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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
欠けた者達
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一日の終わり

(うーん。なかなかいい場所が見つからない。)


 白銀鷲の巣に戻って来た俺達は、もう一度空を飛んでいた。


 その理由は安全な場所探しだ。さすがにあの巣では安全とは言い難かった。高所なので動物などは上って来ないと思うが、異形種には障害にすらならないので仕方なかった。


(とは言ってもどんな場所なら襲われないんだ?建物の残骸とかは…だめだよな。)


 真白からも否定の意思が流れてくる。


(だよな。あーダメだ。頭が回らなくなってきた。)


 俺の人生は今日一日で目まぐるしく変化した。最早驚くことが多過ぎて空を飛んでいることも受け入れてしまった。


 死にかけて、足と声を手に入れて、初めての友達を作って、両腕も使えるようになって。


 本当にいろんなことが起こりすぎて体も心もとっくに限界だった。特に自分の手で生き物を殺したことがかなりきつかった。


 覚悟を決めたとはいえそれで精神的な負荷が消える訳ではない。


(どこか何かないか?)


 ボーっとする頭を必死に働かせる。しかし、目につくのは川などの目立つものばかりだ。


 そんなことをしていると真白が急に右方向に旋回し、高度を落とし始めた。


(なにか見つけたのか?)


 真白から肯定の意思が伝わってくる。


 そのまま高度を落としていき岩肌が露出している場所に降り立つ。


(あー。なるほど洞窟か。)


 真白から再度、肯定の意思が伝わってくる。


 俺たちの目の前には高さ1.5mぐらいの小さい入口がある洞窟があった。ここなら確かに安全かもしれない。周りには木も多いので出入りするところさえ見られなければ、異形種もこんなところは調べないだろう。


(よし。ここを俺達の家にしよう!)


 先ほどよりうれしそうな意思が伝わってくる。


 崖を少し登り、洞窟の中に入っていく。中は思っていたよりも寒くなっていた。


(どうしよう。服は今着ているボロボロのものしかないし。動物の毛って暖かいのかな?)


 俺は今日殺した一角うさぎと白銀鷲を思い浮かべる。


 真白からは否定とも肯定とも取れない微妙な反応が返ってくる。


 だがこれでは夜に寒くて死んでしまうかもしれない。


 洞窟から外を見ると木の枝の隙間から日が傾き始めているのが見えた。空が赤くなっていたのだ。


(このままじゃ夜になっちゃう。急いで巣まで戻って毛を持って来よう。)


 真白に再び飛んでもらう。


 距離的にはそんなに離れていない。しかし、真白が一度にどれだけ運べるのかもわからない。急がなければいけなかった。


(あれが目印にした壊れた建物だから…あっちだ。)


 左方向に飛んでいく。少し飛ぶとあの巣がある大きな木が見えてきた。


 真白は巣に着くと同時に残っていた大きい白銀鷲を運び始める。体の何倍もあるそれを4本の腕を使って持ち上げていく。


(すごい力だ。こんなに大きいものを持って飛べるなんて。)


 そしてもう一度洞窟目指して飛び始める。


 俺も何かを手伝いたい。だが、体は真白に動かしてもらっているし、出来ることといえば敵がいないか周りを警戒するくらいだ。


(そういえば魂喰が最後になにかくれたな。加速、だったっけ?どんなものなんだろう。着くまで時間あるし、試してみるか。)


 そう思い加速を発動させようとする。実を言うと俺はこの加速というのがなんなのかよくわかってなかった。なのでどんなことができるのか確認しておきたかったのだ。


(俺のギフトは魂喰なのにその中に加速がある、ような気がする。魂喰を使った時と同じ感覚でやれば使えるかな?)


 そう思って加速を発動させた。


 すると飛行速度がすごく早くなる。まるで俺が白銀鷲に捕まっていた時のような速さだ。


(!?)


(!?)


 俺は突然の出来事に驚き、慌てて加速を止める。真白からも動揺しているのが感じられた。


(ご、ごめん!真白大丈夫だった?怪我とかしてない!?)


