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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
都市の暮らし
61/66

失意の帰宅

よろしくお願いします。

 テクノの頭部を土の中に埋めて手を合わせる。


「安らかに眠れよ。」


 テクノの埋葬を終えて一息つく。


 俺は森の中で一人テクノの残骸の横に座り込んでいる。減った魔力も少しずつ回復してきた。


 今は竜と彼の死体の回収待ちだ。お父さんに竜を倒したと通信を入れたら、回収班を向かわせてくれた。どうせ一人では運べなかったので、ありがたく頼らせてもらうことにした。


「おーい霧刃。回収に来たぞ。」


 顔を上げるとそこには海おじさんと部下の佐々木さんがこっちに歩いて来た。


「わお。このサイズを一人で倒すとはねー。さすが守護者って感じ。」


 佐々木さんが竜の死体の周囲をくるくる回っている。その言葉を聞いてあいつのことを思い出す。


「俺一人で倒したんじゃないです。もう一人いたんですよ。」


 海おじさんがそれを聞いて不思議そうな顔をする。


「今日は一人で来たんじゃないのか?」


 俺はさっきテクノの頭を埋葬した石を指さす。


「外で知り合った奴です。もう埋葬しましたけど二人で倒したんですよ。彼が居なかったら倒せなかったです。」


 海おじさんは墓石の方を見て悲しそうな顔をする。


「そうか。それは、残念だったな。」


 墓石を撫でてあいつがもういないことを改めて確認する。


(お前がくれた力。大事に使わせてもらうぞ。)


 最後の攻撃は信じられない程の威力を持っていた。


 このギフトの正体も早く検証しなければいけない。攻撃力が上がるだけなら使いやすいが、もしテクノの死因がこのギフトの反動だとすると気軽には試せない。


 なにせ名前が”軽信傲撃”という全く聞いたことが無いギフトだ。まずは仮想戦闘で試す必要がある。


 俺がテクノから預かったギフトで悩んでいると回収に来た二人が作業を始める。


「それじゃあ始めるね。よっと。」


 佐々木さんが自分のギフトを使ったようで竜の死体がなくなる。海おじさんも回収を確認するために聞いてくる。


「運ぶのはこの竜の死体だけでいいか?」


 俺は海おじさんたちを木の裏側まで案内する。


「こいつも頼みたい。」


 そこには武装と五肢がなくなったテクノの戦闘型が横たわっていた。ボロボロになり過ぎて最早原型が無いに等しい。


 それでも二人はこいつが何なのかをすぐに理解した。


 海おじさんが直接触れて死んでいることを確認する。


「戦闘型…もう死んでるか。」


 俺は胸部装甲をこじ開けて中を見せる。


「魔力融合炉は無傷だと思う。有効に使いたい。」


 二人は何か言いたげな感じだったが、何も聞かずに両方の死体を運んでくれた。


─────────────────────────


「それじゃあ、竜の魔石と魔力融合炉と主砲は家に送っておいてください。他は全部売却でお願いします。」


 俺は倉庫の中に横たわる死体を横目に海おじさんと話す。防衛隊員たちが竜の死体を前にがやがや騒いでいる。


「わかった。回収費と運搬費を差し引いた金額を明日振り込んでおく。多分すごい金額になるから期待しとけ。」


 海おじさんが笑顔で買い取りの見積もりを出してくれる。すごい金額だが、あいつの命が散った価値がこれだと思うと素直に喜べなかった。


「わかった。今度お父さんと一緒に焼き肉行こうね。おごってあげる。」


 冗談めかして笑いかけると海おじさんに頭をわしゃわしゃされる。


「そういうことは大人になってから言え。お前はまだ子供なんだから好きなことにじゃんじゃん使え。お前が稼いだお金なんだからな。」


 なんとなく予想していたがやっぱり断られてしまった。しかし、高山都市にいて数年経つが、これといって大金を使う機会がない。武器は試作品が年に2回くらいもらえるし、生活費はお父さんにもらっている。


 外に出るたびに要らないものは全て売っているのでお金は余りまくっている。正直金銭感覚がおかしくなってしまうので、殆ど銀行に溜めてある。


 チームで何か必要なものがあるときは俺の貯金から出している。とはいっても魔石は家に余っているし、買うものと言えば金属類くらいだ。


 俺は素材の換金の手続きを完了して建物の外に出る。


「疲れたな…」


 確かに戦闘は命がけだった。だが、それ以上に一緒に戦った仲間が死んだことの方がきつかった。


 死んでしまったらそこで終わりだ。最近はギフトを使い慣れてきたせいで、知らず知らずのうちに慢心していた。


 あいつの死を俺は絶対に忘れないだろう。


 一緒に居た時間は短かったが、確かに背中を預けた仲間だったんだ。


 あいつの墓を建てたところにはマーカーを置いて来た。墓参りに行くときに迷わないようにするためだ。


 マップのアプリを出してマーカーがしっかりと機能していることを確認する。


(なんであいつは命がけで俺を助けてくれたんだ…)


 あいつの最後を思い出してしまい、沈んだ気持ちになっていると後ろから声をかけられる。


「おい異形種。こんなところで何してる。ここは防衛部隊の建物だぞ。お前ごときが近づくな。」


 その声色と暴言ばかりの話し方で誰が来たのかを察する。


(なんでこんな時にエンカウントするんだよ…)


