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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
都市の暮らし
58/66

他愛のない話

よろしくお願いします。

「ねえ、霧刃。霧刃は私たちのこと、どう思ってる?」


 俺がエスカとカイナを研いでいると針理がそんなことを聞いてくる。俺は手を止めて針理と真白とセラに向き直る。セラは暇だからと遊びに来ていた。


「針理ー急にどしたの?」


 リンクでゲームをしながら興味なさそうな感じでセラが聞く。勉強もしろと言いたかったがセラはすごく頭がいい。具体的には学年で1位をとれるくらいには賢い。なので俺がとやかく言うことはできなかった。


「いいから聞かせて。」


「そんなこと言われてもな…」


 俺はなんて答えようか迷っていると呼び鈴が鳴らされる。これ幸いと俺は手を拭いて立ち上がる。


「はーい。」


 玄関の方に歩いて行き、玄関前のモニターを確認する。扉の前には春夏が立っていた。


「今日は偶々空いたから遊びに来たぞ。」


 扉を開けて中に迎え入れる。


「そうか。大したもてなしはできないけどゆっくりしていってくれ。」


 夏が靴を脱ぐのを待つ。何かお菓子でも出そうかと考えていると靴を脱いだ夏が急に抱き着いてくる。


「な、何を────」


 夏は俺の口元を右手で抑えて左手で静かにするように合図する。


「しーっ。十秒でいいからじっとしてて。」


 そう小声で言うと正面からぎゅーっと抱きしめてくる。心臓がドクドクと脈打っているのがわかる。普段は意識しないようにしている胸も、ここまで押し付けられると嫌でも意識してしまう。俺は冷静を装って小声で質問する。


「お前春だろ。」


 抱き着いたまま耳元で囁いてくる。


「ピンポーン。気付いてくれるって信じてたよ。安心して。もう交代するから。」


 春はそう言うと俺から離れて夏と交代する。目つきが変わったのがわかる。


「悪かったな。あんなこと頼んで。」


「本当だよ。俺も男なんだぞ。二人とももう少し抑えるようにしてくれ。」


 俺が少し強めに注意するが夏は悪びれた様子はなかった。


「嫌。」


 俺はうんざりした顔をしてリビングまで歩いていく。


「そうっすか。早くリビング行くぞ。」


 リビングのドアを開けて夏に適当に座るように言う。春夏が二重人格であることは俺と春夏だけの秘密らしい。まだ、真白の前でも核心的なことは話していない。


「春夏っちも来たかー。先に始めてるよー。」


 セラはそう言いながら皿に出したお菓子をつまんでいる。


「私が出した。お茶だけお願い。」


 キッチンの方から針理の声が聞こえてくる。先にやってくれたみたいだ。


「春夏も適当にかけてくれ。針理もありがとう。あとは俺がやるよ。」


 俺もキッチンに行って針理からお盆を受け取る。5人分のコップを出して、お茶を注いでお盆に載せる。リビングにあるテーブルにお盆を置いてお茶を配る。


 俺が席に着いたタイミングで針理から再度質問が飛んでくる。


「で、私たちのこと、どう思ってるの?」


 見逃してはくれなかった。どう答えればいいのか俺自身もよくわかっていない。


「そうだなぁ…」


 俺が答えを考えていると何故か全員の視線がこっちに集まっていることに気付く。


「そんなにまじまじと聞かれると余計言いにくいんだけど。」


 なんだか恥ずかしくなってしまい、俺は視線を下げる。


 隣にいるセラがその反応を見て余計にからかってくる。


「いやーやっぱ気になるじゃん。だって傍から見れば見ハーレムだぞ?世の男たちの憧れだぞ?気にならない方がおかしいって。ほらほら言っちゃえよー。全員愛してるーって。」


 俺はこれ以上引き伸ばすと更に言い出しづらくなるのを察した。


 恥ずかしいのを我慢して何とか言葉を紡ぎ出す。


「ハーレムだなんて思ったことないから!みんな大切な仲間、だと思ってる。真白と針理は俺の命の恩人だ。そんでもってセラと春夏は俺の無茶な誘いに乗ってくれた。みんな大事な仲間だと思ってる。」


