表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
都市の暮らし
48/66

連絡先

よろしくお願いします。

 私は両親の喧嘩する声で目を覚ます。ストレスから頭痛がして最悪な目覚めになった。時計を見ると12月の22日の7時だった。


「あんた何してるの!朝から酒飲むのやめなさいって言ったでしょ!」


「うるせえなあ!いいだろ別に!さっさと仕事行けよ!」


 うるさい声がリビングから聞こえてくる。私は自分の部屋から出て二人を無視して洗面所に向かう。顔を洗って髪を梳かす。身だしなみを整えた私は洗面所を出てリビングに隣接しているカウンターのキッチンに向かう。


 食パンをトースターにセットしてスイッチを入れる。その間に冷蔵庫からベーコンと卵とカットキャベツを取り出してフライパンをIHコンロで加熱する。少し油をひいてベーコンを最初に入れて、その後に上から卵を落とす。ベーコンと卵が焼けるいい匂いがしてくる。


 フライパンに蓋をして皿を二枚準備する。先にカットキャベツを乗せて少し待つとトースターからパンが焼きあがる。


 焼けたパンを皿に載せる。そして、次に焼けたベーコンエッグをカットキャベツが載っている皿に盛り付け、塩コショウを振る。


 私は自分の部屋に料理を運ぶ。その後コップに水を入れて再び部屋に戻ってくる。


 リンクからニュースの画面を出して席に座る。


「いただきます。」


 私はトーストを食べ始める。程よく焼けた食パンは嚙むたびにサクサクと音がする。僅かな甘味が口の中に広がっていく。


 私は少し笑顔になってニュースを見る。


「それでは次のニュースです。以前、高山都市の訓練室の一つで火災報知機が誤作動を起こしてスプリンクラーが起動してしまった事故なのですが、捜査に進展があった模様です。当時訓練室の中で炎系のギフトを使って訓練をしていた市民がいたようで、それに反応したのではないかとのことです。現在事故が起きた訓練室の封鎖は解除され────」


 この間のことは完全に事故として処理されたようだ。私たちは煤まみれだったし、実際に黒煙が訓練室から上がっているところを見た人もいる筈だ。だが、その声が放送されることは無い。私が犯された時もそうだった。


 私は食事を終えて食器を食洗器に入れる。そしてリビングのソファに座って酒を飲んでいる父親に話しかける。母親はすでに仕事に行ったようだ。


「お父さん。お昼のお金頂戴。」


 父親はだるそうにこっちを向いてリンクの画面を操作する。


「あー、昨日酒に使ったからねえわ。あのボンボンに恵んでもらえ。」


 そう言って再び酒を飲み始める父親。私はゴミを見る目を向けてから自分の部屋に戻る。机に置いてあった酒の量からなんとなく察していたが相変わらず最低だ。


「はぁ…」


 私はため息をついて服を着替える。頭痛がするが無視して学校に行く準備をする。


 手鏡を使って自分の自分の藍色の髪を見る。昔はこんな色じゃなかったが、あの両親と同じ髪色なのが嫌になって染めたのだ。生憎顔つきや体つきは似ていないのは助かった。さすがに整形できるような金は持っていない。


 私は肩にかかるくらいのセミロングの髪に触れるとラピスラズリが付いた髪飾りを右耳の上のあたりに着ける。右側だけ髪がまとめられて耳が見えるようになる。いつもこの左右非対称の髪型をセットする。


 リンクの時間を確認して玄関に行く。


「行ってきます。」


 返事が無いのはいつものことだ。靴を履いて学校に向かう。


(今日は霧刃にご飯分けてもらえるかな?)


 そんなことを考えながらスクールバスに乗って学校に向かう。今日は幸運なことに席が一つだけ空いていた。おまけに横は女子生徒だった。お昼代をもらえなかった悲しみが少し軽減される。少なくとも学校に着くまでの間はゆっくりできる。


