表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
都市の暮らし
51/66

最早運命

よろしくお願いします。

 俺は目覚ましの音で目を覚ます。昨日はすごい疲れた。朝は早かったし、セラは謎にテンションが高いし、スカールを持ってるせいで無駄に注目を集めてしまったしでいろいろなことがありすぎた。


 俺は横にいるやつに抱き着く。俺が寝ているときはいつも真白が一緒にいる。


 今日も真白の頭を撫でようとしていつもと違う感触が右手から伝わってくる。


(あれ…?)


 俺は不審に思って目を開けて確認する。


「真白…?」


 俺は目を擦って相手が誰かを確認する。


 黒く長い髪に青い瞳。胸元にある機械的な部分。


「おはよう霧刃。」


 そして、この声。


「針理!?ご、ごめん。ぐぇ…」


 俺は針理から急いで離れようとするが、針理に抱きしめられる。相変わらずすごい力だ。全く抵抗することができない。


「大丈夫。もう少し、このままで居たい。」


 針理がすごく優しい目と信じられない程の怪力で俺をがっちりロックする。


「わ、わかった…」


 家族を除いて真白以外の人を抱きしめたことが無い俺はどうすればいいかわからなかった。なんとなくだが、恥ずかしい気分になってくる。何故だろう。真白を抱きしめているときはこんな気分にはならなかった。心臓がドクドクする。だが、嫌な気分ではない。あの朝の温泉の時みたいだ。


「霧刃、緊張してる?」


「え!?あ、いゆあまあ、ちょっと…」


 なんか変な返事をしてしまった。ますます恥ずかしくなる。


「可愛い。」


 針理からそんなことを言われる。もう限界だ。意識がだんだんと薄れてきた。


「針理…放して…」


 俺の意識はそこで途切れた。


─────────────────────────


「ごめんなさい。」


 朝ご飯を食べながら針理が何回も謝ってくる。


「もういいって。別に気にしてないから早く食べて会場行こう。」


 真白が何とも言えない表情で針理を見ている。それはどうゆう感情なんだろうか。というかなんで今日は真白じゃなくて針理が同じベッドにいたのか気になったが、聞く雰囲気ではなかった。


 とりあえずご飯を食べて家を出る。持ち物は座席の券とヴァンパイアと鞄だ。お金はリンクに登録されている。


 扉を開けて外に出る。


「おっはー霧刃。奇遇だ」


 俺は急いで扉を閉める。


(なんだ今のは俺は何を見た?)


「どうかしたの?」


 針理と真白が不思議な顔をしている。


「んーん。なんでもない。ちょっと待ってて。」


 もう一度扉を少し開ける。


「…なんでここにセラがいる?」


 扉の前で水色のワンピースを着たセラが待っていた。


「あれ、言ってなかったっけ?ママと私、3号室に住むから。お隣さんとしてこれからはよろー。」


(マジかよ…)


 俺は若干セラに対して気まずさを感じていた。俺が守護者だと素直に言わなかったのでそこに引け目を感じていたのだ。


 しかし、このままにしているわけにはいかないので俺は諦めて会場に向けて歩き始めた。


─────────────────────────


「ねえ、セラごめん。昨日のこと怒ってる?」


 セラは出店で買ったクレープを食べながら返事をする。


「んー?ああ、あれか。別にいいよ。あっ!悪いと思ってるならさ、今度外連れて行ってよ。私まだ自由に外を探索したことないんだよねー。」


 外は危険なのだが今回ばかりはこっちに非があるせいで、断ることができない。俺は渋々了承した。


「わかったよ。でも、ミーシャさんに許可取れたらね。」


「やったー。マジで嬉しい!」


 俺はため息をつきそうになる。なんか都市に来てから面倒ごとに巻き込まれてばかりな気がする。


 だが、今日は武闘会の二日目。今日は高等部と10代部が行われる。年に一回のせっかくの大会なんだ。楽しまなければ損だ。


「ママに確認とったらOKだって!日にちは後で決めようか。今から楽しみー。」


 セラのその言葉を聞いて俺は絶望する。そこは普通娘の安全を考えて行かせないものだろと思ったが、許可が出てしまったらもう断れない。一緒に外に出るときは全力でセラを守るしかない。


