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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
都市の暮らし
42/66

学校

よろしくお願いします。

 俺は透蜜からもらった新品の服に袖を通す。今日から学校だ。必要な手続きはすでに済ませてあるのでもう通うことができる。


 俺達は1号室に集まっておばあちゃんが作ってくれた朝ご飯を食べる。久しぶりおばあちゃんのご飯に俺は泣きそうになってしまった。あまりにもおいしく、そして懐かしかったんだ。俺は泣きそうになるのを必死で我慢して朝食を食べきった。


「じゃあ、お父さんとおばあちゃん行くからな。忘れ物はするなよ。」


「行ってきますね。」


「「「いってらっしゃい。」」」


 お父さんとおばあちゃんを見送った後俺達三人はそれぞれ自分の部屋に戻って支度をする。といっても普通の服にいつも通り武器を装備しただけだ。後はジャージを鞄に入れる。持っていくものはこれだけだ。


「じゃあ、行くか。」


俺達は部屋を出て電子キーでロックをかける。横の部屋を見るとお姉ちゃんがいた。


「一緒に登校しよ。」


「わかった。一緒に行く。」


 俺達は昨日と同じように四人でビルを出た。


─────────────────────────


 学校に着くと昨日よりもたくさんの子供がいる。誰もが俺の腕の中の真白を見てくる。もうこれ以上ないくらい鬱陶しい。早々に帰りたくなってくるが知識を蓄える為に我慢する。玄関を過ぎると階段が見えてくる。


「私中等部だから。ばいばい。」


「いってらっしゃい。」


 針理は本当は15歳なのだが、12歳ということになっている。中等部から勉強し直したいそうだ。


 俺達三人は初等部だ。


「ここが職員室よ。私向こうのクラスにいるから何かあったらすぐに言うのよ。」


「わかった。いってらっしゃい。」


 俺はお姉ちゃんを見送って職員室の扉をノックする。


「どうぞ。」


 中から声が掛かったのを確認して扉を開ける。


「失礼します。今日から学校に通う神楽霧刃と神楽真白です。」


 学校に入るにあたって問題になったのが真白の苗字をどうするのか問題だ。みんなで話し合って真白が最後に俺の苗字を選んだ。個人的にはなんとも言えない感じだったが、本人が選んだのでみんな文句を言わなかった。


「ああ、霧刃くん。こっちこっち。」


 眼鏡をかけた若い優しそうな男の人が奥で手招きしている。横には椅子に座っている老人がいた。とりあえず二人の前まで歩いていく。


「初めまして。校長の坂井 博(サカイ ヒロシ)です。話は聞いています。今日からよろしくお願いします。そして、こっちにいるのが…」


「担任の松田 浩司(マツダ コウジ)です。よろしくお願いしますね。それじゃあもうすぐ始まるので教室に行きましょうか」


「よろしくお願いします。」


 坂井校長と松田先生か。とりあえず覚えておこう。俺は松田先生について行き、自分の教室に向かう。


 教室の前まで来ると松田先生が話しかけてくる。


「確認ですが、真白ちゃんは話せないんですよね?」


「はい。普段の生活は俺がサポートしてます。」


「わかりました。最初は大変かもしれませんが、困ったことがあったら先生に行ってくださいね。それじゃあ、先生が中から呼ぶのでその後に入ってきてください。」


「はい。」


 松田先生が教室のドアを開けて中に入っていく。ドアは開いたままになっており、何人か子供の顔が見える。


「おはようございます。今日はこのクラスで一緒に勉強する新しい友達を紹介します。それでは入ってきてください。」


 そう言ってこちらを手招きしてくる。


 肩に力が入る。あの嫌な目がまたたくさんあると思うと憂鬱になってくる。俺は小さく深呼吸をする。


「ふぅ…真白、行くよ。」


 真白が頷くのを確認してから俺は教室の中に入っていく。予想していた通り、目線が突き刺さる。


「それじゃあ、名前と好きなことを言ってください。」


 俺は手短に自己紹介を済ませる。


「神楽 霧刃です。こっちは神楽 真白です。好きなことは…あー、武器の手入れです。よろしくお願いします。」


 俺が言い終わると松田先生が拍手をしてくれた。その後に続いてクラスの人たちも拍手をする。


(なんだよ好きな事って。)