 頭痛に耐えながら目を閉じて学校に着くのを待った。


─────────────────────────


 学校に着くと校門で声をかけられる。


「よお春夏。今日も可愛いな。」


 振り向くと胸への気持ち悪い視線を向けて、下種な顔をした柊がいた。


 私は笑顔を作って柊の右腕に抱き着く。


「奇遇だね。はじめくんに校門で会えるなんてラッキー♪」


 私は思っていることと真逆のことを言って、胸を柊の腕に押し当てる。柊はそれに気分を良くして腕を更に胸に押し当ててくる。


 頭痛が更に痛くなるが表情には一切出さない。この痛みにももう慣れてしまった。


 私はそのまま柊と一緒に教室まで行き、午前の授業を受けた。


─────────────────────────


 授業が終わってお昼になると、俺は一人で階段裏でギフトを使って屋上への道を繋ぐ。


 屋上にはすでに霧刃と真白が来ていた。


「お、今日は来たか。また辛そうな顔してるな。大丈夫か?」


 弁当箱と水筒が入った小さいバッグを持っている。霧刃の心配そうな顔を見ると少し嬉しくなる。


「おう。まあ、ぼちぼちだな。」


 俺は霧刃の左側に腰を下ろして手すりにもたれかかる。すると霧刃がこっちに弁当箱を差し出してくる。


「これは…」


 俺が困惑していると霧刃が弁当の蓋を開ける。その中にはおにぎりが二つ入っていた。


「春夏の分だよ。一つじゃ足りないだろ?」


 確かにそうなのだが、気になることがいくつもある。


「でも、今日俺が来るって知らなかっただろ。なんでドンピシャで用意できたんだ?もし俺が来なかったらどうするつもりだったんだ?」


 俺は霧刃にまくしたてるように問いただす。


「ここ最近毎日一人分多く作ってたんだよ。来なかったときは夜に雑炊にして食べてた。」


 霧刃は自分たちの分の弁当を開けておにぎりを取り出す。そして真白におにぎりを渡す。


「俺の為に…?」


 霧刃は目を泳がせながら言葉に詰まりながら答える。


「別に。雑炊なら少し米が硬くてもおいしく食べれるから。まあ、なんだ。春夏が来なければ俺の夕飯になるんだし…そう!先に夕飯の準備を済ませておくようなもんだよ。だから────」


 私は動揺している霧刃を見て呆然とする。


(俺のご飯…俺の為にここ数日ずっと作ってくれてた…俺の分…)


 霧刃の方を見るがすでにおにぎりを食べ始めている。柊と違って偉そうにしたり、見返りを求めてくる感じもない。


「ふっふふっ。そっか。俺の為に…」


 俺は嬉しくて霧刃の頭を撫でる。


「うお!?きゅ、急になんだよ?」


 霧刃が困惑しているが少し口元が笑っていた。その反応を見てもっとわしゃわしゃと頭を撫でる。


「んーん。霧刃ありがとな。すごい嬉しいよ。」


 俺もおにぎりを食べ始める。中には塩焼きの魚のほぐし身が入っていた。塩加減が絶妙でとてもおいしい。


 俺は霧刃にもたれかかる。この小さい背中が何故かとても頼れる背中に見える。


「なんだ疲れたのか?寝るなら食べてからにしろよ。」


「わかってるよ。」


 俺はおにぎりを食べながらこの平穏な時間を噛み締めた。


─────────────────────────


 なんか今日の春夏は調子がおかしい。いつもならご飯を食べながら愚痴を言ってくるのに今日は静かだった。そして、ご飯を食べたらそのまま寝てしまった。


 相当疲れていたのだろうか。お昼休みが終わるまでに起こせばいいだろう。


 俺は真白を撫でながら時間が過ぎるのを待つ。


 少しすると左側にいる春夏が目を覚ます。


「起きたか。もうすぐ昼休み終わるぞ。」


「…ん。じゃあ、そろそろ戻る。あ、そうだった。」


 春夏はリンクを操作してこっちに何かのデータを送ってくる。


「これ、俺の連絡先。毎日準備してくれてありがとうな。でも、これからはお昼なさそうな時は前日の夜に連絡するよ。父親にもこれからは前日にお金もらうようにするから。だから、お昼ない時はこれからもおにぎり作ってくれると嬉しい…」


 俺は春夏の連絡先を受け取って登録する。


「わかった。ちゃんと連絡しろよ。じゃないとおにぎり一つしかあげないからな。」


「助かる!じゃあ、またな!」


 春夏はそう言うと黒い空間の中に入っていった。おそらく春夏のギフトだろう。


「俺たちも戻ろうか。」


 真白が頷くのを見てバッグに弁当箱と水筒をしまって教室まで戻った。


読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