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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
都市の暮らし
56/66

希望と絶望の落差

よろしくお願いします。

 ベッドの上で寝ている春夏が目を覚ます。ぼーっとした様子で辺りを見回して俺の顔で止まる。


「気が付いたか?安心しろここには俺たち二人しかいない。」


 俺はリンクの画面をしまって。立ち上がる。


「…ああ。ここは病院か?」


 春夏は薄目を開けながら聞いてくる。


「そうだ。それと春夏が俺の部屋で倒れてた理由はもうわかってる。柊はじめだな?」


 春夏が目を閉じてゆっくりと頷く。


「お前の鞄にこんな手紙が入っていた。『春夏、君を疑ってしまってごめん!春夏が最近俺との時間を減らしているのが気になってしまった!だけど今日の行為で確信したよ!君は僕の物だって!明日もまたしようね!』ここで終わりだ。」


 春夏は窓側に寝返りをうって、ため息をつく。


「なあ、俺は体しか価値が無い存在なのか?」


 俺は自分の考えを素直に話す。


「俺にとって春夏は二人とも大事な存在だ。一緒にいるとすごい楽しいからな。」


 春夏が起き上がって悲しそうな笑顔を見せる。


「気付いちまったか…」


 俺はベッドに腰かけて窓の景色を見ながら話し始める。


「違和感は最初からあった。でも、確信に変わったのはつい最近だ。俺と昼に会ってるのは今のお前だな。」


 春夏は諦めたように話し出す。


「そうだ。霧刃と一緒にいる時に出てくるのは俺、”夏”だ。他の相手をしてるのは”春”だ。元々の人格は春の方だ。あいつの精神が壊れて俺が生まれた。全く、よりにもよって最初に見つかるのがお前かよ。責任取ってくれよ?」


 口ではそう言ってはいるが目が死んでいる。期待していないのだろう。


(いざ目の当たりにするとこれはきついな。)


「一つ確認しておく。春に代わってくれ。」


「わかった。」


 春夏、いや夏が目を閉じて少し待つと優しい目つきになって目を開く。


「私に何か用?」


 雰囲気がガラリと変わり、所作や話し方がより女性らしくなった。


「お前はこの先に未来があると思うか?」


「ない。私が外に出られるようになってもおそらく私は自由にはなれない。本当にもう終わらせたいくらい。」


 俺は春の目を間近で見る。夏とは違う目つきだが、絶望していることに変わりなかった。


「俺にはお前たちを自由にすることはできない。しかし、現状から救うことはできる。」


 春は驚いた顔をしている。


「え…?」


 俺は話を続ける。


「現状を打破したいなら俺の手を取れ。ただし、その先でお前は死ぬかもしれない。十分に考えてから決めてくれ。」


 俺は右手を前に出す。春は困惑しながらその手を見ている。


「死ぬかもしれないとはどうゆうこと?」


 春の質問に丁寧に答えていく。


「俺が外に出れることはもう知っていると思う。俺の立場は少し特殊なんだ。俺についてくればこの都市からおさらばできる。でも、危険な戦闘に巻き込む可能性がある。そして、その返答に関係なく俺はあと数年でここを去ることになる。」


 最後の言葉を聞いて春が震えだす。


「いなく…なるの…?」


「ああ。すでに決まってることなんだ。学校卒業と共に俺は高山都市を出ていく。」


 俺がそう言うと春が俺の体に抱き着いてくる。


「やだやだやだやだ!ついて行く!この地獄みたいな世界で霧刃だけが私を見てくれる。もう誰かの慰み物になるのは嫌なの。このまま死んだように生きるくらいなら、私はちゃんと生きて死にたい!」


