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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
欠けた者達
36/66

邂逅

よろしくお願いします。

「ここもハズレか。クソ…どこに居るんだ…」


 俺は自分の部隊を引き連れて梓川周辺を調べていた。今は8月20日の昼。調査が始まって2日目になっていた。昨日は安全確保のために全員で大正池周辺の調査をした。だが、近くに人がいたような痕跡はなかった。


 俺は少し焦っていた。


「ねぇ、あなた達、異形種の調査をしてるのよね?それにしてはやけに細かいところまで見るわね。」


 極めつけはこの黒井綾女という守護者だ。一応戦闘服を着ているがさっきからただ歩いているようにしか見えない。本当にちゃんと調べてくれてるんだろうか。


(それかどうする、こいつにもう全部話しちまうか?)


 俺が自由にできるのはせいぜい自分の部隊の人間だけだ。この梓川と明神池までゆっくり調べていたら、あっという間に時間が無くなってしまう。だが、もし協力を得られなければ章斗の立場が危うくなるかもしれない。そのせいで俺は未だに話せずにいた。


 俺はゴーグルに表示されている時間を見る。そういえばちょうど昼時だがまだ昼食を食べていなかった。


「一旦休憩にしましょう。あんまり根を詰め過ぎてもよくないですから。」


 俺がそう提案するとすぐに返事を返してくれる。


「いいわよ。お腹が空いてちゃ何もできないものね。」


 俺達は昼食を兼ねて休憩を取ることにした。


─────────────────────────


 火を起こして水を煮沸する。部隊のみんなは支給された携帯食料を食べている。そんな中で黒井は手持ちのおにぎりを食べ始める。


「あなた達、それで午後ももつの?」


 そんなことを言われてもどう答えればいいのかわからない。


「何と言いますかね…これしかないもんで、仕方ないんです。」


 俺達だって食べれるのであれば美味しいご飯を食べたいが、かさばるので外では我慢するしかない。


「それにしても綾女さんはどんなギフトを持っているんですか?」


 場を和ませるためか依田が話を振ってくる。


「秘密よ。手の内は信用した人にしか見せないのは当然でしょ?って、あら?ちょっとごめんなさいね。」


 何か黒井が腕輪に話しかけている。おそらく通信機になっているのだろう。


「はぐらかされちゃいました。」


 依田がこちらに話しかけてくる。


「当たり前だ。そんな危ない橋は渡らなくていいから。みんなと喋っていてくれ。」


「了解です。」


 俺は綾女の通信に耳を澄ます。盗み聞きになるがどんな通信しているのか気になった。


「へぇー、もう終わったの。私も後で見せてもらうわね。とりあえず、おめでとう。」


(何の話だ…?)


 さすがに通信機の向こうの声までは聞こえないので、何のことを話しているのかわからない。


「ええ。え?ええ!?こっちに来るの!?だめよ!帰りなさい。今日はだめなの。もう上にいる!?ウソでしょぉ!?ちょっと、ほんとにちょっとだけ待ってね。」


 急に大声で驚き始める。俺達は何が起きてるのかわからず、全員黒井の方を見ている。


「あの、隊長さん。人が増えそうなんだけどいいかしら?もちろん調査には協力させるわ。」


 どんな緊急事態が起きたのかと思えばそんなことかと肩透かしをくらう。


「別に問題ありませんよ。その人たちは今どこにいるんですか?」


 それに人手が増えるのならこっちとしても願ったり叶ったりだ。人手はいくらあってもいい。


「ありがとう。すぐに来るわ。私よ。ええ、来てもいいわよ。言っとくけどちゃんと大人しくしておくのよ。…はぁ透蜜はどこに行ったのよ。後で問い詰めてやるわ。」


 何故か不機嫌になっているようだ。やはり何か問題が起きたのだろう。まあ、こっちには関係なさそうなので無視しといていいだろう。


「おー--い!あーやーめー!!」


 上の方から声がする。何か羽が生えた人型の何かが降ってくる。


「大丈夫。私の仲間よ。」


 一瞬部隊の奴らに指示を出そうと身構えたがその言葉を聞いて安心する。


「そうですか。どんな人か楽しみです。」


 俺はその後、降りてきた人の顔を見て度肝を抜かれることになる。


─────────────────────────


「クイちゃん、ありがとうね。」


 俺はクイちゃんにお礼を言って真白と融合する。透蜜はさっき用事ができたとか言って一人で帰ってしまった。透蜜が綾女と合流しろと言っていたので、とりあえずクイちゃんにお願いしてここまで連れてきてもらったのだ。


