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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
欠けた者達
6/66

死んだ者と活かされる物

チュン!!チュン!!


鳥の声が聞こえる。


目覚まし以外の音で起きるのは初めてだ。


目を開けると岩の天井が視界に入ってくる。


「……………そっあ。」


(俺、外に出たんだった。)


昨日の事を思い出し、右手を使って起き上がる。そして、失敗して倒れ込む。


「ぅぅぅ…」


(体中が痛い。なんだこれは?傷が痛いのはわかるが、腕や足の動きが昨日よりも悪いのはどうゆうことなんだ?)


 何とかして上半身だけでも持ち上げる。もたついたが座ることができた。しかし全身の痛みは減らない。


(だが、昨日は全て真白に任せきりだったんだ。今日は俺も何かしなければ。)


 痛みを我慢し、体に鞭を打ち頑張って立ち上がる。横を見ると真白がまだ寝ていた。


 すごく安心して寝ている。もふもふの羽毛が気持ちよく、このベッドの寝心地はとても良かった。


 しゃがんで真白の体を揺する。すると真白が目を擦って眠そうな顔をしながら起き上がる。


「おあよう」


 挨拶をすると真白はこっちを見てコクリと眠そうに頷く。


 洞窟の入り口からは光が差している。


 入り口の前に置かれたドア越しに周りを見渡す。


「……………」


 なにもいないようだ。


 扉を横に立てかけて足元に注意しながら地面に降り立つ。空気がとても澄んでいる。何種類かの鳥の鳴き声が聞こえてくる。だがその中に別の音が入っていることに気づく。


(これは水の音?)


 耳を澄ましていると真白が起きてきて体をよじ登ってくる。バランスを崩しかけるがギリギリのところで耐える。


「み、ず、、ある?」


 そう聞くと真白は家がある岩肌の方を指さした。


 その方をよく見てみると俺達の家にした洞窟の少し離れた左の方にもう一つ大きい穴があった。


 入口は2m程度の高さがある。奥行も家よりもありそうだ。入口からは少しだが水が前に向かって流れている。


 中を見てみると壁の端を水が流れていた。洞窟の壁は茶色く、丸い形の岩が多いのが特徴的だ。壁に触れてみると濡れているのがわかる。


(壁から水が染みだしているのか?)


 真白を見ると俺の体から降り、脚と手を使い奥の方に進んでいく。それを追いかけると奥に勢いよく水が落ちてきているところと、その水によってできたであろう5段になった直径7mくらいの湖があった。


(真白はこれがあるのも調べてたのか?いつの間に…すごいな。それにこの湖。)


「きえいだ…」


 あまりの美しさにそうつぶやいた。さっき見た小さい水の流れはここから出てきていたのか。


 もう日の光が届かない場所にいるのに周りの岩の形が見える。よく見ると壁から突き出た白く光っている石がいくつも見えた。


(あれのおかげで明るいのか。家にあったら便利かも)


 とはいえ取る方法が無いので今は諦めることにする。


 真白を見てみると5段の湖の一番下で水を飲んでいた。よく見てみると奥の方に穴が続いており、水の大半はそっちに流れている。


 昨日から何も飲んでいなかったので俺も水を飲む。


(美味しい。冷たくて体に染みわたる。)


 そのおいしさにがぶ飲みしていると、急におなかが痛くなる。


(急にお腹が…痛い…)


「といえ!」


 頷く真白を確認すると、すぐに外に出る。


(しまったここにはまだトイレがない!)


