢居合わせた。


「そんなに仕事をしたくないのならお帰りなさったら?」

「ミネルヴァ嬢、何か誤解があるのでは」

「王子は黙ってください」


 キレたミネルヴァはぴしゃりと言い放つ。王子もあまりのミネルヴァの激怒振りに驚きを隠せず、黙ってしまう。


「あなたの分担を私が担当しても、それはそのままあなたの功績にしますから。やる気のない人間がいると士気が下がって邪魔です」

「ひ、ひどい。ミネルヴァ様、私もできる限りのことはしてますわ」

「えぇ、誰もしてないとは申しません。ただ先日のミスはそもそもあなたの()()()()放置が原因でしょう? 面倒事だけ私に押し付けるのはもうやめてっ」


 実は先日、国賓に出す予定のメイン食材の入荷が遅れそうだと緊急で連絡が入った。この影響は大きい。料理長にメニューの組立の見直しを依頼し、その新メニューの食材の仕入れ先の選定、合わせる飲み物の検討、食器の用意等、全てが実現可能かどうか等を一から考え直さねばならない大きな変更だ。これを最初に知ったのはコンスタンスだった。だが面倒なことだとすぐに判断し、定時で帰宅する為にすぐに対応には当たらなかった。つまり放置だ。そして数時間後。仕事終わりのミネルヴァがこの連絡をようやく確認した時には遅く、その日にできることは少なく、また休日を前にしていたため対応が遅くなり結局損害が出てしまった。対応していくうちにコンスタンスがこのことを先に連絡を受けていたことも分かってしまった。公的には誰にもお咎めはなかった。


 だがミネルヴァは許せなかった。言い訳を続けようとするコンスタンスに最後の打撃を与える。


「国益に反します、邪魔だと言いました。コンスタンス嬢! 今すぐお帰りなさいっ」


 あまりの強い口調と迫力に誰も動かなかった。コンスタンスは目に涙を溜めて、一言酷いと言い残し、その場から立ち去った。我に返った王子がそのままコンスタンスの後を追った。ミネルヴァは残りの仕事に取り掛かるために、固い顔のまま立ち去った。


 そしてそのままコンスタンスは引き込もってしまった。体調不良と称して一週間以上登城せず。その間、王子は見舞いの手紙を何度も送り、コンスタンスに肩入れしていないように見せるためこっそり彼女を見舞い、勇気づけた。


 王子の考えはこうだ。


 コンスタンスが確認したのにそのままにしたのはいただけないが、まだ業務に不馴れなのだから仕方がない。重要とは思わなかったのだろうがこれは経験を積めばしなくなるミスだ。だがミネルヴァのかけた言葉はダメだ。大勢の前で指摘の範囲を越えた、あれは暴言と取られても仕方ない。いくら仕事ができても、あれでは人望がついてこない。性格の問題だから直すのも時間がかかるだろう。どちらが妃になっても、その後の社交での協力も必要なのだから、まずは二人の仲の修復が必要だ。行き過ぎた言葉の謝罪をミネルヴァからさせて、彼女も休めるように仕事を少しセーブさせよう。そうすれば多少イライラは収まるだろう。


 そうして第二王子は仲裁を王太子である第一王子に頼んだ。その時居合わせた者として、極めて公平に判断して、ミネルヴァはコンスタンスに言い過ぎたと。コンスタンスが登城しないことで、業務の遅れもあるし、ミネルヴァ自身に負担がかかってしまうから、ミネルヴァにコンスタンスへ謝って仲直りしてほしいのだと。


 王太子は黙って話を聞き、対応することを約束した。


「これでようやく話合いの場について貰えそうです。私がミネルヴァの体調を案じて休むように言っても聞き入れて貰えなかったのですが、仲違いの橋渡しをすることで、信じて貰えましょう。どちらも大切な妃候補なのだから」


 安堵して第二王子は心を吐露して微笑みを見せた。王太子は自分の知らせを待つように指示して第二王子を下がらせた。










「あぁ、そういえばそんなこともありましたね殿下」

「殿下ではない、義父上と呼びなさい」

「一回りも離れていないのに義父上……」


 ここは王太子執務室。最近養女とした秘書官のアンナとの義親子水入らず。要は気の置けない者はいない場だ。


 話題はアンナが養女とされることとなった発端の事件のこと。


 第二王子の婚約者候補が某国接待準備で対立したことだ。行き過ぎた発言をしたとされるミネルヴァと、その暴言を受けて心に傷を負ったコンスタンス。そんな二人の誤解を解きたい第二王子。


