限界
よろしくお願いします。
サギル10体を前に刀と銃で立ち向かう二人の少女。その攻撃に対して俺は檄を飛ばす。
「セラ今の斬撃甘い!春夏はもっと頭をよく狙って!」
「はいはーい。」
セラはポニーテールにした金髪をなびかせながら軽い返事をする。
春夏はアサルトライフルを構えながら余裕がなさそうに短く返事する。
「わかった!」
春夏が最後の敵の頭を打ち抜き、訓練を終了する。
あの会議から5年が経った。俺は初等部の6年生になり、針理は高等部の3年生になった。
俺と真白は身長が伸びて近距離武器のリーチが伸びたのが嬉しかった。体も大きくなり、前のように加速と跳躍の負荷を受けても十分に動けるようになった。だが、特殊個体と遭遇することは無く、新しいギフトは手に入らなかった。
「今日はこの辺にしておこう。」
俺がそう言うとセラが笑顔になる。
「やったー。帰りにみんなでご飯食べて帰ろ。」
セラが仮想戦闘を終了しながらヘアゴムを外す。俺たちも仮想戦闘を終了して片付けを始める。
春夏がこちらに寄ってきてアサルトライフルのスカールを渡してくる。
「今日もお願い。」
春夏の家にはスカールをはじめとした武器を安全に管理することができない。自分の部屋に置いていても親が高価そうなものは勝手に売ってしまうらしい。昔にあげたサファイアという宝石はペンダントにして肌身離さず持っている。そのおかげでなんとか親には隠し通しているらしい。
「わかった。」
春夏のメイン武器になりつつあるスカールを受け取って、ケースにしまう。
二人が観戦ルームに移動して着替える。セラと春夏の服はセラが作った戦闘服っぽいものだ。セラが自分のギフトを使って作ったもので、戦闘服の身体強化を微弱ながら再現している。
二人が観戦ルームから着替えを終えて出てくる。
「お待たせー。じゃあ今日は何食べる?うちはラーメンの気分なんだけど、みんなは?」
セラがリンクを操作して店の写真を出しながら聞いてくる。それに対して春夏が申し訳なさそうな返事をする。
「ごめんね。私今日は行けないの。家の用事があって…」
セラがそれを聞いて残念そうな顔をする。
「そっか。ならしょうがないね。次は絶対行こうね。約束!」
セラの言葉を聞いて春夏は嬉しそうな顔をする。
「わかった。またね。」
俺は春夏に労いの言葉をかける。
「今日はよく狙えてた。このまま頑張ろう。お疲れ様。」
針理も春夏に別れの挨拶をする。
「お疲れ様。」
春夏が手を振って訓練室から出ていく。俺もみんなの武器を担いで撤収の準備を完了する。
「それじゃあ、一回家に荷物置いてきたらラーメン食べに行くか。」
セラが嬉しそうに針理に抱き着いて外に出ていく。
「やったー。針理は今日は何にする?うちは醬油の気分で────」
セラと針理もすっかり打ち解けていた。針理の一番の友達と言っても過言ではないだろう。
セラがいると場の空気が明るくなる。その性格のおかげかセラは誰とでもすぐに仲良くなる。あれもある種の才能なのだろう。
「俺たちも行くか。」
背中にいる真白にそう言って、俺たちは外に出た。
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私は柊と合流するために急いでいつものゲームセンターに行く。最近は訓練の時間を確保するためにこうした放課後の遊びを断っていた。
ゲームセンターに入ってすぐのシューティングゲームの場所に柊はいた。
「ごめんねはじめくん。最近用事が多くて。でも今日はもう一緒に居れるから。」
柊は電子モニターから目線を外すことなく適当な返事が返ってくる。
「そうか。」
周りを見るがいつもの取り巻きはいなかった。私はそれを不審に思って柊に聞いてみる。
「そういえば、今日はみんないないんだね。なにかあったのかな?」
柊はゲームの席から立ち上がって急に私の腕も掴んで外に出る。
「こっちに来い。」
「え?い、痛いよはじめくん。」
