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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
最後の一年
65/66

休日

よろしくお願いします。

 私は自分の部屋の中でリンクの画面の設計図を確認し、自分の手元に視線を戻す。


 私は今、自分用の新しい服を作っている。針理と霧刃は買い物に出かけていた。


 カタカタという一定のリズムで針が動き始める。少し進めてはマチ針を外し、縫い目がまっすぐか遠目で見る。藍色の布に白い布をミシンで縫い合わせていく。


(うーん…これはちょっと失敗かも。いや、ここからパーカーとか着けてラフな感じに仕上げればいける、かな…?)


 私の外行きの服は体を隠す為に全てが長袖長ズボン、又はロングスカートだった。体が成長したことで手足の歪さは際立ち、人間のものとはどんどんかけ離れていた。なので、最近はオーバーサイズの服を着て、袖の中に手を隠すことが多くなった。


 体の黒いあざも体中に拡がり、両足と右腕はもう真っ黒になっている。


 元々私の体は普通ではないので、真っ当な成長をするとは思ってはいなかった。むしろ足が生えたことを幸運に思うべきだ。最初は融合で取り込んだ動物の足を代用していた。しかし、中等部に上がったあたりで急に足に変化があったのだ。


 右腕と比べても大分歪で、鳥の足と人の足を混ぜた様な形をしていた。


 脚力はあるので戦闘面においては大助かりだ。しかし、人として普通の生活を送ろうとすると厄介な事この上なかった。


 まず合う靴がない。店のカタログを見なくても無いことは明らかだ。むしろある方が怖い。


 これは成長に合わせて逐一透蜜に作ってもらった。あの人は本当に何でも作れるみたいで、今やっている裁縫の仕方も透蜜に教えてもらったのだ。


「服は靴に比べれば全然簡単ですよ。採寸だけは正確にしてくださいね。」


 そう言ってミシンと裁縫道具を一式もらった。


 最初はタオルとか簡単な物で慣れていき、今では服まで作れるようになった。


(はい完成っと。)


 最後に返し縫をして糸切りばさみでミシン糸を切る。今回の服は普通な感じだ。可もなく不可もなく。外行きに着るには地味かもしれないが部屋着としてなら十分だろう。


「ただいま。真白ー?帰ったよー。」


 ちょうど霧刃たちが帰って来たみたいだ。私は今作ったばかりのパーカーに着替えて、鏡の前で身だしなみを整える。白い髪を手櫛でとかして変なところがないか見る。


(可愛いって言ってくれるかな?)


 私は霧刃がなんて言ってくれるかドキドキしながら部屋を出た。


─────────────────────────


 買って来た食材を冷蔵庫に入れて、ソファに腰掛ける。学校も休みだし、今日の分のトレーニングももうやった。


 つまり暇だ。時間もすでに昼を過ぎている。これから外に出ても大したことはできないだろう。


(どうするかなぁ…)


 久しぶりに図鑑でも眺めて時間を潰そうか?それとも最近嵌まっている鉱石細工をやろうか。


 俺は初めて春夏に石の名前を聞いた時から少しずつ興味を持っていった。手元にある鉱石の名前を調べたり、今では小さい倉庫を借りてそこでちまちまと小物を作っていた。人に見せられるようなものではないので真白にも言っていない。最近だとアゲート────瑪瑙を使った鉱石ナイフを作っている。硬度がそこそこなので削るのに苦労するが、研磨をするのもなかなか楽しい。出来上がった薄い刃を光にかざすとアゲート特有の波の模様が映えるのだ。


 倉庫に行くかと考えていると真白の部屋の扉が開く。


 そこには紺色を基調としたラフなパーカーと黒のロングスカートを着た真白が居た。


 真白がスカートの裾を持ち上げてくるっと一回転する。このスカートは以前見たことがあるので、見せたいのはパーカーの方だろう。


「よく似合ってるよ。今回も可愛い服作ったね。」


 俺は素直に真白を褒める。俺は裁縫は向かなかった。真白に何回も教えてもらったのだが、一人でやると何故か縫い目がガタガタになってしまうのだ。なので俺は裁縫は随分前に諦めた。


 裁縫ができる真白は素直にすごいと思うし、服を作るなんてとても俺には真似できない。


 俺が褒めると真白は嬉しそうな顔をして抱き着いてくる。


「おわぁ!」


 真白の勢いに負けてそのままソファに倒れ込む。真白の大量の腕の中に埋もれながら成長した真白の強さを実感する。俺も日々に鍛えているし、成長のギフトのおかげで他の人の何倍も強くなっている。なのに真白に普通に力負けしている。もう俺は真白に勝つことはできないのだろうか。


「真白落ち着いて落ち着いて。腕増えてるよ。」


 苦笑いしながら真白の背中を軽く叩いて起き上がるように促す。真白は腕を裾から仕舞いながら起き上がってニコニコしている。


 平和な日々だ。外で暮らしていた時には想像もつかなかった。


(こんな毎日が続いてくれたらいいのに…)


─────────────────────────


「中佐。こちらが今日の調査報告です。そして、こちらが討伐報告です。」


「ありがとう。確認させてもらうよ。」


 俺は部下からの通信を切って、送られてきた報告書に目を通す。


 調査報告では調査班から観測された獣や異形種、地形の変化などが報告される。強力な獣が出現していないか、地形に大きな変化がないか、調べることは山ほどある。


 討伐報告では防衛部隊と討伐屋が倒したものが全て記載されている。予め確認されていた個体が倒された場合、それを記録する。倒した者に未確認の個体が討伐された場合は討伐した場所や同種族のものが複数いなかったかなどの聞き取りをして、後日その場所で調査を行う。


 とにかくやることは毎日あるのだ。


 だが、最近は出現する獣の数がかなり増加していた。


(霧刃が竜を討伐してからやけに強力な獣の目撃数が増えている。だが、逆に異形種の目撃数は減っている。不自然な程に…)


 この異常は以前から名古屋都市を通して中央都市に報告していた。岐阜都市から調査班の増援ももらっている。いざという時の為に付近の都市との情報の共有を行って調査範囲を拡大してもらっている。


(やれることはやっている…なのに何か見落としているような嫌な感じだ。)


 強力な獣が複数出現することだって何度か経験がある。確かに脅威ではあるが対応できない程ではなかった。


 疑念が晴れない俺は念のために彼らに協力を要請することにした。


(最後の学校生活を楽しんでほしいのに。俺は情けない親だな…)


 俺は高山都市の最高指揮官として霧刃のチームに協力要請を出した。





読んでいただきありがとうございました。

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