 そんなことを言うなんて聞いてないぞ。思わず「魂を食べる事です。」って言ってしまうところだった。


「武器もたくさん装備していますし、戦いが好きな子とは気が合いそうですね。この二人は最近まで重い病気で学校に来ることができませんでした。それと霧刃くんは左目が見えず、真白ちゃんは喋ることができません。注意して接してあげてください。みんな仲良くしてあげてくださいね。席は窓側の一番後ろです。前の大型モニターが見えない時は言ってくださいね。」


 この病院の話は完全ではないが嘘が入っている。その方が大人たちの都合がいいらしい。考えるのが面倒だったし、わからないことばっかり話されたので適当に返事したら決まってた。


「はい。」


 席は二人分の机がくっついて一つの大きな机になっている。そこに椅子が二つ置いてある。


「どっちがいい?」


 真白に聞くと通路側の右を指さした。俺は右の椅子に真白を下ろして、自分は窓側の席に座る。外の景色が見えるのはありがたい。


 ヴァンパイアを立てかけて席に座る。


 前に座っている男の子が振り返ってくる。


「俺、斉藤 一真(サイトウ カズマ)。よろしくな。その刀凄いな。」


 明るい茶髪に黒い目。短く切り揃えられた前髪に明るい表情。接し易そうな感じだ。


「よろしく一真。これ、俺の中で一番の武器なんだ。」


 ヴァンパイアは実際凄い。普通刀や剣は動物を斬ると血が付いていく。それが何回も重なると全然斬れなくなってくる。血や油で刃が鈍らになってしまうのだ。エスカとカイナは軽く振ればすぐに血を振り払えるが、それでも完全にはとれない。その厄介な血をこの刀は勝手に吸ってくれる。切れ味も落ちないし、魔力を込めれば刀身も伸ばせる。まさにレガシィとして申し分ない性能をしている。


(あの少佐さんには申し訳ないが、これからも使わせてもらおう。)


「俺も刀好きなんだ。かっこいいよな。でも使えるの?」


「ううん。持っているだけだよ。大事な武器なんだ。」


 実際俺一人では使えないので嘘は言っていない。だが、手元に置いていないと落ち着かなくて持ってきてしまった。盗まれると取り返しがつかないので都市では目の届くところに置いておくつもりだ。警戒のし過ぎかもしれないがこれは俺の初めて手に入れたの武器だ。絶対に失くしたくなかった。


