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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
都市の暮らし
54/66

準備開始

よろしくお願いします。

 俺は真白と融合して針理を抱っこしながら空を飛んでいた。何か所か目星を付けていた場所を回ったが大体が異形種や獣がうろついていた。


「次は…銚子の滝。高山都市の、東3キロの場所。」


 俺は翼を動かして旋回する。


「了解。」


 しばらく飛びながら周囲の警戒をする。運がいいことに今日は白銀鷲のような飛行する敵とは出会っていない。


「霧刃、あそこ。」


 針理が少し先にある滝を指さす。高さ30m程の高さから水が勢いよく流れ落ちている。あれが銚子の滝だ。


 パッと見た感じ周囲に敵はいない。安全なのを確認して滝つぼ近くの岸に着地する。融合を解除して真白を抱っこしながら周囲を見渡す。


「さすがに、冬に滝は寒い。私たちは大丈夫だけど、他の人は無理。」


 針理が川となって流れていく水に触りながらつぶやく。針理は元々極低温か超高温以外なら余裕で活動できる。だが、他のメンバーはみんな人間だ。今はいないが、万が一敵に遭遇して濡れてしまった場合、最悪死ぬ可能性もある。だからといって戦闘をメインにした探索をする訳にもいかない。何を目標にしてやればいいのだろうか。


「そういえば、外出許可は、どうするの?」


 針理から質問が飛んでくる。


「…どうしよう。」


 不味い。全く考えていなかった。守護者の肩書が万能だと言っても限界がある。さすがに子供二人を無制限に外に連れ出すことなんてできない。


 俺は木に寄りかかって滝を眺めながらぼやく。


「なんか疲れたな。久しぶりに行くか…」


 針理が上から顔を覗き込んでくる。


「行くって、どこに?」


 真白はどこかわかったみたいだ。すぐに融合し直して翼を出す。


「俺と真白の最初の家だ。」


─────────────────────────


 俺たちは綾女からもらったマップを頼りにあの洞窟を探す。


「焼岳から流れる川…あれか?」


 綾女は「昔はこんな川なかったし、あんなところに鍾乳洞も無かったわ。」と言っていた。ここらの地形は最近できたものなのだろう。


 地図と周りの地形を照らし合わせていると見覚えのある木を見つける。


「あれは…そうか、こっちか。」


 よく薪を取りに来ていた大きな木。そこから見覚えのあるみかんの木と岩肌が目立つ地形が近づいてくる。そして、縦長の二つの狭い洞窟、ではなく鍾乳洞。家の近くに着地して針理を降ろし、融合を解除する。


