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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
都市の暮らし
43/66

ストレッサー

よろしくお願いします。

 着替えを終えて俺達は訓練室に集合する。全員が集まったタイミングで先生が話し始める。


「それじゃあ、今日の訓練を始めますね。今日は教室で隣の席の人と二人ペアで剣の練習をします。自分の獲物がある人はそれを使ってください。無い人はいつも通り学校のものを使ってくださいね。」


 俺は真白とペアになる。


 俺達は能力を縛らなければいけない。綾女との約束で人前では結界以外のギフトは使わないということになっている。


 加速が使えないのはキツいが、結界だけでなんとかやり繰りするしかない。


 それと一番ヤバいのが真白との融合も禁止されていることだ。真白が自分の体を作り替えるのは禁止されていないが、都市に居る間は俺の左目は使えないだろう。


 戦力は、よくて七割減だ。


「それでは、お互いに向かい合って訓練を始めてください。ギフトの使い方も含めて、先生が一組ずつアドバイスをして回ります。」


 俺達は訓練室いっぱいに広がって、仮想戦闘システムに接続する。


 俺と真白は少し距離を開けて向かい合う。周りの奴らはみんなこっちをチラチラ見ている。


「真白、行くよ。」


 真白は頷いて、戦闘体になる。だが、いつものに比べるとなんか小さいし、足も昔みたいに細い。これが真白なりに力を抑えた結果なのだろう。果たして跳躍と加速を封印した俺とどちらが強いのか。


 俺達はお互いにエスカとカイナを構える。


 俺達は弱体化した状態で本気で切り結んだ。


─────────────────────────


 俺達はみんな霧刃と真白の斬りあいに見とれていた。とてもじゃないが初等部の1年生がやる動きではなかった。


 霧刃が深く切り込むと真白は間合いを完全に見切ってすれすれで避ける。そして、相手の攻撃に合わせてカウンター気味に攻撃をする。


 霧刃はそれを透明な壁で防ぐ。


 すごい戦闘技術だ。お互いに一歩も引かない。


 このまま中等部に行っても通用するのではないかと思うほどだ。


 だが、長く続いた戦闘の終わりは唐突に訪れた。


 真白が一歩後ろに下がろうとしたタイミングで、霧刃が真白の背後に透明な壁を作ったのだ。それによって真白は後ろに下がれなくなってしまう。バランスを崩した真白に霧刃がとどめを刺そうとする。しかし、そこで真白は両足を一瞬だけ消して真下に回避する。その後すぐに足を生やして霧刃の懐に入り込み、攻撃を命中させた。


「…俺の負けだ。やっぱり真白は強いな。」


 倒れた霧刃がそう言うと真白は霧刃の頭を撫でた。勝ったのが嬉しかったのか笑っている。


 父親の訓練を毎日見てきた俺には霧刃達が今までどれほど研鑽を積んできたのかよくわかった。それに純粋な剣の技術なら霧刃の方が上だ。


(すごいやつが入って来た。)


 霧刃について行けば俺はもっと強くなれるはずだ。俺は目標であるあの人にもっと早く近づけると確信する。


 彼に一番最初に声をかけてよかった。俺はペアの愛理に断って、霧刃に次の手合わせをお願いしに行った。


─────────────────────────


(勝てなかった。)


 俺の中に悔しさが溢れてくる。真白を守るくらい強くならなければいけないのに何という結果か。


 最後の一撃、完全に取ったと思った。戦闘体に縛りをかけている真白にあそこから回避する手段はないと確信していた。だが、真白は俺の予想のはるか上をいっていた。まさか戦闘体を部分的に解除してくるなんて考えもしなかった。完全に虚を突かれた俺は真白の攻撃に対応できずに負けてしまった。


 さっきの負けを噛み締めていると一真が話しかけてくる。


「霧刃、次、俺とやらない?」


「俺はいいけど、ペアって勝手に変えていいのか?」


 俺は立ち上がってエスカとカイナ拾う。


「うん。ペア同士がOKならいつでも変わっていいんだ。」


 問題がないなら俺としても断る理由はない。それに同学年の奴らがどれくらい戦えるのかも知っておきたかった。


「いいよ。やろうか。」


「やった。ありがとう。」


 俺は次に一真と斬りあった。


─────────────────────────


「霧刃ーもうちょっと手加減してよ。」


「手加減したら訓練にならないじゃん。」


 一真と話しながら俺達は午前の授業を終えて教室に戻って来た。一真との戦闘の結果は7割俺の勝利だった。一真も中々強かった。でも、透蜜の動きを見たことがある俺からすればまだまだ隙が多かった。


 時刻は十二時になる。昼食の時間だ。


 俺はあらかじめ用意しておいた弁当を机の上に置く。三人で朝作ったものだ。透蜜と綾女の元でみっちり修行した料理の腕は早速役に立った。


 楽しい気分で食事をしようとしていたところで、教室に怒声が響き渡る。


「おいおい、あれか。人モドキと異形種は?マジで二人ともバケモンじゃねえか。気持ちわりい。」


 教室の入り口を見ると俺達よりも大きい生徒が男が3人、女が2人、合わせて5人いた。さっきの口ぶりから俺と真白を馬鹿にしに来たのだろう。クラスも違うのにご苦労なことだ。