 事件から一週間以上も経過してから第二王子は兄に仲裁を頼んだが、事件の30分後には国王も王太子も知っていた。しかもコンスタンスは密かに自分から国王に事件の報告を行っていた。


 自分の力量不足で、大切な報告を最優先にすべき事と判断できなかったことを詫び、今後は今以上に精進して仕えたいと涙ながらにコンスタンスは訴えた。ただ、自分だけなら耐えられるが、ミネルヴァの暴言が他の者に向くのは阻止したい。ミネルヴァの好感度も下がってしまうし、他の者達も傷ついてしまうからと。その為にもミネルヴァに言い過ぎを認めさせて、自分へ謝罪をして欲しいのだと言い募った。


 モーリス国王はその訴えを聞き、過剰労働で疲れたミネルヴァも止めたいので、話合いの場を設けると約束した。そして約束の場の2日前に、ようやく第二王子は王太子に相談をした。二人を合わせることが決まっていたからこそ、王太子も第二王子の願いを黙って引き受けた。だが体調不良でコンスタンスは当日登城せず、王太子同席の元、国王はミネルヴァとだけ話をした。結果、暴言を認め、ミネルヴァはコンスタンスに謝罪を約束した。一方でまだ候補でしかないのに、誰よりも責任感をもって仕事に真摯に対応するミネルヴァを国王は褒めた。


「自分をきちんと大切にしなさい」


 言われたミネルヴァも、休まず働き、結果自分を追い詰めたことを反省し頭を下げた。これが他の者には湾曲して伝わった。


「登城出来ないほど傷ついたコンスタンス様を思い、ミネルヴァ様はお叱りを受けた」


 第二王子も噂を真っ向から受け取った。彼は満足して密かに喜んだ。何故なら彼はコンスタンスに「君は悪くない。僕が君を守る」と言っていたからだ。


 か弱い年上の艶やかな女性を守れる、年下のイイ男=俺っ!!


 第二王子の頭は沸いていた。端から見たら手練手管に長けた年増に引っ掛かった馬鹿王子に見えていることも知らずに、彼は自分を褒めていた。そして自身の側近にイチイチ自分のしたことを自慢げに細かく報告していた。これは国王へ筒抜けだった。庇っていることがコンスタンスの実務能力の無さ、彼自身がそれを見抜く力がないこととハニトラに弱いことを示し、より二人の立場を悪くするものだとは気がつかなかった。


 コンスタンスも登城しないことで体調不良をより鮮明にできたと思い、国王に更なる要求を突きつけた。自分も責を負うので、ミネルヴァを第二王子から遠退かせて欲しいと。


 国王はそれを突っぱねた。


「婚約者候補であるそなたにそこまで言われる立場ではないのだが。そこまで赦した覚えもないが聞かなかったことにしようか」

「国王陛下、優秀な第二王子殿下のためにお願い申し上げているのです。私も勿論責を追いますから」

「第二王子の為、なのだな」

「勿論でございます!」


 国王は「あいわかった、沙汰をまて」とだけ返事をし、周囲は緊迫したやり取りが終わり、ほっと胸を撫で下ろした。


 後日。国王の通達に多くの人間に激震が走った。


 第二王子は伯爵位を賜り臣下に。彼の婚約者候補は二人とも白紙。コンスタンスは修道院にて奉仕活動を行うこと。ミネルヴァは王太子の秘書官に抜擢する女官アンナの侍女として勤務することという内容だった。


 第二王子は青ざめた。自分が臣籍降下するのはずっと先の予定だったし、侯爵となる筈だった。自分の為に身を削って働くミネルヴァも、自分へ助けを求めて涙ぐむコンスタンスも、どちらも自分を各々の愛し方で想ってくれていじらしい。足して2で割ると良いのにと言われて選べないのだから二人とも娶れば良いのでは……と思っていたのに。おまけに白紙はそれぞれの意思だと聞いた。二人の女性に争われるイイ男と思っていたし、兄を支えて頼りにされていると思っていたのに仰天する程の早期臣籍降下。全てがショックだった。側近もその降下についていくよう下知され、華々しい未来は同様に散った。