私は抵抗しようとしたが柊の力には敵わなかった。霧刃のおかげで強くなってはいるが、それでも男女の体格差を覆すほどではなかった。
私は知らない建物に連れ込まれる。柊はリンクを操作してなにかすると、扉が開いて奥の部屋に通される。
部屋にはベッドにソファ、モニターなど、家具が一通り揃っている。私はベッドに押し倒されて腕を抑え込まれる。
「はじめくんどうしたの?なんか怖いよ?」
私は柊を落ち着かせるためにゆっくり問いかける。
「お前は俺の物だ。」
いつかの光景がフラッシュバックする。
「うん。私ははじめくんのものだよ。将来は一緒になるんだよ?」
この状況は不味い。
「なら今から脱げ。可愛がってやる。」
あの時と同じ。
「…わかった。」
私はまた心を殺した。
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私は体を柊に貪られた後にベッドで放心していた。奴の精液と唾液と汗によって汚された体はベタベタだ。
(もう少し…もう少しで私は外に…)
私は最後の力を振り絞って鞄から薬を取り出す。柊の唾液でベタベタになった口にそれを運び、何とか飲み込む。
頭痛が激しくなり、私の意識はそこで途切れた。
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意識が切り替わって俺は目を覚ます。俺は裸のままベッドに倒れていた。とりあえずこの気持ち悪い液体を洗い流すためにシャワーを浴びる。
「…クソが。髪にかけるんじゃねえよ。」
俺はがぴがぴに固まった髪を少しずつ洗っていく。髪を洗い終わったら次は体だ。あいつに挿入された場所を念入りに洗う。
黙って黙々と洗う。
だが、俺は急に苛立ちを感じて壁を殴る。ガンッという音がして手の皮がめくれて出血する。
一体あと何回こんな目に合えばいいのだろう。外に出たら本当にこの状況は変わるのだろうか。
俺は不安に駆られる。どこまで行っても俺は柊はじめから解放される未来が見えなかった。
シャワーを止めてユニットバスから出ようとすると吐き気がこみ上げてくる。
急いで横のトイレに駆け寄って嘔吐する。
「おえええええぇ…うぉえぇえぇぇ…」
体が勝手に震える。さっきまでお湯のシャワーを浴びていたのに急速に体温が下がっていく感覚がする。俺は急いで体を拭いて服を着た。しかし、体の震えが収まることは無かった。
「このままじゃ、不味い。」
俺は終末世界を使ってあるところにゲートを繋げる。
「はあ、早く、はあ、あそこに…!」
ゲートから出ると俺の意識はそこで限界を迎えた。
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「あーおいしかった。」
エレベーターの中でセラが鏡に寄りかかりながらそうつぶやく。俺たちは夕飯のラーメンを食べてビルまで帰ってきていた。
「確かにおいしかった。」
針理もさっきのお店の記事を見ながらそんなことを言う。俺もあの店の味は気に入った。スープの味は薄目なのだが、不思議と癖になるスープだった。
俺たちはエレベーターを降りてそれぞれの部屋に戻った。
俺はリビングの電気を付ける為にスイッチのところまで行こうとする。そこで、なにか大きなものでつまずきそうになる。
「うおっなんだこれ?」
俺はつまずいた何かを確認するために急いで電気を付ける。
そこにいたのはぐったりした春夏だった。
「春夏!?どうした!何があったんだ!?針理、救急車を早く!」
「わかった。」
俺は春夏を仰向けにして楽な姿勢にする。針理はリンクから急いで救急車を呼んでいる。
春夏の胸に耳を当ててみると心臓は正常に動いていた。だが、体温がかなり低い。このままでは危険かもしれない。
俺は自分の寝室から布団を持ってきて春夏に被せる。
「大丈夫だ。すぐに助けが来るからな。」
俺は救急車が来るまで春夏に呼びかけ続けた。
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