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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
都市の暮らし
50/66

試作品



よろしくお願いします。

 俺はセラについて行き、防衛部隊の訓練施設に戻ってくる。試合を見るのかと思ったら、訓練室を無視して奥の売店の方に走っていく。そして、売店の裏方に入れる通路に入っていこうとする。そこで、警備員の人に止められる。


「ああ、ダメだよ僕たち。ここは入っちゃいけない場所なんだ。試合の会場は向こうだよ。」


 警備員は俺たちが来た方角を指さして優しく注意してくる。セラはすぐに右腕の腕輪を警備員の方に突き出す。


「関係者だって。ちゃんと見てみて。」


 セラがそう言うと警備員はスキャナーを取り出して、やれやれといった感じで認識コードを確認する。最初は困ったような顔をしていたのだが、スキャン結果が出た途端にどんどん青ざめていく。


「か、開発部門職員!?こ、これは失礼しました。どうぞ、お通りください。」


「これからは会うことも増えるだろうし覚えてねー。霧刃、こっちこっち。」


 セラが関係者どころかすでに防衛隊員であることに驚きながらも、俺もセラについて行こうとする。だが、そこでまた警備員に止められる。


「ちょっと待ってくれ。一応君の腕輪もスキャンさせてくれないか?ここを通すときはスキャンは規則なんだ。」


 その言葉を聞いてセラが焦りだす。


「やばっ!?それ考えてなかった!」


 セラには俺はただの子供だと思われてる筈だ。俺は警備員にこっちに寄るようにジェスチャーをする。


 警備員はしゃがんでこっちに耳を近づけてくれる。


「俺のやつスキャンするのはいいけど絶対に声に出さないでよ。」


 警備員は一瞬ポカーンとするが、すぐに真面目な顔つきになる。


「わ、わかった。約束するよ。」


 俺は少し離れて右腕の腕輪を見せる。警備員がスキャンしていき、すぐに結果が出る。


「っ!!?き、君は一体!?」


 警備員はさっきよりも更に青ざめる。喉まで出かかった言葉を飲み込んで、こちらに驚愕した目線を向けてくる。


「このことは秘密だよ。お願いね。」


「わかった…あ、いや、了解いたしました。」


 俺は警備員に口元に人差し指を当てるジェスチャーをして、セラの方に走っていく。


「お待たせ。で、どこに行くんだっけ?」


 セラは一瞬固まったが、すぐに歩き始める。


「ああ、こっち。」


 さっきみたいに走ることは無く、こっちを見てくる。さすがに居心地が悪く、セラに話しかける。


「どうかした?」


 俺がそう聞くとセラはその口を開く。


「霧刃が持ってる腕輪のクラスレベルって何?」


「え…急にどうしたの?」


 俺は言葉に詰まる。警備員も俺が守護者だと声には出さなかったし、セラの視点からスキャナーの画面は見えなかった筈だ。


「私のは2だけど、霧刃はどれくらいなのかなーって。まあ、シンプルな疑問?そんな感じ。」


 なんて答えればいいか言葉に詰まる。


「うーん…ちょっと上の方かな。」


「えーなにそれ教えてよー。うちも教えたじゃん。ね、誰にも言わないからさ。」


 そんなこと言われても馬鹿正直に「5です。」なんて言えない。守護者かそれと同等な存在だとばれてしまう。


 クラスレベルは1から6まである。クラスレベルが高い程、防衛部隊から開示される情報が増えていく。俺たち三人は全員5になっている。綾女と透蜜は6だ。


「…2以上。それ以上は言えない。」


「…ふーん。いいこと聞いちゃった♪あ、ここだよ。」


 セラが一瞬怖い笑顔を見せる。俺は咄嗟に背後のヴァンパイアに手を伸ばす。


(なんだ今の表情と冷たい目は…)