 一方、コンスタンスも「自分も責を負う」と訴えたことで、王子を想いつつ、ライバルのミネルヴァも立てる慈悲深い女=王子妃にふさわしい!と思われると思ったのに、修道院行きを命じられるとは思っていなかった。王子もその側近も取り巻きの令嬢も頻繁に見舞いに来ては「早く城へ戻ってきてください、待ってます」と言ってくれたし、世論は自分に傾いてると新聞を賑わせていたのに何故?! と納得いかない。


 諦められないコンスタンスは第二王子に訴えた。修道院での奉仕活動ではなく、王子の側近として無給でいいから働かせて欲しいと頼んだ。侍女でも下女でも何でもいいから側で力になりたいのだと訴えた。


 だが流石の王子も断った。自分の超早期臣籍降下は今回の事態がそれだけ重く判定されたということで、自分の落ち度だと理解していたからだ。そもそも重要な連絡を後回しにして損害を出してしまったことから目を背け、それに対応してくれたミネルヴァの怒りの暴言にだけ焦点を合わせたことが自分達の間違いだったのだと伝えた。その冷静な言葉にコンスタンスは王子を詰り、修道院で一月程奉仕した後で行方をくらました。奉仕活動の期限も決まっていなかったし、一月は働いたし費用の無駄ということで、特に追っ手はかけられなかった。


 また王太子も密かに反省を強いられていた。


 真摯に仕事に取り組み、成果を挙げるミネルヴァだったが、その実は気分にムラがあった。周囲に愚痴を言い続け、体調不良を訴えて周りを心配させつつ、休んでは……との声には「自分が今働かないと明日の自分が苦しくなる」と言って拒絶し、ぐだぐだ言いながら働くのだ。だが若さのせいだとして、「君がいるお陰で仕事が回っている。候補とはいえ弟は幸せだ」「君は家族になるかもしれない大切なお嬢さんなのだから」と言って、王太子は暇を見つけては褒めて甘やかした。持ち上げた方がミネルヴァには有効だろうし、弟がよく思われていない分自分が言うことでカバーになると思ったからだ。


 だが体調不良を押し殺して黙って働く人間なんてたくさんいるし、王子を掌で転がして仕事をしないコンスタンスも、ムラがあって無自覚の可哀想だと思われたい素振りのミネルヴァも同じ穴の狢だ。褒める王太子の評判も下がっていた。


 婚約者候補二人がやらない分は結局サポートしている側に負担がかかるのだ。それを指揮していたのが文官のアンナだった。仕方なしに二人のサポートをしていたものの、周囲に助けられ、めきめき頭角を現していた。それが国王の耳に入っていた。


 アンナの身辺調査が行われ、親族ごと問題ないことがわかり、国王は早々に囲うことにしたのだ。それが秘書官への抜擢だ。最初は侮られていたものの、次第に元妃候補二人を相手にうまくコミュニケーションをとっていた力も遺憾なく発揮し凄腕秘書官と名を馳せた。そして将来に向けて箔をつけるために王太子の養女とした。半年後には子爵夫人になる。夫になるイツァクは眼鏡をかけた穏やかそうな人間だ。国王の算段では王太子が王位についた時、国王直属の政務官長にアンナをつける予定だ。


 アンナの侍女を命じられたもう一人の元婚約者候補のミネルヴァだったが、実は彼女からも婚約者候補白紙が陳情されていた。偏った見方をする色ボケ王子と生涯共にするのは嫌だ、他の方法で国に仕えたいと訴えた。一線を越えたコンスタンスの排除と、第二王子の処断と共に善処することが伝えられ、その結果がアンナの教育係兼侍女だ。元々サポートが向いていたこともあり、ミネルヴァも前よりイキイキしている。人材面に大きく鉈を振り入れることができて良かったというのが最終的な大方の意見だ。国は落ち着いた。

 






 さて、今回の事件でシンデレラストーリーを駆け上がったとされるアンナの夫となるイツァクの話をしよう。


 見た目とは裏腹に気性が荒いイツァクは面倒事を嫌う性格から大きな猫を被っている。外交担当部署に所属し部署内で辣腕を振るっているが、表にはでない。根回し策略が好きないわゆる腹黒だ。


