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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
都市の暮らし
49/66

開会式

よろしくお願いします。

 俺は真白を背負って武闘会の会場の一つになっている防衛隊の訓練施設に来ていた。施設の前には大型電子モニターに『第51回目武闘会開催! 一日目 』と書かれている。今日は以前戦闘でも使った迷彩柄の灰色のマントを着けている。これで他の人からはただの女の子をおんぶしているようにしか見えない筈だ。


 今日行われる階級は初等部、中等部の二つだ。学校の訓練室では初等部のトーナメントが行われている。初等部の方は参加者欄に柊はじめの名前があったので見る気が失せた。


 こっちでは中等部のトーナメントが行われる。普段よりも観戦ルームの部分がかなり広くなっており、より多くの人が間近で試合を見れるようになっている。


「すごい人だかり。お祭りみたい。」


 指定座席の券を持ち、横の席に座っている針理が話しかけてくる。この時期になるとトーナメント会場の付近の道路は、車輌は通れなくなり、歩行者が自由に歩けるようになる。そして、民間の店や都市の店がこぞって出店を並べるのだ。


「まあ、年に一度の大会だからね。殆どお祭りと同じだよ。」


 都市が出してる店には大会時にだけ売られる特別な物もある。大会のロゴが入ったキーホルダーやTシャツ。高価な物だと武器も普段は買えない物が売られている時もある。


 ただ、武器はとても人気が高く、もし売られていたとしてもすぐに完売になってしまう。都市が作る武器はその性能も品質も高いことをみんな知っているからだ。


 現に今日も都市の出店に『武器は全て完売致しました。』という電子モニターが出ていた。早く試合を見たかったので、俺たちも早めに来たのだがそれでも遅かったようだ。


 ちょっとだけ興味があったのだが、売り切れてしまったのなら仕方がない。とりあえず食べ物だけ買って席に座って開会式を待っていた。


 俺の持っているお金だが、今まで手に入れた魔石や獣と異形種の素材を売ったものを三等分したものだ。


 全ての都市には換金施設が必ず在り、そこで外で手に入れたものをお金に換えられる。討伐者はこのシステムで生計を立てている。だが、大きな魔石や宝石、状態が良い獣の素材などは民間でも買い取りをしている企業もある。


 都市に売却すれば戦闘用の物資として消費されるが、民間の企業はその買取物自体を販売している。確か古物商みたいなものだとおばあちゃんは言っていた。


 買い取りと販売の差額で儲けを出しているらしい。基本的には都市に売却した方が高値で売れるが、超希少なものになってくると民間の企業の方が高い場合もある。綺麗な羽や宝石などのそれ自体の価値が高いものがこれに当たる。要は金持ちの為の贅沢な宝飾品は高く売れるのだ。


 しかし、都市も馬鹿ではない。不足している物資がある場合、買い取りの値段を高くしてくれるのだ。そして、継続して物資の換金をしていると、いくつかの優待が受けられるらしい。こういったイベントで少しだが武器を売ってくれるのは、普段の素材を換金してくれる討伐者たちへの感謝の意味も込められているのだろう。


 そんなことを考えていると周りは人でいっぱいになり、後ろの方は立ち見の人で埋め尽くされていた。時間的にそろそろ開会式が始まる。


 俺は少しわくわくしながら開会の宣言を待つ。病室で独りぼっちではなく、多くの人と武闘会を見るのは初めてだ。


 会場のざわめき。電子モニターに出される過去大会の名勝負の数々。そして、参加者たちの気迫。どれもここでしか味わえないものだ。


「皆様大変お待たせいたしました。只今より第51回高山都市武闘会の開会式を始めます。」


 開会のアナウンスがされると観客からは「うおおおおおお!」という声が上がる。もちろん俺も一緒になって歓声を上げた。

 

「それではまず初めに、神楽都市議長にご挨拶をしていただきます。」


 そう言われて出てきたのはおばあちゃんだ。この挨拶以外にもおばあちゃんは大会中はいろんな人と会うらしい。そのせいで毎年この時は独りぼっちだった。


 正装をして真面目な顔つきでおばあちゃんは話し始める。


「皆様、おはようございます。まずは今年もこの武闘会が開催できることを素直に喜びたいと思います。年々この高山都市の力も増してきており、ひとえに皆様の努力の賜物だと考えております。今日から始まるこの武闘会を存分に楽しんでいただけたら幸いです。」


