変な出会い
よろしくお願いします。
俺はヴァンパイアを振り回しながら森の中を縦横無尽に動き回る。今は一人だけで外に出て、戦闘をしている。
次々にやってくる20cmくらいの蟻の大群を素早くさばいていく。
「さすがに多い…」
俺は跳躍を使って枝の上まで飛び上がり、武器を持ち替える。使い慣れた手つきでスカールを構えて、木の幹を登ってくる蟻を撃ち抜く。
スカールの優れている点はその連射力だ。硬い相手には弱いが、今回のような雑魚を大量に相手するときは凄まじい活躍を見せる。
魔石をセットする必要はあるものの、高い魔力効率を誇る。おまけに使う魔石は小さいもので大丈夫な点もとても嬉しい。
全ての蟻を倒し切って死骸の山を見て一息つく。
最近俺は自分の戦闘力が伸び悩んでいた。真白との戦闘でも負けが多く、針理との撃ち合いも全然勝てず、自分の弱さが嫌になってきていた。
新しいギフトを獲得できたらいいなという思い半分、八つ当たりしたい思い半分で、森の中を散策ていた。
俺は倒した蟻の腹部を開いて小さい魔石を回収していく。腰に付けた袋に直径3cmほどの魔石を回収していく。
死骸の山から魔石をちまちまと取り出していく。今回は魂喰は使っていないので魔石は普通に回収できる。
俺が魔石を集めていると、後ろから何かが動く音がする。俺は振り向いて、解体に使っていたエスカをそのまま構える。
そこには傷だらけになったテクノの戦闘型がいた。
(戦闘型!?なんでこんなところに…?)
いくつか不審な点はあるが俺はエスカを構えたまま少しずつ距離を取る。この距離なら木を遮蔽物にしながら逃げ切ることができるかもしれない。
俺が警戒をしているとそのテクノの左腕の部分が火花を散らしながら地面に落下する。
そいつは落ちた左腕を見てギイギイと音を立てながらその場に座り込む。
やはり様子がおかしい。こんなに傷ついているのに、近くで激しい戦闘音はしなかった。それにこちらを認識してる筈なのに一向に攻撃が飛んでこない。背中の銃は右側の2本はまだ使えそうだが、狙いを付けてくる気配もない。傷を確認してみるとどうやら最近のものではなさそうだ。
俺は左手でさっき回収した魔石をぶつけて様子を見る。
装甲に当たり、カンッという音を立てて魔石がテクノの前に転がる。テクノはその魔石を少しの間注視した後、首を動かしてこちらを見てくる。
「…こんなところで何してるんだ?」
俺はテクノに話しかけてみる。こいつの状態からも戦意は無さそうだ。おそらくこいつは魔力融合炉が損傷しているのだ。
テクノの全ての体に搭載されている魔力融合炉。中心に魔石があり、そこから発生する魔力を何倍にも増幅させる装置。人類では製造不可能な代物だ。
そして、テクノには小さい傷なら自分で直せる修復機能が付いている。その修復機能も魔力融合炉までは直すことはできないため、こんなに弱っているのだろう。
少し間を開けてからテクノが目の前に落ちている魔石を手に取り、自分の胸部装甲を開放する。
「おお。すげぇ。」
俺は思わず装甲の中心にある魔力融合炉に目を奪われる。核の魔石を中心に青い光を放っている。だが、肝心の魔石にはヒビが入っており、そこから魔力が漏れ出ている。よくわからないがこの状態では炉は正常には動かないのだろう。
俺はテクノが何をするのか観察する。この死にかけの状態でこいつは一体何をしようとするのか。なんとなく、興味が湧いたのだ。
(そうだ。ただの興味本位だ。別に看取ってやろうって訳じゃない。)
俺は自分の中でそう決めつけて観察を続ける。
テクノは自分の手の中にある魔石を見て、次に自分の炉を見る。そして、次にこっちを見てくる。
とどめを刺してほしいのかと思ったが、どうやら違うようだ。テクノは握っている魔石をこちらに差し出してくる。
(返すってことか?)
俺はエスカを抜刀したままテクノに近づく。俺が至近距離に来てもこいつは攻撃してこなかった。俺は差し出された魔石を手に取る。すると、テクノは自分の胸を指さす。
「何が言いたいんだ?」
テクノは自分の胸を指さし何かを投げる振りをする。そして、俺の手の中の魔石を指さして引き寄せるようなジェスチャーをする。
真白との生活によって得た経験のおかげで俺はこいつの言いたいことを理解した。
「交換すればいいのか?」
俺がそう聞くとテクノはコクリと頷いた。
俺はどうするか迷う。こいつは異形種、人類の敵だ。それにこいつを助ける義理も無い。こいつを助けたところで俺に何のメリットもない。
俺が無言で考え込んでいると、テクノはギシつく体を起こす。腕を背中側に回して主砲の一つをパージする。そしてそれをこちらに差し出してくる。
「取引ってことか?」
俺がそう聞くとテクノはゆっくり頷く。つまりこいつは自分の武装と引き換えに俺に炉の修理を頼んでいるのだ。
別に受けてやる必要はない。こいつの炉を攻撃すればすぐに決着はつく。この主砲も二つ手に入る。こいつを殺した方がメリットは大きい。
俺が無言でいると、テクノは主砲を地面に置いて今度はもう一つの主砲に手を伸ばす。
「…もういい。」
俺はエスカをしまって、炉の中にある魔石を引き抜く。ひび割れた中くらいの魔石の代わりに、綺麗な小型の魔石を入れる。
魔石を交換すると、魔力融合炉は光を増して眩く輝く。装甲を閉じて、テクノが自己修復を開始する。
俺はテクノが差し出した主砲を肩に担ぐ。
「取引成立だ。こいつ一本で、その魔石を売ってやる。その代わり…」
俺は解体途中の蟻の死骸の山を指さす。
「お前も手伝え。」
テクノは死骸の山を見た後、こっちを見て頷いた。
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「やっと終った…」
両腕を治したテクノと一緒に解体をして1時間が経った。蟻の腹をさばいている最中は蟻の体液が臭くて大変だった。
俺は最後の一つを袋にしまう。
「それじゃあ、俺は行くから。」
横にいるテクノにそう言って立ち上がる。ちょっと離れた場所に置いといた主砲を取りに行こうとすると、後ろから服を引っ張られる。
後ろを見ると、両手いっぱいに小さい魔石を載せたテクノがいた。持っているそれをこっちに差し出してくる。
「ああ、ありがとうな。」
俺はそれを受け取って袋にしまう。わざわざ渡してくるとは律儀な奴だ。
「変わった奴。」
俺がテクノを見て笑っていると、いきなりタックルをされて吹き飛ばされる。
「急に攻撃って何すん…」
俺が悪態を付こうとして前を見ると目の前にはテクノの背中が見えた。その上からは巨大な5本指と鋭い爪を生やした手がテクノを踏みつぶそうとしていた。
その手の先を辿っていき、敵の姿を確認する。茶色い体は全身硬い鱗に覆われている。長いしっぽと大きな翼。大きな口には何本もの牙が生えている。4本の強靭な足とその特徴的な赤い瞳。
俺たちの目前には龍がいた。
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