「ここが霧刃と真白の、家。」


 焚火の為に組んだ円形の石。入口を塞ぐために枝と蔦で作ったドア。


「あの頃のままだ。」


 腕の中の真白も頷く。ここで生活したのはほんの少しだ。だが、真白との出会いを始め様々な幸運があったからこそ俺はここまで来れた。


 俺は家の横に建てたお墓の前で立ち止まる。


「この石は?」


「俺の…俺たちの命の恩人のお墓だ。彼女が居なかったら俺たちは間違いなく死んでた。」


 少佐さんの武器があったから外でも生きていけた。


 俺はお墓の前で手を合わせて目を瞑る。


 少佐さんのお墓参りも済んだので湖があった方の鍾乳洞に入る。中には変わらず光る石がある。昔は回収することができなかったやつだ。


「中は寒いな。とりあえずあれとあれ。それからあの石を持って帰るとするか。」


 多分宝石だと思われるものをハンマーで母岩を砕いて採掘する。針理のパワーでようやく壊れたので、ここの石は相当堅そうだ。光ってる石は採掘してもずっと光っている。


 針理が岩を砕いて行くのを横目にふと思いつく。


「…そうか採取!これなら行けるか?」


「どうしたの?」


 俺は針理が採掘してくれた宝石を手に取って笑う。


「いいこと思いついたぞ。」


─────────────────────────


 俺は外に行くメンバーを集めて会議を始める。


「お邪魔します…ここがキリハの家。大きい。」


「お邪魔します。おおー!素材の宝庫!!」


 そういえばセラと春夏を家に呼ぶのは初めてだ。棚に並んでいる白銀鷲の翼や原石のまま放置している宝石を見ている。


「欲しいならちょっとならあげるぞ。」


 俺がそう言うとセラは目を輝かせて詰め寄ってくる。


「いいの!?ならうちは…これが欲しい!」


 セラが棚の下の方に置いてあった中くらいの魔石を手に取る。魔石なら奥の物置部屋に沢山転がっている。


「いいぞ。春夏は…その青いやつが気に入ったみたいだな。」


 棚の右側に置いてあった小さい青い透明な宝石を見ている。俺はそれを手に取って春夏に渡す。


「はい。」


「え!?でもこれってサファイア…本当にいいの?」


 春夏が困惑した顔をして俺の顔と宝石を交互に見ている。


「いいよ。というか見る以外使い道ないから別に売ってもいいよ。そんなに高くはならないと思うけど。」


 俺は春夏の手に宝石を渡す。ぶっちゃけ綺麗だから擬人之塔の往復時に拾っただけである。この宝石の名前すら俺は知らない。魔石と同じかと思ったが、中から魔石みたいな強力な魔力は感じなかった。


 春夏は手にした宝石を大事そうに握りしめている。


「ありがとう。」


 喜んでもらえたようで何よりだ。


(春夏が好きなら俺も宝石のこと調べてみようかな。)


 俺は外の生き物の知識はあるが、石とかは全然知らないのでいいチャンスかもしれない。


「さて、お土産が先になちゃったけど、会議始めるぞ。」


 リビングのソファに俺以外を座らせる。俺は立って、大型モニターにあらかじめ用意しておいた画面を表示する。


「俺たちが行くのはここ、銚子の滝の少し下流です。」


 俺が先日下調べした時に撮った写真と地図を出す。その写真を見てセラが質問する。


「ここにした理由は?」


「俺たちだけで、行ける距離と安全面からここに決まりました。」


 俺はリンクを操作して次の画面に移る。


「で、次の話なんだけど。外出許可どうする問題。これのせいで出発は数年後になります。」


 切り替わった画面を見てセラが文句を言う。


「えー、そこを霧刃たちが何とかしてくれるんじゃないの?」


「セラって俺たちがなんでもできると勘違いしてないか?色々試したけど外出許可は自分で取るしかなかったんだよ。悪いけどここは自力で突破してもらうぞ。外に行った時の安全は保障してやるから頑張ってくれ。」


「私討伐者の試験受けれるお金が無いんだけど…」


 春夏が俯きながらつぶやく。


「その辺含めて全て俺が受け持つ。試験に関わることならなんでも頼ってくれ。戦闘訓練にも付き合うし、足りない装備があるなら俺が何とかする。外に連れて行くって約束したからな。絶対に合格させてやる。」


 春夏が俺の目を見ながら半信半疑で質問してくる。


「それって、私を討伐者にしてくれるってこと?」


「そうだ。違法な脱出には協力はしないが俺の指示に従うなら協力する。その代わり滅茶苦茶キツいぞ。戦闘方法以外に基礎体力も付けなくちゃいけない。やることは山積みだ。それでもやるか?」


 春夏の目を正面から見据えて問いかける。俺たちは外で命のやり取りをすることで戦闘面を爆速で鍛えてきた。そして、その荒い強さを透蜜に研いでもらうことでここまで強くなれた。ここでの訓練では透蜜は居ないし、外で命を懸けたギリギリの戦闘もできない。


「やる。やらせてほしい。」


 春夏がやる気に満ちた顔で返事をした。


「うち戦闘苦手なんだけど、こればっかりはしゃあないか。うちもやるよ。外自由に出たいし。」


 セラも了承してくれた。


「普通の何倍も早く合格させてやる。死ぬ気で頑張ってくれ。」


 その日はこれにて解散した。


─────────────────────────


(外に出られる。)


 私は信じられない思いだった。嬉しくて泣きだしてしまうが、終末世界であるここには誰もいない。好きなだけ泣いた後に嬉しくて笑顔になる。


 ここで頑張れば私の人生を取り戻すことができるかもしれない。


 だが、課題もある。一つは私のギフトは戦闘には向いていないということ。もう一つは時間が足りないこと。


 今までの放課後はほとんど柊と一緒に過ごしてきた。親にそうしろと命令されているからだ。ここをなんとか誤魔化しながら訓練をしなければいけない。


「私は絶対に外に出る。」


 口に出して決意を固めて終末世界から外に出る。


 霧刃に強引に約束を取り付けたのを英断だったと思い出しながら、私は自分の部屋に出た。

読んでいただきありがとうございました。

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