 おばあちゃんは最後に礼をして締めくくった。観客からは拍手が巻き起こる。


「神楽都市議長ありがとうございました。ではこれより、武闘会一日目を開始します!」


「「うおおおおおお!」」


─────────────────────────


 俺たちの目の前ではギフトを使った激しい戦いが繰り広げられる。


「あーっと御門選手が炎の斬撃をモロにくらってしまった!!戦闘不能!勝者は納戸選手です!」


周りの観客からは「うおおおおおお!」「派手でよかったぞ!」「惜しかったな!」という声と共に拍手が送られる。俺たちも拍手を送る。


「さっきの炎の剣、格好良かったね。」


 横にいる針理に話しかける。


「すごい面白い。いろんなギフトが見れて、楽しい。」


 真白も頷いている。二人とも楽しんでくれているようだ。


 俺たちはそのまま楽しく試合を観戦した。


─────────────────────────


 午後になるとトーナメントも強者ばかりが残っており、更に白熱してくる。


「それでは準決勝前に1時間の休憩に入ります。」


 休憩のアナウンスが流れて周りの熱気が少し落ち着いていく。


「針理、真白をお願いしてもいい?トイレ行きたい。」


「わかった。いってらっしゃい。」


 針理は快諾してくれたのでマントを少し広げて、真白に移動してもらう。針理のマントを被って、真白が顔を出す。上手く移ってくれたようだ。


 俺は立ち上がって観戦ルームから出て、トイレに向かう。さほど混雑もしておらず、すぐに用を足して外に出る。


(何か軽食でも買っていこうかな。)


 俺は一旦会場の外に出て、何かちょうどいいものはないかと出店を周る。焼き鳥、から揚げ、卵せんべい、アメリカンドック、色々なものが売られている。


 出店に気を取られていると前から来た何かにぶつかってしまう。


 前を見ると金髪のショートカットの女の子が倒れていた。


「うわっ。ごめん!前見てなかった。大丈夫?」


「痛ったー。こっちこそごめんね。急いでて…って何その手!すごい!ちょっと見せてもらってもいい?」


 女の子は立ち上がるとタッグに興味深々のようで、じーっと見てくる。


「見るだけならいいよ。」


 俺は道路脇に移動して金髪の女の子にタッグを見せる。


「ふーん…筋電義手、いやもっと複雑になっている。バッテリーも無いみたいだし、どうゆう仕組み?それにこの機構…普通に義手としてなら必要ない。なんでこんなのついてるの?いやこんな精巧に作られてるのに、無駄な部分なんてあるはずがない。なら…義手以外の用途で使う機構?こっちにも似た部分がある。ならこことここは連動する?うーんよくわかんないな。でもおそらく────」


 女の子はすごい勢いで独り言を言いながらタッグを見てくる。金髪の人はよく見かけるが、この子は染めているのではなく、元から金髪のようだった。歳は俺より少し上くらいだろうか。だが、見ただけで的確にタッグを解析している。相当頭がいいのだろう。独り言を言っている女の子に話しかける。


「それより急いでいたみたいだけど、ここに居ていいの?」


「え…?あーっ!そうだった!ねえ君!今時間ある?義手もっと見たいし、できれば一緒に来て欲しいんだけど…?もちろんお礼もするから!」


「えーっと、ちょっと待ってね。」


 俺はリンクを操作してメッセージアプリを開き、針理に連絡を入れておく。とりあえずこれでいいだろう。


「ちょっとならいいよ。」


 俺の返答を聞いて女の子笑顔になる。


「マジで!?やったー!うちセラ・天遣(セラ・アマヅカ)。8歳よ。好きに呼んでいいわよ。」


 そう名乗った女の子は左手を差し出してくる。名前からして日本人ではないのだろうか。そういえばまだ自己紹介をしてなかった。


「俺は神楽霧刃。5歳だ。セラ、よろしく。」


 俺も自己紹介をして俺は左手を差し出して握手をする。すると急に引っ張られてセラが走り出す。


「行こう霧刃!こっちこっち!」


 セラに手を引かれながら人込みの中を走り出す。


「人多いから走ると危ないよ。」


 一応注意だけして一緒に走り出す。


「今度は大丈夫!ほら行くよ!」


 俺はセラに手を引かれながら人ごみをかき分けて走った。

読んでいただきありがとうございました。

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