 力強い返事なのに涙が零れ落ちていく。自分の死を目指しながら生きるとは辛すぎる。


「わかった。ちゃんと生きてちゃんと死のう。俺より先に死んだら魂はもらうけどな。」


 春が涙が流れる顔を上げる。俺はハンカチを取り出して涙を拭く。


「あなたは死神なの?」


 言いえて妙だ。死体から魂を奪っていく様はまさに死神だろう。


「それに近いかな。神ではないけどね。」


「それはよかった。死んだ後はあいつらの物にはならないんだ。」


 魂を喰われることすら肯定的に捉えるとは最早末期だ。冗談だったのだが言うタイミングを逃してしまった。


 俺は泣き止むのを待って、ベッドから立ち上がって春のリンクにいくらかのお金を渡す。


「このお金は?」


「病院代。俺が連れてきちゃったからな。親に何か言われたらそれで払ってくれ。」


 上着を羽織って帰る準備をする。春はもらった金額を見て困惑していた。


「だとしてもこんな大金…」


 俺の持っているお金から出したのでそれ程多くはない。


「いいんだ。それはそうとしてこれからは忙しくなるぞ。戦闘訓練の手は抜かんから覚悟しておいてくれ。」


 病室の扉を閉めて廊下に出る。そのまま外に出て、腕輪を使って綾女に連絡を取る。


「もしもし綾女?霧刃だけど。」


『こんな時間にどうしたの?』


 俺は歩きながら話をする。


「前に言ってたチームの件やっと見つけたよ。」


『そう、よかったわね。武器の整備士がこんなに早く見つかるとは思ってもみなかったわ。』


「それなんだけど。もう一人加えたい人が居るんだ。」


『なんですって?どんな人なの?』


「空間移動のギフトを持ってるんだ。メンバーに加えたら絶対戦力になる。」


『…決意は固そうね。まあ、いいわ。あなたのチームだから責任はあなたが持つのよ。』


「わかってる。全員俺が引っ張っていく。全員の人生を背負う覚悟はできてる。」


『わかったわ。あなたが高山都市を出ていく時に見せてもらうことにするわ。それじゃあね。』


「うん。またね。」


 俺は腕を降ろして一息つく。


「何をするのも俺の責任。もう後戻りはできない。」


 いや、もしかしたら最初からこの選択肢しかなかったのかもしれない。春夏を屋上で見つけたあの日にもう救いたいと願ってしまっていたのだから。


 人を救いたいなんて傲慢な話だ。自分はまだ11歳の子供で、あまりにも知らないことが多い。しかし、俺には他の人にはない肩書がある。救える人がいるなら救いたい。せめてこの手が届く範囲の人だけでも。かつて俺が真白に救ってもらったように今度は俺が救うんだ。


 俺は決意を固めて自分の部屋に帰った。


─────────────────────────


「これで足りますか?」


 私は自分のリンクから電子マネーのアプリを出して、病院の受付の人に確認してもらう。


「はい確認いたしました。お支払いには十分です。お大事にしてください。」


 私は受付の人に小さく礼をして病院を後にする。外に出るともう夜の8時になっていた。今日はすでに終末世界のゲートを二回開いてしまっている。あと一回では入ることはできても出ることができない。


 私はバスに乗って帰路に着く。バスに乗っている間も私のことなんかお構いなしに周りの男たちが体をまさぐってくる。だが、今日は不思議と何も感じなかった。


 自分の最寄りのバス停が近づいて来たので降りる為に扉の近くまで移動しようとする。周りの男たちは胸を鷲掴みしたりスカートをまくり上げて股を触ったりしてくる。私の体に触れてくる全ての手を強引に引きはがして扉の前まで来る。


 リンクでの支払いを終えてバスを降りる。少し歩いて自分の家まで帰ってくる。


「ただいま。」


 思っていたより大きい声が出た。廊下を通ってリビングに行くと両親が喧嘩していた。


 母親がこちらを向いて怒鳴ってくる。


「春夏!こんな時間までどこに行ってたの!用が無いならさっさと帰って来なさい!」


「ごめんなさい。」


 母親からの八つ当たり。いつもなら頭痛が酷くなるのだが、今日は全然痛くない。まるで宙を浮いているような浮遊感がある。不思議だ。ここは終末世界ではないのになんでこんな感覚になるのだろうか。


 私は自分の部屋に入ってベッドに倒れ込む。


「私、どうしちゃったんだろ…」


 柊に犯されたことも、バスで集団痴漢にあったことも、母親のと父親の八つ当たりも、全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部どうでもよくなってきた。


 霧刃について行けば私はここから解放される。


「ははっ!あはははっ!」


 希望が見えた。


 その筈なのに。


 心は冷え切っていた。


「霧刃…寂しいよ…どこにいるの?」


─────────────────────────


「────ということで、春夏とセラを仲間に入れることに決めました。」


 俺がそう言うと針理と真白は不満そうな顔をする。


「セラはいい。作る武器は面白いし、戦闘もいける。でも、春夏は正直、弱いと思う。」


「その通りだ。でも、もう本人に来いって言っちゃった。」


 俺の言葉を聞いて針理はため息をついて、真白ジト目を向けてくる。


「ごめんなさい。」


 俺はソファに座ってる二人に頭を下げる。


「でも、もう助けるって決めたんだ。だから、頼む!」


 俺は必死に二人に頼み込む。


「他の誰でもない、俺が助けなきゃいけないんだ。彼女を取り巻く問題は家族、都市の権力、精神的なものと多岐にわたる。そこから救い出せるのは俺しかいないんだ。」


 俺は頭を下げ続ける。


「いいよ。私たちは、霧刃について行くから。」


 顔を上げると二人は困ったような顔をしていたが、笑ってくれていた。


「恩に着る!このお返しは絶対するから!」


 その言葉を聞いて二人の目つきが急に変わる。


「今、なんでもって?」


「…俺にできる事なら。」


「楽しみにしとく。」


 真白も笑顔で頷いているが、何か怖い感じがした。


 言葉を間違えたかもしれないが、二人にはこれからも迷惑をかけることになるだろう。なら二人の望みもできる限り聞くべきだ。


 ちょっと怖いが俺は覚悟しておくことにした。

読んでいただきありがとうございました。


なんか変な方向に進んでますね。春夏大丈夫ですかね?


(ちなみにこの話はプロットとか特に考えずに行き当たりばったりで書いているのでどんな結末になるのか自分も知ら)ないです。


ハッピーエンドになるよう頑張るからオニーサン許して

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