 俺はセラを警戒するがさっきの表情が嘘のように明るい笑顔に戻っていた。


「こっちだよこっち。ん、誰あれ?」


 俺は若干の警戒感を残しながらも、セラに近づく。


「どうかしたのか?」


 俺は扉越しに部屋の中を見る。中には白衣を着た金髪のロングヘアの女の人と楽しそうに話しているお父さんが居た。


「お父さんの知り合いかな?」


 そうつぶやくとセラが驚いてこっちを見てくる。


「え?うちのママと話してるの霧刃のパパなの?」


「…え?」


 俺はセラと顔を見合わせる。俺たちはお互いに頷き合う。


 とりあえず、腕輪を使って扉を開ける。


「お父さんその人誰?!」


「ママーその人誰ー?!」


 急に入って来た俺たちに二人は驚く。


「霧刃!?何でここにいるんだ!?」


「セラ!こっち来るときは連絡入れなさいって言ったでしょう!」


 何故か驚きながら二人は赤面していた。


─────────────────────────


「で、その人誰?」


 俺はテーブルをはさんでお父さんと向かい合って問い詰める。横にはセラが居て、対角線上にセラのお母さんがいる。


「この人は新しく中央都市から派遣された技術者だよ。霧刃のリンクにもメッセージが来てただろ?」


 お父さんはそう言ってセラのお母さんの方を見て微笑む。セラのお母さんも嬉しそうな顔をしている。


 そういえば少し前に中央都市から『各都市のクラスレベル2以上の職員へ通達。中央都市より技術者を最低1人以上派遣します。技術者には新型の武器データを持っています。念のため各都市で試作品を作り、性能テストが合格の場合は防衛部隊に配備を開始してください。』という連絡が来ていた。


「…もう進まないからうちが紹介するね。この人うちのママ。ミシェール・天遣っていうの。うちもママも中央都市から来たの。これからここの都市に住むことになったからよろー。」


 俺もお父さんを無視して話を進める。


「こっちは俺のお父さん。神楽章斗。高山都市の最高指揮官やってる。防衛部隊で聞きたいことがあったら大体のことは知ってるよ。」


 ミシェールさんが緩んだ顔を戻してこっちを見て自己紹介してくる。


「初めまして。セラのママです。ミーシャって呼んでね。娘と仲良くしてくれてありがとう。小さな守護者さん♪」


「!?」


 俺は椅子を後ろに蹴り飛ばしてヴァンパイアを抜刀して構える。最大限の警戒をしてジッとミシェールを見る。さっきの顔はセラの怖い笑顔とそっくりだった。


「落ち着け霧刃。ミーシャさんのクラスレベルはお前と同じ5だ。」


 俺はゆっくりとヴァンパイアを納刀して、椅子を元に戻す。


「…そっか。抜刀してごめんなさい。」


 俺は頭を下げる。急に守護者だと言われたので驚いて武器を構えてしまった。


「いいのよ。それにしてもすごい反応速度ね。さすがは章斗さんの息子ね。」


 許されたようなので俺は頭を上げて席に着く。横でセラが固まっていた。


「霧刃ってマジで守護者なの…?」


 俺は答えに迷ったが、今更隠してもしょうがないと思い、素直に話した。


「そうだよ。この義手は守護者になるちょっと前にもらったんだ。強くなるには左手が必要だって。」


 俺の答えを聞いてセラが抱き着いてくる。


「すごいすごい!マジでヤバい!守護者なんて初めて見たよ!やったー皆に自慢しよ!」


「セラ離れて。」


 俺がセラを引きはがしていると、喜んでいるセラにミシェールさんが釘を刺す。


「ああそれと霧刃くんが守護者だってことは絶対にバラしちゃだめよ。」


「えーなんで?」


 セラが机に身を乗り出してミシェールさんに詰め寄る。


「彼は今この都市で勉強してるのと、都市内の生活環境の調査をしてるの。だから守護者だとバラすと中央都市から記憶消されるわよ。」


 記憶消去の対象になると聞いてセラが引き下がる。


「…ならしょうがないか。」


 セラが静かになったので今度は俺が質問する。


「あの俺からも一ついいですか?」


「何かしら。」


 俺は真剣な顔をして質問する。


「なんでセラの前で俺が守護者だとバラしたんですか?俺の任務は秘密裏に行わなければいけません。素性を知る人が少なければ少ない程いい。」


「あら、あなたも守護者の腕輪を使ってここに来たんでしょ?なら少しくらいいいじゃない。あと、違反は見つからない限り違反ではないんですよ。」


 俺は言い返すことができなかった。確かにここに来る前に警備員に俺の素性を明かしてしまった。あれは軽率だった。今度擬人之塔に帰ったら偽装方法について透蜜に相談してみよう。