 俺は気分転換に出店で焼き鳥を数本と飲み物を3本買う。ジュースを鞄にしまって、後ろにいる真白に焼き鳥を1本食べさせる。真白の笑顔を見て俺は再び心を落ち着かせる。


 だが、そこで最悪な出会いをしてしまう。


「やれやれ、武闘会初等部優勝者のこの俺と出会えるとは、幸運だな異形種。」


 そこには柊はじめが居た。左右には春夏と金髪の女が抱き着いている。そしてその横に更に広がって取り巻きの男子の2人がいる。周りの人たちが広がって歩くこいつらにウザそうな視線を送っていっているが、全く意に返す様子が無い。


「霧刃ー知り合い?」


 柊達と初対面のセラが不思議そうに聞いてくる。


 それを見て柊がセラに自己紹介をし始める。


「初めまして。僕は初等部の優勝者の柊はじめです。そんな奴らと一緒に居ないでこっちにおいで。かわいいお嬢さん。」


 セラがちょっと引きながら名乗る。


「え、ああうん。うち天遣。よ、よろー。」


 お前俺の時と全然反応違うじゃねーか、と喉まで出かかって何とか飲み込む。あの時のセラは俺ではなくタッグに興味を持っていたし、そこの違いだろうか。


 つまり物に釣られたということだろう。


(いや、それってヤバくないか?セラって危ない奴とかにも機械を見せられれば平気で付いてきそうだし。)


 俺はちょっとセラを残念な子を見る目を向ける。


「ちょっと霧刃、うちになんか言いたいことある?」


「ないないないない。ないです。」


 俺はセラの怖い笑顔を見て急いで否定する。時々見せるあの顔を一体何なんだ。


「おい何をしてるんだ柊さんが話しかけるだろ。さっさと返事しろよ!」


「ぶっ殺すぞ!」


 俺たちのやり取りを見て、取り巻きが騒ぎ始める。


「ああもう面倒くさいな!セラ、針理、こっち来て。」


 俺はセラの腕を掴んで走り出す。訓練施設の中に入っていく。


「やれやれ、俺に女を取れそうになったら逃げるとはな。所詮は雑魚か。さあ、その手を振りほどいてこっちにおいで。」


 そう言いながら柊が必死の形相で追いかけてくる。その後に取り巻きが付いて来ている。


「いーやー!うち霧刃達と外行くから!あなたは霧刃と仲悪そうだし一緒にいれなーい。」


「セラ余計な事言わないで!」


 俺はセラに遅すぎる釘を刺す。


(このままじゃ追いつかれる。なら…)