 少し離れたところに行こうと家から前に向かってまっすぐ小走りでいくと家の少し先に川があるのがわかった。


(空中から見えたあの川か!助かった。)


川に付くとすぐにパンツを下ろし、昨日からずっと着ているボロボロの病院着が濡れないよう注意して用を足す。


(…)


(ふぅー。おばあちゃん。俺、病室のやつじゃないトイレにひとりで行けるようになったよ。)


 手足が動くようになった喜びを嚙みしめながら、もう会えないであろうおばあちゃんに心の中でそう告げる。


 病室ではベッドが変形して下からトイレが出てきていた。


(あれってすごい便利だったんだな。ていうか、外で聞いた水の音はこっちのも混ざっていたのか。)


 そんなことを考えながら用を足し、川の水でしっかりと汚れを洗い流し、家に戻る。


 その途中でとあるものを見つける。


「こ、こえっえ!?」


 急いで戻ると家の目の前のところで真白は待っていた。


「ましお!人いた!来て!」


 俺は興奮気味に話した。真白はその言葉を聞き、頷くとともに俺の背中に掴まってくる。両腕は肩を掴み、脚はお腹のあたりにしがみついていた。


 (さっきよりもぐらつかないしこっちの方が安定してるかも。)


 そんなことを考えながらさっきの人を見つけた場所に行く。


「あれ!」


 俺は目に入った途端、指をさした。真白が後ろから顔を突き出して凝視している。


 近くでその人を確認してみる。だがその体を見て絶句する。


(なんだこの血まみれの服。この人もしかして。もう…)


「ましろ…」


 後ろで髪が左右に揺れる感覚がある。


「そっあ…」


 もしかしたら都市に戻れるかもしれないという淡い期待は潰えたのだった。


 仕方がないので持ち物だけも使えるものがないか調べる。


 真白は俺から降り、死体を確認している。よく見てみると左肩に都市防衛隊員のマークがあった。そのおかげで服は防衛隊員用の戦闘服だとわかった。


俺は急いで逆側の階級を確認する。


(えっとこれは確か、少佐だっけ…?大きな戦いがあった時の大部隊の一番偉い人だよな。…少佐さん。ごめんなさい。あなたが持っているもの使わせてもらいます。)


 彼が身に着けている戦闘服には外でのあらゆる緊急事態に対応できるように、緊急バッグが腰に付いている。


 ものすごく申し訳なかったが、俺は彼の持っているものを全て家に持っていった。服を脱がすと腕の一部が骨がむき出しになり、肉が腐り始めていた。


 吐きそうになるのを我慢して服をすべて脱がす。明らかに骨が折れている箇所がいくつもあった。


 死んでいるとはいえ人から盗ったものなので俺の中には罪悪感があった。


 なので真白に協力してもらい家の横にお墓を作った。人は死ぬとこうして体を外の土に埋めるのだと前におばあちゃんが教えてくれた。


(ごめんなさい。これで勘弁してください。あなたから盗ったものは全て無駄にしないと絶対に約束します。)


 心の中でそう思い、二人で礼をした。


 俺はこの人の名前すら知らない。この人がなんで死んだのかも俺にはわからない。


 自己満足にすぎないのはわかっているが、少しだけ心が軽くなった気がした。


────────────────────


 家の中に少佐さんの持ち物をすべて運び終わり、家の中で一息ついた。


 真白は昨日ぶら下げておいた肉を見ている。


(朝から嫌なもの見ちゃったな。いや、ダメだダメだ。ここは外なんだ。昨日の真白のように俺も死体に慣れていかないと。昨日、頑張るってちゃんと決意したし。)


 考え込んでいると真白が戻って来たので、少佐さんの持ち物を一つずつ確認していく。


 戦闘服──防衛隊員に都市から支給される服。耐久性が高く、身体能力を上昇させる効果がある。


(確か少尉以上は中央都市で作られた特別製なんだよな。ギフトで更に特殊な強化がされてるんだっけ?)