「…わかりました。それじゃあ、そろそろ俺は帰ります。仲間を待たせてるんで。」


 俺は椅子から立ち上がり、部屋を出ようとする。


「ああ、ちょっと待って。もしよかったら少し手伝ってほしいことがあるんだけど。」


「ミシェールさん、何ですか?」


 俺が振り返ると一枚の画像データが送られてくる。俺はそれを開いて中身を確認する。見たことない銃の画像だ。


「これは?」


「私たちが持ってきた新型のアサルトライフルよ。あとミーシャって呼んで頂戴。」


 なんでこれをわざわざ見せたのだろうか。なんだか嫌な予感がしてくる。横を見るとセラが居なくなっており、画像の銃の実物を持ってくる。


「これ私とママで作ったのよ。すごくない?ヤバくない?」


 セラが褒めてほしそうな顔をしている。


「セラはすごいな。で、これをどうしろと?」


「さっきのお詫びと言ってはなんだけどあげるわ。それ、試作品なの。もう全てのテストは終わったから破棄しても構わないのよね。本当はこの武闘会の間に売ろうかとも思ったんだけど、あなたにあげることにしたの。まあ、要らなかったら捨ててくれていいわ。」


 俺には大きくてまだ扱うことはできないだろう。それでもこれを渡してきたということはもう少し成長してから使えってことか、戦闘以外での使い方があるのだろう。


「お詫びというなら一つ欲しいものがあります。」


「何かしら?」


「これから新型の武器ができたらその試作品をください。もちろん全てのテストが終わってからで構いません。」


 ちょっと図々しいかもしれないが俺は敢えて大きめの要求をしてみた。別に断られても問題ない。武器は透蜜に言えば強力なものをくれるだろう。だが、都市の人達がどれくらいの性能の武器を使っているのか知っておきたかったのだ。


「そんなことでいいの?わかったわ。これからは試作品の一つはあなたの家に送るわね。」


 ミーシャさんは俺の提案をあっさり飲んでくれた。なんだか拍子抜けした気分だが、要求が通ったんだから喜ぶべきだろう。


「ありがとうございます。なら俺はこれで。」


 俺は試作品のアサルトライフル『スカール』を背負って部屋を出る。


「いやー。まさか霧刃がそんな人だったなんて知らなかったよ。でも、ちょっと嬉しいかも。知ってた?秘密を共有すると仲良くなれるんだよ。」


 俺の横をセラが歩いている。


「なんでついて来てるの…」


「まあまあ、細かいことは気にしない。ほら、試合見に行こ!」


 俺の質問には答えてもらえず、そのまま二人で会場まで戻っていった。


─────────────────────────


「誰その女?」


 真白と針理がすごく怖い顔をしながらこっちを睨みつけてくる。


「お父さんの知り合いの娘さん。さっき知り合ったばっか。」


 俺がそう言うと少しだけ二人からの威圧感が減った。嘘は言ってない。


「セラ・天遣。よろしくねー。」


「…針理と真白。よろしく。」


 笑顔で握手をしているのに何故か三人共すごく怖い。


 なんかやばい雰囲気で、俺が何か言えそうにはなかった。



読んでいただきありがとうございました。


投稿頻度落としてすいません。最近あまり体調が良くなくて、このような状態になってしまっています。


1話の中身の質を保つ為にもこうして投稿頻度が落ちることがあるかもしれませんが、頑張って完結させれるように頑張ります。

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