 背中から大きな白い羽が出る。自分の意思で飛ぶのなんて久しぶりだ。


「針理も掴まって。」


 俺は針理に手を差し伸べる。


「わかった。」


 針理は直ぐに俺の腕の中に抱きかかえられる。針理の銃は透蜜が一緒に持って帰ってくれた。


「じゃあ行くよっ。」


 俺はクイちゃんから飛び降りる。凄い勢いで落下していくが、翼を羽ばたかせて宙を舞う。


「これ楽しい。」


「でしょ!真白に感謝だね!」


 俺は川の側に綾女と何人かの人を見つける。服装から推測するに防衛隊員だろう。


「おー--い!あーやーめー!!」


 綾女が手を振ってくれている。


 俺は上手く勢いを落としていき、綾女の横にふわりと着地する。針理をゆっくりと地面に降ろす。


「ただいま。」


「ただいまです。」


 綾女が呆れたような表情でこっちを見てくる。


「おかえりなさい。言っておくけど、本部には絶対に連れて行かないわよ。あと今日の調査が終わったらすぐに帰るわよ。」


「わかった。」


 周りを見ると防衛隊員の人達がポカーンとしていた。その人たちの中に見覚えのある顔を見つける。


「あれ、海おじさんじゃん。こんなところで何してるの?」


「…………」


 一体どうしたんだろうか。この人は昔にお父さんと一緒に病室に何度か来てくれた人だ。お父さんが「カイ」って呼んでいたので、俺も勝手に心の中で海おじさんと呼んでいた。


「…お前、霧刃、か?」


「そうだけど…どうしたの?」


 俺は真白との融合を解除する。真白が背中側に出現する。


「今の奴は…そうか…そうかっ。」


 海おじさんは俺をいきなり抱きしめてくる。それにどうやら泣いているようだった。


「良かった。生きていてくれて、本当に良かったっ!」


「え?え?」


 驚いている俺をよそに勝手に話が進んで行く。


「相良隊長。もしかして隊長が言っていた子供ってこの子ですか?」


「その後ろにいるのが白銀鷲を倒したんですか。結構小さいですね。」


「そうだ。俺達の探し物は見つかった。一旦、拠点に戻るぞ。」


 海おじさんが他の防衛隊員と何か話している。そこに綾女が待ったをかける。


「ちょっと待ってもらえるかしら。この子は今私が保護しているの。それを勝手に連れていかれるのは困るわ。」


 俺は腕を綾女に引っ張られる。綾女はなんだかすごい怖い顔をしている。


「それは一体どうゆうことですか?」


 なんだか雰囲気がどんどん暗くなっていく。なんでみんなして怖い顔をしているのだろう。


「そのままの意味よ。この子は私達と同じ守護者よ。守護者は一人一人がとても貴重な存在。それをおいそれと渡すわけにはいかないわ。」


「霧刃が…守護者…?」


 海おじさんが驚いた顔をしている。


「先ほども霧刃達はたった三人で、サギルの街を壊滅させてきたばかりよ。」


 防衛隊員の人達が呆然としている。


「霧刃、今のは本当なのか?」


「本当だよ。さっき全滅させてきた。で、海おじさんはなんでここにいるの?」


 海おじさんがはっとして俺の質問に答えてくれる。


「俺達はお前の父親に頼まれてお前を探しに来たんだ。拠点にはお前の父親も来てるんだ。高山都市に帰れるんだぞ?」


「お父さんが?」


 お父さんが俺を探しに来てくれていたなんて。


(俺が都市から追い出された後も俺の事を考えてくれていたのか。)


 俺はすごい嬉しくなる。だが、まだ帰るわけにはいかない。


「…探しに来てくれたのは嬉しいけど高山都市には行けないよ。」


 海おじさんが固まってしまった。


「理由を、聞いてもいいか?」


「俺達は強くなるために今は綾女と一緒に居るんだ。でも、もう少ししたら正式に高山都市に帰れるようになるんだ。だから、今は行けない。」


 海おじさんが遠くを見るような目をしている。


「そうか。お前はもう、自分で動けるようになったんだったな。ちょっと寂しいぜ。だけど、今日は一緒に入れるんだよな?ちょっと待ってろ。今、章斗を呼んでみる。」


「え?お父さん来てくれるの!」


 俺は再び嬉しくなる。


「まあ、それくらいならいいわ。連れてかれそうになったら実力で何とかすればいいしね。」


 綾女から許しも出た。お父さんと話すのは初めてだ。話したいことは山ほどある。俺はお父さんが来るのをわくわくしながら待った。



 

読んでいただきありがとうございました。

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