 だが、俺が使うにしてもサイズが違い過ぎて無理だ。俺の身長は最後に測ったのが113cmだった。


 これはどんなサイズなのか。服のどこを見ても書いていない。靴やパンツなどの他の衣類も今の俺には大き過ぎる。


(取り合えず後で外の川と隣の湖で洗って綺麗にしておくか。いつか役に立つかもしれないし。次だ。)


 刀──刀身が赤い刀。川の側に落ちていたのに全く錆びていない。切れ味は木の枝くらいなら簡単に切れた。だが片手で持つには重すぎて左腕で支えないと振り下ろせない。真白に俺の体を操ってもらえれば力持ちになるので、その状態なら何とか使えそうだ。


 しかし、刀身が赤い刀なんて防衛隊員の使用武器の動画にも載っていなかった。


(赤い刀。赤…ん…?まさか、もしかしてこれって”レガシィ”か!?)


 レガシィ──赤い霧発生後に世界中で見つかった不思議な力を持つ道具。その力の解明は未だできていないものが多い。共通しているのはどこかしらに必ず赤い部分があるということ。都市が厳重に保管しており、一般人には年1回の公開日を除き基本見る事もできないようになっている。


(レガシィを持ってるなんて…あの少佐さん本当にすごい人だったんじゃ…?)


 一つの都市が保有しているレガシィの数は確か4個から7個くらいだった。どの都市が持っていたものかはわからないが、そのうちの一つがここにあるのだ。


 昨日は人生で一番驚いたが、このレガシィを手にしたこともかなりの衝撃だった。


 普通ならただの子供が触れること自体があり得ないのだ。さっきはそんなことを考えず、「重い。これ、めっちゃ使いずらい。」なんてことを考えながら使ってしまっていた。


(うん、置いておこう。これも戦闘服と一緒でいつか使える日が来るだろう。ていうか、見たことないレガシィとか怖くて使えん。)


 レガシィに宿る不思議な力は千差万別だ。公開されているものの中には使用者に負担がかかるものもあったはずだ。


 この刀もどんな能力を持っているのかわからないので使えなかった。もし暴発して自分だけじゃなく真白にも被害が出たら洒落にならない。


 しかも俺には昨日の加速でやらかした前科がある。同じつては踏みたくはなかった。


 既に1度使ってしまっているが、レガシィの力は使っていないので、心の中で勝手にノーカンにしておいた。


(次だ。)


 魔力銃──使用者の魔力を使って魔力弾を撃つことができる防衛隊員に支給される武器の1つ。赤い刀と同じで重くて使えない。銃の生産は各都市で行われている。最も有名なアイテムの1つでもある。


 この魔力というのはギフトを発動するために使う力の事だ。俺の魂喰なら魂を食べる時、加速を使う時に魔力を消費する。


 この銃のように魔力で動かせる道具をアイテムという。アイテムは解析に成功した一部のレガシィを元にして作られた。謂わば量産品のレガシィみたいなものだ。他にもギフトの力によって特殊な力を得たものもこの中に含む。さっきの戦闘服もアイテムだ。



 俺は魔力銃に昔から憧れていた。なので、真白に前置きして外に向けて1発だけ撃ってみた。


 反動で腕が吹っ飛ぶかと思った。


 おまけに「ガァン!!」といううるさい発砲音も出て、真白と一緒にすごい驚いてしまった。


(動画の何倍のうるささだよ。あと威力が強すぎる。これも今は置いておくしかないな。)


 一発の反動であの衝撃なのだ。俺には絶対使えない。無理に使えば体が持たないのは火を見るより明らかだった。


(あんな武器を使っているなんて少佐さん、どれだけ強かったんだ?)


 俺の脳内で銃と刀を持った人が凄まじい速さで敵を倒していく光景を想像する。


 でも、そんな人でも死んでしまうのだ。


 外は本当に危険であふれていることを再認識させられる。


 (これが最後か。)


 緊急バッグ──中にはサバイバル道具一式がある。その他には予備の戦闘用ゴーグル、ナイフがあり、最低限外で生きていけるものが入っている。


 幸い、バッグの中のものはすべて無事だった。


(すごい。本物の戦闘用ゴーグルだ。)