 アンナは別荘がたまたま隣同士の顔見知り程度だった。イツァクは線の細さが災いし小さな頃から絡まれることが多かったので、数人に囲まれても余裕で撃退出来るぐらいには喧嘩慣れして強かったが、女の子であるアンナ一家の前では隠していた。ある時、舎弟扱いの伯爵子息を筆頭に数人の子供が大きな泉の畔でアンナに絡んでいた。アンナははっきりした物言いの上に行動的なお転婆娘だったので、きっと言い返して揉めているのだろうと思った。すぐに険悪な雰囲気になり「女の癖に生意気だっ!」という怒鳴り声とともに誰かがアンナに手を上げた。イツァクはなんとなしにするりと割って入った。自分の背にアンナを隠し、上げられた手を捻りながら口元だけ笑みの形をとった。


「女の子に手を上げるなんて男じゃないな。知ってるか? この泉の澄んだ深い青さの理由を。水深がかなり深いんだ。加えてこんこんと水が湧き出ているのに溢れていないだろう? つまりどこかに水が流れているって事だ。ここに()()()()()、沈んだものは絶対見つからないってのも納得だよな」

「ひっ!!」

「すみませんっ! 二度と女の子に手は上げません!!」


 後年、「この時のイツァクは目で物理的に沈ませるぞと訴えていて怖かった」と友人になった伯爵子息に言われる。だが庇われていたアンナにはその顔は見えず、むしろ自分の知らない言葉や泉の深さの知識を使うところが凄いのだと思われた。


「凄い凄いイツァク!! あんなに大きい子を言葉だけで追い払うなんて! お母様が勉強しなさいって言うのはこういうことなのね! 格好いいイツァク!」


 こんな褒め方をされたことがなかったイツァクはなんだかほかほかした気持ちになり、すぐに自分の心に矢が刺さったことに気がついた。その矢の名前は「初恋」と言う。アンナが急激に可愛く見え、もっと褒めて欲しくなり、イツァクは勉強に身を入れた。勿論喧嘩も弱くならないように、きちんと体術剣術として学んだ。アンナに褒めて貰うために。


 説教が息子とのコミュニケーションだったイツァクの両親はこの変わり様に大いに喜び、アンナの家に婚約を申し込んだ。イツァク10才の事だ。


 アンナに暴力的な所を隠す為にすっかり腹黒根回し派に育ったイツァクはちゃっかり職場もアンナと同じ王城にし、影から見守った。そこに現れたのが第二王子と王子の側近だ。


 ミネルヴァが働くならお付きの者はもっと忙しい。そんなぎすぎすした空気の中、ちょっと文句を言いつつも明るく前向きにハキハキ働くアンナの様子は元気づけられる。足して2で割れば丁度いい婚約者候補達よりアンナの方がいいと男達が思うのも無理はなかった。イツァクは無自覚に惹かれていく第二王子達に早々にピンときた。だからすぐに仕掛けた。


 コンスタンスには「男は狩人なんだ。追いかけられたら逃げたくなる、だから引いてみろ」という内容のアドバイスを匿名で送り、ミネルヴァには「国にはあなたの力が必要だ、感謝の気持ちでいっぱいだ」という励ましの言葉を使用人や部下達からさりげなく伝えさせ、自己肯定感を高めて国の為に働く意識を持たせてやった。そしてコンスタンスの元々のお色気作戦がイツァクのアドバイスで巧く廻り、王子と側近はアンナから離れてコンスタンスにデレデレになってきた。庇えば庇う程、周りからは白い目で見られるというのに。上手くコンスタンスと王子達が出会えるようにスケジュール調整したり、王子の無能ぶりをミネルヴァに良く見えるようにしてみたりと、とにかく王子がアンナから離れるようにしてみた。外交と比べたらイツァクには楽勝だった。そしてその結果が今回の婚約白紙騒動だ。王太子が義理父になるのは予想外だったが、頭角を現したアンナを守る手段はいくつあってもいい。周辺国との商売も順調だから子爵としては資産もかなりあるし問題ない。あとは……。


「義父上より早く、初孫を抱かせてやらないとな」


 王太子は妻帯者だがまだ子供はいない。邪魔者もいなくなり、初夜にむけての準備に邁進するイツァクであった。



お読み頂きありがとうございました。

豆腐メンタルなので、ご感想は優しいもののみお願いします。


年齢限定版作品が現在コミカライズ進行中です。ご興味ありましたら、年齢対象の方はこちらも宜しくお願いします。

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