「セラごめん。」


「キャッ!?」


 俺はセラを抱きかかえて更に早く人ごみの中を走る。もう一体どれだけの人に迷惑をかけているのか考えるだけで頭が痛くなってくる。


「すごっ!霧刃、マジ早すぎ!」


 興奮してるセラを無視して走る。俺たちは訓練室の入り口を通り過ぎて昨日も入った警備員がいる通路に入る。


 そこにいたのは昨日と同じ警備員がいた。


「君たちは昨日の…」


「警備員さん時間が無いんだ。早くスキャンをお願いします。」


 俺たちが急いでいるのを察したのか警備員が真剣な顔で頷く。


「わかりました。腕輪をお願いします。」


 俺たち4人は腕輪を突き出し、順番に素早くスキャンしてもらう。


「はい、確認しました。こちらへどうぞ。」


「ありがとう警備員さん。はいこれ外で買ってきたジュース。お仕事頑張ってね。」


 俺はそう言うと一気に人気が少なくなった通路を走っていく。昨日お父さんが居た部屋の扉を開けてその中に入り、扉を閉める。


「はあ、ここまでくれば、はあ、大丈夫だろ、はあ…」


 俺はその場で座り込む。さすがに加速を使わずにあの距離を走るのは疲れた。


「セラ!ここに来るときは連絡しなさいって言ったでしょ!」


 顔を上げるとそこにはミーシャさんが居た。周りを見るがお父さんはどこにも居なかった。ミーシャさん一人だけのようだ。


「ママ!さっき霧刃すごかったんだ!うちをお姫様抱っこして────」


 セラが俺の腕から下りてミーシャさんの方に走っていく。ひとまず面倒ごとが去ったことを確認して俺は少し休憩することにした。


─────────────────────────


 霧刃は一体どこに行ったのだろうか。私は柊の後を追って霧刃を探す。訓練室の入り口は試合の観戦しに来た人たちでごった返していた。


 その中で一瞬霧刃が通路を曲がっていくのを目撃する。


「あれは…」


 私のつぶやきを柊が耳ざとく聞き取る。


「よくやった春夏!この俺から逃げられると思うなよ!」


 私たちは人ごみを抜けて霧刃が入った通路へ進む。だが、そこには警備員が立っていて止められてしまう。


「こらこらここは立ち入り禁止だよ。会場はあっちだよ。」


 優しく話しかけてくる警備員に柊が悪態をつく。


「俺を誰だと思っている?柊だぞ!お前なんかお父さんに言えばすぐにクビにできるんだぞ!早くそこをどけ!!」


 その言葉を聞いて警備員の表情が変わる。


「ここはクラスレベル2以上の人でなければ入れません。ここを通りたいなら腕輪に登録されているクラスレベルの確認をさせてください。もし1以下であればここを通すことはできません。」


 警備員の警告を聞いて柊の取り巻きの男子が騒ぎ出す。


「俺たちの前にも来たやつは通ったんだろ!なんで俺たちはだめなんだよ!」


「ぶっ殺すぞ!」


 警備員がその暴言を聞いて更に表情が厳しくなる。


 私は見ていられなくて柊たちを止めに入る。


「はじめくん、もうあんな奴ら放っておこうよ。せっかく武闘会なんだからさ。私達と楽しもうよ。」


「ねー。私もはじめくんの昨日の試合の話聞きたいな。」


 私たち女子2人が柊をなだめる。


「…ふん。まあそうだな。この俺がわざわざ追う程度の価値もなかったな。邪魔したな。」


 そう言いながな来た通路を戻りながら左手を後ろに向けて振る。柊がやると絶妙にダサいが口には出さないようにする。私は頭痛を我慢して全員が通路から出ていったのを確認して警備員に頭を下げる。


「お仕事の邪魔してすいませんでした。」


 警備員の顔を見ることはできないが、ため息が聞こえてくる。怒られるのを覚悟するがそんなことはなかった。


「あんな子に振り回されて君も大変だね…あっそうだ、これ君にあげるよ。貰いものだけど。」


 警備員は1本のリンゴジュースのボトルを渡してくる。


「これは…?」


 私は不思議そうに警備員の顔を見る。


「さっき来た男の子にもらったんだ。休憩時間に飲もうかと思ったけど、君にあげるよ。これからも大変なことはあるだろうけど頑張ってね。」


(私の為にこのジュースを…)


 私は警備員の優しさに嬉しくて泣きそうになるのを我慢する。この後は柊たちと一緒に居なきゃいけない。そこで泣いた痕を見られるわけにはいかない。


「ありがとうございます。お邪魔して、すいませんでした。」


 私はもう一度頭を下げてから柊たちを追いかける。


「春夏。どこに行ったのかと心配したぞ。」


 柊の笑顔に頭痛がしてくるが私は笑顔で答える。


「ごめんね。ジュース買ってたんだ。」


 私はそう言って柊の左側に並ぶ。


「そうか。それで、俺の昨日の試合の話だったな。決勝戦もすごかっただろうが個人的には準決勝の方が────」


 私は適当に相槌を打ちながらさっきの霧刃と一緒に居た金髪の女の子のセリフを思い出す。


『うち霧刃達と外行くから!』


(外…)


 私はその言葉が頭から離れなかった。



 


読んでいただきありがとうございました。


なんか最近霧刃運悪いですね。まあ、針理と真白と出会えた幸運の揺り戻しということで悪しからず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