「おい、なんとか言えよバケモン。気持ち悪いなさっさと死ねよ。」


「やれやれ、ほんとキモいよね。なんで髪白いの?あっ異形種だからか、気づかなくてごっめーん。やれやれ、ほんとキモいな。」


 クラスの奴らはみんな黙り込んでいる。その中で更衣室で突っかかって来たあいつらはニタニタと笑っていた。恐らくあいつらが呼んだのだろう。


 俺は自分と真白の周りに結界を発動する。三重の透明な立方体が俺達を包む。あのサギルが最後に使ったやつと同じのを三重にして強化したのだ。これでも突破されたら真白に窓から飛び降りてもらおう。


「おいなんだよこれ。出てこいや!人間と同じもの食べてんじゃねぇよバケモンが!さっさとこれ消せよ!」


「ねえ、はじめくん。私異形種こわーい。」


「私もこわーい。」


「やれやれ、仕方ないな。やれやれ────」


 そう言って藍色の髪の女と金髪の女たちが「やれやれ」と言っていた一人の男に抱き着く。抱き着かれた男は非常に気持ち悪い顔をして悦に浸っていた。


「いただきます。」


 外野がうるさいが俺と真白は弁当を味わって食べる。今日は登校初日なのもあってハンバーグを入れた豪華なやつにした。米も擬人之塔から持ってきたやつなのですごくおいしい。


「今日のご飯もおいしいねぇ。」


 真白もこっちを見て頷く。


 それを見てさっきの5人が更に怒り出す。


「おい無視してんじゃねえ!」


「ぶっ殺すぞ!」


「やれやれ、さすが異形種。言葉も通じないか。」


「私たち無視するとか何様のつもりなわけ?」


「ね。本当にウザい。」


 そう言って持っている剣を振り回して、結界を攻撃してくる。周りからは悲鳴が上がった。


 この結界は魔力を込めればそれだけ強度が増す。今回は内側から順に強く作った。だが、こいつらは一枚目すら突破できていなかった。


(こいつら本当に何しに来たんだよ。)


 俺が弁当を食べ終わるまで5人は結界を攻撃し続けた。俺が弁当を片付けると、結界の1枚目が破壊された。もうすぐ昼休みも終わるというのに暇な奴らだ。だが、その5人の中で一人だけ後ろでリンクを操作して何かしている藍色の髪の女がいる。そいつはこっちに気づくとすぐに操作をやめた。


(なんだ今の…?)


 そう思っていると入り口から松田先生が怒った顔で入って来る。


「君達!ここは初等部1年の教室ですよ。用が無いならすぐに出ていきなさい!」


「やれやれ、招かれざる客が来たみたいだな。おいお前。今日のところは見逃してやる。だが、俺から逃げられると思うなよ。」


 そう言って5人は逃げていった。俺は結界を解除する。するとクラスのみんなが駆け寄って来た。


「霧刃大丈夫だったか?」


「あいつら初等部の3年生ヤバい奴らだよ。」


「真白ちゃん怖くなかった?何もできなくてごめんね。」


「霧刃くんすごいよ。よく喧嘩にならなかったね。」


「あいつらなんなんだ…そういえばこのクラスでも人モドキって言ってた奴いたな。おい、肥田(ヒダ)!あいつら呼んだのお前らだろ!」


 一人の男子がそう言って、肥田と呼んだ男子を指さす。松田先生が怖い顔で肥田に詰め寄る。


「優る(スグル)くんそれは本当ですか?」


 肥田は否定する。


「違いますよ。僕があいつらを呼んだ証拠でもあるんですか?」


 おまけに開き直っていた。滅茶苦茶な奴だ。そこに一真が声をあげる。


「でも、更衣室で人モドキって言ってたのは本当です。男子はみんな聞きました。」


 周りからは「確かに言ってたぞ。」とか「大きい声で言ってた。」とか「うわ、二人とも病気で苦労していたのに人モドキとか最低。」という声が聞こえてくる。クラスの大半は俺と真白を受け入れてくれたようだ。それが嬉しくてたまらない。


 松田先生が肥田に話しかける。


「優るくん。霧刃くんと真白ちゃんに謝りなさい。それは差別ですよ。絶対にやってはいけないことです。」


「はーい。ごめんなさーい。」


 全く謝る気が無い謝罪が聞こえてくる。こいつもなんでそんなに俺のことを嫌うのか。もうだんだん面倒くさくなってきた。


 俺は真白を背負ってヴァンパイアを持ち、肥田の横まで行く。


「なんだよ。もう謝っただろ。さっきの奴の話なら証拠出せよ。」


「証拠なんて要らねえよお前ら全員都市の外に出ろ。叩き斬ってやる。」


「!?」


 力を抑えるのはあくまでも勉強をしに来たからだ。目撃者がいなくなるのなら全力を出しても関係ない。


 俺がそいつらを睨むと先生が止めに入る。


「霧刃くん、落ち着てください。そんなことを言ってはいけませんよ。どうかここは引いてください。先生が注意しておきますから。」


「…わかりました。お前ら俺が気に食わないなら自分の力で仕掛けてこい。この腰抜けが。」


「な、なんだと…!」


「腰抜けって言ったんだよ。」


「お前っ!!」


 肥田が俺に殴り掛かってくる。


(遅い…)


 俺は横に1歩引いて避けると、肥田はその場で転んでしまった。地面に顔をぶつけて泣いている。


「話にならん…」


 俺はそう言うと自分の席に引き返した。


 俺のこれからの学校生活がこいつのせいで息苦しくなることは簡単に想像できる。


 俺はため息をついて次の授業の準備をした。


読んでいただきありがとうございました。

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