 真白から肯定の意思が返ってくる。


(良かった…だが、さっきのはあまりに考えなしだった。反省、しないとな…)


 いくら気になるからと言っても、今やるべきことではなかった。何もなかったから良かったが、万が一真白の飛行ができなくなるようなことがあれば、取り返しがつかなかった。


 気を引き締め敵の警戒に専念する。もう馬鹿なことは考えない。今やるべきことに集中する。


 そうして洞窟と巣を往復し白銀鷲の死体をすべて運んだタイミングで日が落ちてしまった。まだ空が明るいので大丈夫だが、もうすぐ周りは完全に暗くなってしまうだろう。


(一角うさぎは運べなかったか。だが、今夜の寒さくらいは何とかなるだろう。)


 真白からも肯定の反応が返ってくる。


(でも肉って腐るよな?このまま洞窟に運んでも問題ないのか?)


 そんなことを考えていると否定の意思が伝わってくる。


 そして、真白は4本の腕を使って大きいサイズの方の胴体から翼をもぎ取り始めた。皮と肉が無理に引っ張られたことにより、音を立ててちぎれていく。


もぎ取った翼は洞窟がある崖の岩肌にちぎった部分を下にして立てかけていく。


(やっぱり動物の血が出るのは苦手だ。吐きそうな気分になってくる。でも、これにもなんとか慣れていかないとな…)


 慣れているのか真白は淡々と翼をちぎっていき、やがてすべての解体が終わる。


 残った胴体の部分は大きい方は洞窟に入らないので離れた場所に置いてきた。小さい方は洞窟に運び込んだ。


 そして、夜になり星の光が地上を照らし出す。


 真白が一通り作業を終え、洞窟に入ったタイミングで真白のギフトが解除される。


「うぉぅ。」


 また倒れてしまった。これから先、真白と一緒に生きてくんだからこれにも慣れないといけない。


洞窟の奥の方には小さい鳥の死体が3つ、木の枝にぶら下がっているさっき真白が大きい方の死体を置いてくるときの帰りに採って来た枝と蔦(つた)だ。鳥の死体は皮を剥がされ肉の塊の状態でつるされている。何か草をつけていたがやはりよくわからなかった。


 よくわからないが真白がやっていることなので、ああしておくのが良いのだろう。


 俺には図鑑や学習用動画の知識しかない。どうやって鳥をいつも食べていたあの状態にできるかもわからないのだ。


 正直、真白の作業を見る前は羽を取ってそのまま焼けばいいと思っていた。


(こんなことならもっと外で生きる為に必要な事を勉強しておけばよかった。)


 後悔してももう遅すぎるが。それにしても星の明かりだけでも、こんなにものが見えるなんて驚きだった。


 俺が洞窟の入り口で外を見上げていると真白が剥いだ羽毛と翼を重ねてベッドを作り、寝る準備を整える。


 俺はその間に木の枝と蔦を使い、手こずりながらも入口を塞ぐドアのようなものを作る。近くで見るとスカスカだが無いよりはマシだろう。


 その後真白を手伝ってベッドを完成させ、二人でくっついてベッドに入る。


 所々血が付ているがそんなことを気にしてる余裕はなかった。


 日が落ちたことで急速に寒くなってきていたのでベッドの暖かさが身に染みた。


(あー。あったかい。誰かが横にいるだけでこんなにもあったかいんだ。真白が居るおかげで暖かさも2倍だ。)


 病室でのベッドの方が綺麗だったがあそこでは絶対得られない人の温もりを感じ、俺は嬉しかった。


 真白と俺はぴったりとくっつき体温が無駄にならないようにする。


 今日はあまりにもいろいろなことがありすぎた。今、こうしてなんとか生きているのも全て真白のおかげだ。俺がやったことといえば体を貸して、真白を加速のせいで危険に晒したことくらいだ。


(……俺、本当に何にもやって無くない?ていうか危険に晒した分マイナスじゃない?)


 なんか、すごい申し訳なくなってきた。


「ぁ、ぃ、あ、と、ぅ。」


 俺は真白に今日一日のすべてのことに対する感謝伝える。


 そして明日は何とか頑張ろうと思い、その夜はそのまま泥のように眠った。





読んでいただきありがとうございました。

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