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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
都市の暮らし
38/66

ただいま

これから少しずつ回していきます。


よろしくお願いします。

 お父さんと再会してから約1月が経った。その間に中央都市に行ったり、都市で暮らす為にいろんなルールを覚えたり、お金について勉強した。針理が「物価は変わってないんだ。」とかよくわからないことを言っていた。


 今日は9月29日。俺が高山都市に帰る日だった。俺は透蜜から腕輪を受け取る。


「これは守護者の証です。所有者以外には使えないようになっています。絶対に失くさないようにしてくださいね。一応カモフラージュの為に色は変えておきました。」


 透蜜と綾女が持っているものと同じものだった。


「ありがとう。大事にするよ。」


 透蜜が少し悲しそうな顔をする。


「これから寂しくなりますね。嫌なことがあったらすぐに言うんですよ。足りないものがあったら何でも言ってくださいね。」


「ちゃんと毎週帰って来るから大丈夫だよ。」


 綾女が俺を呼んでくる。


「霧刃、そろそろ出るわよ。」


 俺は透蜜を抱きしめる。


「透蜜、色々ありがとう。武器も全部ちゃんと手入れするね。」


 透蜜も俺を抱きしめてくれる。透蜜には本当にお世話になった。俺は透蜜のおかげで強くなれたし、刀以外の武器は全て透蜜にもらった。最後には料理も教えてくれた。


「はい。特にタッグは丁寧に扱ってくださいね。異常があったらすぐに言うんですよ。」


 俺は透蜜から離れる。


「じゃあ、行ってきます。」


「いってらっしゃい。」


 俺は真白を背負ったままクイちゃんの背中に飛び乗る。針理は前は真白に乗せてもらっていたが、今は一人で飛び乗れるようになった。体の動かし方を思い出してきたらしい。


 俺達はクイちゃんに乗って擬人之塔を出発した。


 俺達は高山都市の入り口から少し離れたところに降りる。針理も大きな銃を背負って歩いている。他の装備は全て擬人之塔に置いてきた。持ってきたものは変形する銃で、どの距離でも対応できると言っていた。


「あそこが入口よ。」


 綾女が森の中にある少しくぼんだ場所を指さす。奥の方に金属製のゲートがあって防衛隊員が守っている。そこにお父さんの姿もあった。


「じゃあ、私はここまでよ。頑張ってね。ちゃんと帰ってくるのよ。」


 俺はしゃがんでくれた綾女に抱き着く。


「わかってる。綾女もありがとう。俺を擬人之塔に連れてきてくれたこと感謝してる。」


 綾女にもお世話になった。移動は綾女に頼ることが多かったし、地図の見方や作戦の立て方も教えてもらった。本当にありがたい。


「霧刃と一緒に戦えるようになるの、楽しみにしてるわね。」


 俺は綾女から手を離す。


「行ってきます。」


「いってらっしゃい。」


 俺達三人は入口に近づいていく。お父さんが待っている。


「よく来てくれた。守護者霧刃。真白。針理。高山都市を代表して歓迎させてもらう。ここの指揮官を務めている神楽章斗という。」


「歓迎ありがとうございます。高山都市では学ぶことがたくさんあるとと思っています。これからよろしくお願いします。」


「よろしくお願いします。」


 俺とお父さんはまるで初対面のような他人行儀な挨拶をする。


「それでは都市を案内した後、滞在する部屋にご案内します。ついて来てください。」


「恐縮です。」


 俺はお父さんについて行く。これは前から決めていたことだ。俺達は守護者として極秘にこの都市に招かれている。日本海側と太平洋側の都市を繋ぐ要所を守る、という建前だ。本当は高山都市で普通の暮らしをして勉強をすることが目的だ。将来は綾女と透蜜と一緒に擬人之塔を守るようにと中央都市に言われた。それまでは自由にしていいらしい。


 三重のゲートを抜けて都市の中に入る。


「おお。」


 その光景に俺は驚く。様々なビルが立ち並び、たくさんの人が行き交っている。中央都市でも見た乗物からたくさんの人が降りてくる。あれは路面電車と言ったか、あれにも一度乗ってみたいものだ。中央都市に比べれば小さいが人の活気に満ちているいい街だ。


 その後都市のいろいろな場所を見た後でとある部屋に通される。そこには怖い顔をした人たちが机を囲んで座っていた。全員防衛隊員のようだ。


「全員礼。」


 お父さんがそう言うとみんな立ち上がって礼をしてくる。俺はお父さんと一緒に立っていた。


(俺も礼した方が良かったのかな…?)


 こんなことやるなんて教えてもらってなかった。みんな俺達を見ている。視線がめっちゃ怖い。


「今日から高山都市に招いた守護者たちだ。彼らはこの都市で普通の暮らしをしてもらい、その環境を中央都市に報告してもらうことになっている。守護者として公表はしないことになっている。防衛部隊の建物に出入りすることもあるかもしれないが気にしないでくれ。」


 座っているおっさんが声を上げる。


「そうは言われましてもね。まだ子供じゃないですか。特にその白いのは人間なんですか?」


 俺は嫌な気分になる。わかっていたことだが、真白はいい目では見られていないようだった。


「彼らは中央都市に認められた。その戦闘力も素性も保証されている。その点については心配はいらない。それに子供だからこそ都市についての意見も、率直なものが得られるだろうとのことだ。」


 お父さんがズバッと答えてくれた。今日のお父さんはなんだかすごい格好いい。


「わかりました…」


 その答えを聞いておっさんが引き下がる。


「他は無いか?」


 誰も何も言わない。


「ないなら会議はこれで終了にする。礼。」


 全員が立ち上がって礼をする。これは会議だったらしい。俺の朝の雑談よりも短い会議だった。


 俺はお父さんについて部屋を出る。次は俺の家に行くはずだ。一旦建物から出て車に乗って大きなビルに移動する。エレベーターを使って上に行く。20階の1号室がお父さんの家だった。横の2号室が一応俺達の滞在する部屋ということになっている。普段は真白と心針理が使うだろう。荷物はすでに届いている筈だ。


 お父さんが鍵を二つ渡してくる。一つは2号室のものだろう。もう一つはどこのだろうか。


「こっちの鍵は1号室のものだ。好きな方で暮らすといい。」


 お父さんがそう言ってくる。


「ありがとう。」


 俺は鍵を胸のポケットにしまう。お父さんが1号室の扉を開ける。


「真白ちゃんと針理ちゃんはようこそ我が家へ。霧刃は、おかえり。」


 ここが俺の家。以前は病室から出れなかったのであんまり実感が湧かない。


「お邪魔します。」


「…ただいま。」


 俺は初めて自分の家に帰って来た。





読んでいただきありがとうございました。

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