「なぜそこで真白を撫でる。」


 セラがニヤニヤしながら突っ込みを入れてくる。何のことかと俺は下を見ると膝の上には隣に居たはずの真白が座っていた。完全に無意識にやっていた。


「…俺の話は以上だ。」


「スルーするのかよ。」


 俺はいてもたってもいられずに立ち上がる。


「ああもう終わり終わり!俺は寝る!」


 真白を抱っこしたまま俺は自分の部屋に引きこもる。


 みんなの視線から解放されたことで恥ずかしさが急に薄れていく。俺は真白をベッドに寝かせてその横に倒れ込む。


「はー疲れたぁ…もう二度とあんなこと言うか…」


 俺は目を閉じてそのまま寝ようとする。


 すると何本もの腕に体を持ち上げられて何かに抱きしめられる。


 俺は目を開けると大型化した真白が居た。腕は左右で六本になっている。元々の真白の腕と熊の腕、あとなんかよくわからない虫みたいな腕。背丈は3m程になり、下半身はムカデみたいな体になっている。だが、ムカデの足の部分は蚕蛾の触角みたいにふわふわしたものになっている。


 6本の腕と1.5m程度のムカデの体でグルグル巻きにされる。最後に背中から生えた4枚の白と黒の翼で包まれる。


 真白の頭部からは蚕蛾の触角が生えて、首から下の部分はもふもふになっている。


「真白…かっこいいし可愛いぞ。」


 真白はニコッと笑って俺の頭を撫でてくる。やっぱり真白はこの距離感が安心する。俺も真白に抱き着いてそのまま眠りについた。


─────────────────────────


 うちらは扉を僅かに開けて真白と霧刃よ様子を見守る。


「…あれが真白の本当の姿?」


「ヤバッ超モフりたいんですけど。」


「まあ、あれも真白の、一側面だね。」


 うちは自分のギフトの”構造把握”を使って真白を見てみる。真白の体がどうなってるのかを読み取ろうとするが情報が多すぎてすぐには解析できない。とりあえずいろんな生物が真白の中に取り込まれていることはわかった。


(あれが守護者の力…こんな力を間近で見れるとか超ラッキーでしょ!)


 あの時霧刃とぶつかってよかった。霧刃の提案を呑んでよかった。


 うちらはそっと扉を閉める。リビングのソファに座ると二人に話を振る。


「ねー恋バナしない?」


 霧刃が居ない時にいつかはこの話をしてみたいと思っていたのだ。だが、二人は乗り気ではない様子だった。


「私は、別に…」


「俺もその話はいいかな…」


 二人は目線をさっきまで覗いていた霧刃の部屋に泳がせている。


「ふーん。二人は霧刃が好きってことねー。青春だねー。」


 図星だったようで二人は顔を背ける。真白に送る視線からなんとなくわかっていた。これはこの先も退屈しなさそうだ。


─────────────────────────


 私の腕の中で霧刃が眠っている。それだけですごく嬉しくなる。


 この形態は前々からずっと試行錯誤して作っていたものだ。霧刃ならきっと受け入れてくれると信じてこの姿になったが、正解だった。こんな姿でも霧刃は可愛いと褒めてくれた。異形種っぽさが全開になるので、もちろん霧刃以外の前では絶対にやらない。


(霧刃の一番は絶対に渡さない。)


 私もいつか人間の体を手に入れて霧刃と結婚するのだ。針理には妨害を受けない約束を取り付けたが、他の二人にもいつか釘を刺さなければいけないだろう。まあ、例え妨害されたとしてもこの場所を譲るつもりは毛頭ない。


 ここでの生活も長くなり、抑えていた融合も大分全力を出せるようになってきた。霧刃は「二人に置いてかれてる気がする。」と拗ねていた。そうは言っても霧刃の力を抑える為の落としどころは、結界一つに絞る以外になかったのだから仕方がない。


 拗ねてる霧刃も可愛かった。その時は頭を撫でようとしたら、悔しかったのか私たちを無視して訓練を再開していた。


 霧刃もプライドがあるのだろう。私を守るために努力していると知っているので嬉しいことこの上ない。


 そして、普段からよく一緒に居るせいで霧刃の本音を聞くこともある。


「俺なんかが本当にリーダーでいいのかな…」


 そう言っていた時のことを思い出す。霧刃も霧刃なりにプレッシャーを感じているのだろう。力があっても心はまだ私と同じ子供なのだ。


 だから、私が霧刃を守るのだ。彼に余計な心配をさせない為に。逆に彼に頼ってもらえるくらいに。


 もっともっと私は強くなる。

読んでいただきありがとうございました。


もう真白に人間の体いる?いらなくない?そのまま結婚すればいいじゃん。

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