 戦闘用ゴーグルは身に着けると使用者の魔力を使い視界内の生物の情報を得たり、暗視機能を使ったりできる便利なアイテムだ。


 後ろのゴムの部分でサイズの調整が可能だった。


(ちょっと大きいが、これなら今の俺でも何とか使えそうだ。)


 俺はゴーグルのスイッチをオンにする。すると何か大量の文字が目の前に浮かび上がる。


(いくらなんでも漢字が難し過ぎる。なんて書いてあるのかほとんどわからん。)


 「────なら下の(はい)をおしてください。」と最後に書いてあったので、取り敢えず人差し指でゴーグルに触れる。


 すると表示されていた文字が変化する。そこには「承認しました。魔力量が規定値を下回っている為、魔力の残量に気を付けて戦闘を行ってください。」と表示されていた。


(だから漢字がわかんないってば…これもしかして使えないの?)


 壊れているのではないかと不安になったが少しすると文字が消え、様々なメーターや数字が表示される。


 真白も横で見て驚いた表情をしている。


「すごい。」


 どれが何を表しているのかほとんど分かんない。前に動画で見た説明よりもいろんな数字がある。


(やっぱり最初の文が読めなかったがダメだったか。)


 完全にやらかしたが残り魔力の%数値と時計はわかるし、暗視などは自動でつくはずなので完全に使えないわけではない。なのでおでこのあたりに着けておく。目から外すと自動で数字などが消える。戻すと再び表示された。どうやら目が近くにあるかどうかで起動しているらしい。


(これは使えそうだ!)


「つけてて、ぃい?」


 真白に聞くとコクリと頷く。俺が持っていてもいいらしい。


 バッグの残りのを確認する。


 折りたたまれた大きな布。ある程度の長さがある紐。金属製の杭のようなもの。ナイフ。金属製のハンマー。赤い宝石。


(ん?なんだこれ?)


 最後にバッグの底にあった赤い宝石を取り出す。大きさは俺の手にすっぽり収まるくらい小さい。だがとても透明でヒビもなく綺麗だった。


 すると真白が赤い宝石に反応を見せる。服を引っ張りもっと見たそうにしている。


「あげる。」


 俺はさっきゴーグルを譲ってもらったお礼に赤い石を真白に手渡す。すると真白は嬉しそうにそれを受け取った後、その石を食べた。


(!?)


 するとその直後に真白のお腹が赤く光る。


(何今の。)


 少しすると光は収まり、そこには嬉しそうな顔をする真白がいた。


 相変わらず真白がやることは予想がつかない。だが本人に異常はなさそうなので大丈夫だろう。

 多分。


 もう取り返しがつかないので諦めることにする。


 ナイフは持ち手のスイッチを押すと刃が赤く光った。


 手を近づけてみると熱を感じた。


 これはヒートナイフというアイテムだ。魔力を使って、刃を高温にして火をつけることができる。


 これで昨日の肉もなんとか食べれそうだ。


 俺はどのくらい時間がたつと肉が食べれないくらい腐るのか知らなかったので、せっかくの食料を早く食べておきたかった。


 残りのものはすべて普通の道具だった。


 折りたたまれた布は袋から出すと一瞬で大きくなった。どうやらかなり空気を抜いて袋に入っていたらしい。


 二人でどんな布か確認しているとジッパーが付いており、四角い立体の形をしているのが分かった。中はある程度の広さもある。


 中に入ってみると小さい布が一つ入っていた。それにもジッパーがあったので開けてみると白いもこもこしたものがはいっていた。どうやら簡単な布団のようだが、もこもこの量が少なくふかふかとは言えなかった。でも使えそうではあるので、小さい布を取り出して大きい布を少したたむ。


 この二つはとりあえず布団に使うことに決めた。


 残りは何の変哲もない丈夫な紐と杭とハンマーだった。何かの使い道はありそうなので大切に保管しておくことに決めた。


 全てのものを調べ終わる頃には、既に太陽は天高く上っていた。


 



 

読んでいただきありがとうございました。

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