「それじゃあ、一時間目は訓練室で戦闘訓練です。更衣室で着替えて移動してくださいね。」


 そう言うと松田先生は教室から出ていく。クラスのみんなが立ち上がって移動し始める。


「霧刃、俺達も行こう。更衣室まで案内するよ。」


 一真も着替えを持って立ち上がる。俺も着替えの入った鞄を持って、真白を抱きかかえる。


「頼む。まだどこに何があるのかよくわかってないんだ。」


 歩きながら一真と話をする。どうやら彼の父親も防衛隊員のようだった。なんとなく親近感が湧く。


 更衣室は男女で分かれていた。ちょっと心配だが、真白を降ろして一旦分かれる。


「着替えたらここで合流しよか。」


 真白が頷いて女子の更衣室の方に歩いていく。更衣室は扉は無く、通路が入り組んで外からは見えない造りになっている。


 俺も更衣室の中に入ってジャージに着替える。着替えている間一真がこっちを見てくる。


「霧刃って結構鍛えてるね。」


「え?そんなことないと思うけど…一真と同じ位じゃない?」


 俺は自分の体と一真の体を見比べる。若干筋肉が多いかもしれないが、俺にはほとんど同じに見える。


「俺と同じなのがすごいんだよ。本当に病気だったの?」


 こんなことで噓がばれる訳にはいかない。俺は何とか誤魔化す。


「病気の時はずっと寝たきりだったから、治ってから頑張って鍛えたんだよ。」


「そっか。ずっと気になってたんだけどさ、真白ちゃんって髪白いし、下半身ないけど大丈夫なのか?病気の後遺症とか?」


 一真が心配そうな顔をしている。どうやら本気で心配してくれているようだ。


 気が付けば周りの男子たちもこっちを見ている。俺の言葉を聞き逃さないようにしているだろうか。


「そうなんだ。昔は俺よりもひどい状態だったんだ。でも、今はギフトのおかげでなんとか生きていけるらしい。だからみんな、真白には優しくしてあげて欲しい。」


 俺は周りに向かって頭を下げる。今言ったのは全部その場で考えた嘘だ。だが、病気のせいにしておけば真白に対する意識は”怖い”から”可哀想”に変わっていっていくはずだ。


 周りからは「そうだったのか…今まで苦労したんだな。」とか「最初は異形種かと思ったけど病気のせいだったんだな。」という言葉が聞こえてくる。この話が広がってくれれば真白を変な目で見る輩は減るだろう。


 だが、その中で何人かの異を唱える者が出てくる。


「嘘つくんじゃねぇ!あんな化け物、異形種に決まってるだろ!俺は騙されないぞ。異形種と仲良くするなんて最低な奴だ!」


「そうだ、同じ苗字だしお前も異形種だ!この化け物!」


 すごい嫌われようだ。俺は彼らに何かした覚えはないのだが、なぜこんなに嫌われてしまったのか。


「気にしなくていいよ。いつもあんな感じで誰かと喧嘩してるんだ。それより、同じ苗字ってことは霧刃と真白ちゃんって兄弟なの?」


「いや、たまたま一緒なだけ。血も繋がってないよ。」


「へぇーそうなんだ。」


 俺と一真が軽い雑談をしているとさっきの奴らがまた話しかけてくる。


「おい、無視してんじゃねぇよ化け物!左目も無い人モドキが!」


 そいつらが叫んでいると入り口から松田先生が入って来る。


「なにかありましたか?大きな声が聞こえましたが?」


 全員が押し黙る。さっきまでの大声はどこへ行ったのか。すっかり静かになってしまった。


「俺が真白が病気のせいで今までどれだけ苦労したかを話していたんです。みんなとても優しくて助かります。」


「そうでしたか。それはよかったです。みなさんも真白ちゃんのことは学校の友達に共有してくださいね。」


「「はーい。」」


 さっきまで文句を言っていた奴らは返事をしなかった。世の中には分かり合えない奴が居ると綾女から聞いてはいたが、俺にとってはあいつらになりそうだった。


─────────────────────────


 霧刃と別れて女子の更衣室に入る。更衣室の中ではクラスの女子たちが待ち構えていた。


 私はどうするか迷う。


(もしも攻撃してきたら戦闘体になって迎撃するか。)


 だが、私は人の体を手に入れるまではこの体で生きていくと決めている。必要のない時に戦闘体になるのは避けたかった。


 それと普通の生活がしたいなら、力を抑えるように綾女と透蜜から言われた。


「力は徐々に解放していきなさい。あくまでも自然に少しずつ上げていくのよ。」


 私は少し考える。


(どうしよう、キリハもいないし。)


「ねぇ。」


 その女子の中の一人が話しかけてくる。私は身構える。


「…真白ちゃん、て呼んでもいい?」


 どうやら敵意は無いようだ。


 私は頷いてみる。


「私、愛理(アイリ)。よろしくね!」


「わ、私、由衣(ユイ)。よろしく!」


「私は────」


 周りの女子が次々に名乗っていく。そんなに急にたくさん言われても覚えることができない。


 あたふたしていると私は愛理に抱き上げられて、他の女子に揉みくちゃにされる。


「かわいいー。私真白ちゃんのこと霧刃くんみたいに抱っこしてみたかったんだー。」


「髪すごいサラサラ。なんでこんなに真っ白なの?」


「ちょっと真白ちゃん喋れないんだから、はいかいいえの質問じゃないとだめよ。」


「そっか真白ちゃんごめんね。」


「それより、肌もすべすべだよ。なんでこんなに綺麗なの?羨ましいー。」


 私は完全におもちゃにされていた。




読んでいただきありがとうございました。

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