 俺はうんざりした顔で振り向く。もう振り向かなくてもわかるのだが、そこには柊がいた。


「何か用か?用が無いなら帰らせてもらうぞ。」


 俺の返事を聞いて柊が怒り始める。


「この俺が話しかけてやっているのになんだその顔は?俺は柊だぞ!」


 柊のその宣言に続いて取り巻きが叫び始める。


「お前何様なんだよ。異形種が!」


「ぶっ殺すぞ!」


「ほんとキモいよね。」


「ね。」


 俺はだんだんイライラしてきて語気が荒くなる。


「だから何の用だ?用が無いなら放っておいてくれ。」


 俺の言葉に更に顔を真っ赤にして罵声を浴びせてくる。


「このぼっちの異形種!死ね!ゴミが!」


 俺はイライラが限界に達して柊を無視して帰り始める。


 すると、なにを思ったのか柊たちが後を追ってきた。俺は振り切ろうと走るが相手は腐っても年上。振り切ることができない。


「着いてくんなストーカー共が!」


 俺は振り返りながら事実をぶつける。


「お前が逃げるからだろ雑魚が!俺が殺してやるから戦え!」


 もう俺はブチ切れて加速と跳躍と結界を全開で使用して突き放す。空中を進めるようになったので最短距離を一気に突き進み、1分足らずで家まで帰って来れた。


 俺はエントランスを通ってエレベーターで自分の部屋の階に上がる。エレベーターが開くと自分の部屋の前まで行く。


 扉を開けるために鍵をとり出し、ロックを解除する。


「あ、来た来た。おかー。ってなんかあったの?」


 俺が扉を開けると同時に横の部屋からセラが出てくる。


「別に何もなかったよ。」


 俺は適当に返事をして部屋にセラをあげる。


「ふーん。そっか。あ、うちカフェオレ飲みたい。」


 セラがリビングのソファに腰かけて飲み物の注文を入れてくる。そんな気分ではないのだが客には違いないので諦めて用意する。


 冷蔵庫からコーヒーと牛乳を取り出してコップに注ぎ込む。


「はいよ。」


 俺は二人分のカフェオレを入れてセラの横に座る。


「ん。ありがと。」


 二人でカフェオレを口に含んで一息つく。仄かな苦みが喉を潤していく。そういえば真白と針理が居ない。どこかに出かけているのだろう。


 俺たちはコップを置いて背もたれに寄りかかる。少しの沈黙を空けてセラが話しかけてくる。


「それで?テクノが死んで、悲しかった?」


「…そうだよ。」


 言いたいことは色々あったが俺は全部飲み込んで返事をする。


「そっか。霧刃は優しいね。」


 セラが足をぱたぱたさせながら笑顔を向けてくる。


「別にこれくらい普通だろ。」


 仲間が死んで悲しまない奴なんていないだろう。こんな感情誰でも持っている普通のものだ。


「はいはいこっちおいで。」


 セラがやれやれといった様子で抱きしめてくる。俺は特に抵抗することもなくされるがままに抱きしめられる。


「これに何の意味があるんだ?」


 俺はセラの腕の中から上を見上げてゼロ距離のセラの目を見る。


「知らないの?抱き合うと気持ちが楽になるんだよ。ほら霧刃もうちを抱きしめて。」


 俺は言われた通りにセラを抱きしめる。なんだか変な気分だ。真白以外に抱きしめられるのは久しぶりだ。


「どう?」


 セラが頭を撫でながら聞いてくる。


「確かに幸せな気分になる。ありがとう。」


 セラの鼓動と体温が伝わってきて、だんだんと眠くなる。


「そのまま寝ていいよ。」


 セラに頭を撫でられて更に眠くなり、瞼が重くなっていく。


「ありがとう…」


 俺はセラの腕の中で意識を手放した。


─────────────────────────


「かわいい…」


 うちの膝の上には眠った霧刃の顔が乗っている。


 明らかに体がぼろぼろになっており、外で激しい戦闘をしてきたのだろう。


「今日もたくさん魔石手に入れたね。ちゃんとスカール使いこなせてたね。蟻もたくさん殺したね。あのテクノは残念だったね。でも竜を倒せてよかったね。テクノもちゃんと埋葬できたね。回収に来てもらえたね。防衛部隊の人にバレなくてよかったね。竜の死体が高値で売れたね。柊を振り切れてよかったね。でも、ちょっと力見られちゃったね。」


 うちはリンクを起動して今日の霧刃の行動記録を見返す。霧刃のリンクに仕掛けておいた観測アプリは正常に動いていた。


 うちは霧刃に興味津々だった。真白も針理も十分うちの興味を引いたが、一番はやっぱり霧刃だった。


 うちのギフトを使えば魂の質を見ることができる。だが、彼の魂はどれだけ見ても見通すことができなかった。まるで何かが見られるのを拒んでいるかのような感じだ。


 今もギフトを使ってみるが昨日よりも見えにくくなっていた。やはり、外で戦闘をする度に彼の魂は見えにくくなっている気がする。


(やっぱり君は面白いね。)


 今日も全て記録した。



読んでいただきありがとうございました。

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