全力の一撃
よろしくお願いします。
俺は山を歩いている。クイちゃんでは目立ちすぎるので綾女が別の虫を手配してくれた。その二匹には針理の銃を持ってもらっている。俺は二人に再度確認をする。
「もうすぐ狙撃地点に着く。その後は通信で発砲タイミングを合図するからそれまで待ってて。」
「わかった。」
「真白はガスパレードの掃射後に俺と融合して残った相手を倒す。」
背中にいる真白が頷く。
透蜜は後ろからその様子を黙って見ている。戦闘の記録は俺達のリンクを通してやるそうだ。特にこっちが何かする必要はないらしい。綾女はなんかやることがあるそうで、どこかに別の虫で飛んで行った。
「いた。あれがサギル。思ってたより、多いかも。」
狙撃ポイントに着いた俺達は二手に分かれる。透蜜は隠れて見ているらしい。
「それじゃあ、俺達は西側に移動するから。ギフト持ちを探しといてね。」
「わかった。見分け方、教えてもらった。任せて。また後でね。」
針理が右こぶしを差し出してくる。俺も同じように右手を握りしめて、こつんとぶつける。
(なんか針理がかっこいいな。)
「うん。また後で。」
そして、俺は岩陰に隠れながら少しずつサギル達に近づいていった。俺達は全員が灰色のフード付きのマントを付けている。岩場に紛れる為だ。人よりも目がいいサギルでもこの迷彩を見破るのは不可能だろう。
俺は自分の待機場所に着く。戦闘用ゴーグルの通信を入れる。
「針理、俺達も付いたよ。ギフト持ちは見つかった?」
「見つけた。街の南西部。土を操作してる奴が居る。撃っていい?」
俺は深呼吸をする。これからあのサギル達を皆殺しにする。生き物を殺すことにもう躊躇はない。
俺はこの戦いを乗り越えて自分の未来を勝ち取る。
「…よし。カウント行くぞ。十。九。八。七。六。五。四。三。二。一。ゼロ。撃て!」
針理がいる場所から光の筋が「ガアンッ!」という音と共に放たれる。狙い通りギフト持ちのサギルの頭を吹き飛ばす。血が辺りに飛び散り、周りのサギル達は何が起きたのか全く分からないようだった。
「目標命中。掃射に入る。」
「了解。こっちも準備する。真白、融合お願い。」
真白が頷いて俺と体を融合させる。俺は刀を抜いて飛び出す準備をする。針理がガスパレードによる掃射を開始する。あの「ガガガガガガッ!!」という凄まじい発射音と共にサギルが端から肉片になっていく。岩陰に隠れたりした奴もいたが、元々テクノの装甲を突破する威力だ。岩程度2秒ともたなかった。サギル達が悲鳴を上げている。
ここまでは作戦通りだ。だが、ここからサギル側が態勢を立て直していく。何かキューブ状の透明な壁が街を包んでガスパレードの攻撃を防ぎ始めたのだ。針理の魔力が限界になってガスパレードが撃ち止めになる。素早く針理はデスペラードと共に移動を始める。
すると、サギル達は透明な壁を消して針理めがけて走り出した。まだ数が残っている内に得意の突撃をしようということだろう。
(まだ20体くらいいるが、針理に近づけさせるわけにはいかない。)
俺は岩陰から飛び出て跳躍を使って大きくジャンプし、サギルの首を斬り飛ばす。続いて近くにいたサギルの両足を切り飛ばしていく。とりあえず今は敵の戦える奴の数を減らすことに集中する。機動力を奪えば針理は安全になる。先ほどの透明なキューブ状の壁も味方が近くて出せないのか怒りの表情をしている奴が1体居る。
「あいつが指揮官か!」
急いであいつを殺しに行きたいが、まだ動けるサギル達は15体くらいいる。俺は加速を使って次々にサギルを斬っていく。仕留める事よりなるべく針理の方に行かせないことが大事だ。もちろん殺した奴の魂は全て喰っている。
「あと10!邪魔っ!!」
一斉に5体が四方から飛び掛かってくる。俺は魔力を使って刀の能力を起動する。その場で回転するように刀に加速を乗せて振る。飛び掛かってきた5体は全て上下に両断された。
「あと5!」
「待たせた。止まってる奴からやる。」
針理から通信が入る。魔力が回復したのだろう。
「頼む!」
後ろから「ガアンッ!」とう音がしてその直後に肉が飛び散る嫌な音がする。
俺は刀を振り続ける。返り血が気持ち悪い感じだ。刀身は血を吸ってくれてるので切れ味が鈍らないのは本当に助かる。さすがはレガシィといったところだろう。サギルは俺に殴り掛かってきたり掴もうとしてくるがどれも俺には当たらない。全て仮想戦闘で見た攻撃だ。一体何回練習したのかわからないくらい体に動きを叩き込んだ。
掴みかかって来たサギルの心臓を貫いて刀を引き抜く。俺はギフト持ちのサギルと最後に向かい合う。
「あと、1体っ!!」
刀でサギルの右側から斬りかかる。だが、散々動きを見られたせいか避けられてしまう。
(こいつぅ…もう加速も全力で使ってるのに…)
俺は刀をサギルに向かって投げる。相手もさすがに予想外の攻撃だったのか一瞬回避するのが遅れる。投げた刀に意識を取られてこっちからの攻撃の反応が更に遅れる。
俺はエスカとカイナを持ってサギルの頭に斬りかかる。エスカの攻撃が当たり、相手の左目を切り裂く。だが、カイナは小さい透明な立方体に阻まれてしまった。サギルから蹴りが放たれ、少し後ろに飛ばされてしまう。
「くぅ…しまったっ。」
態勢を立て直してサギルの方を見ると、あの透明な立方体で自分を覆っていた。俺は両手の短刀で斬りかかるが全くダメージを与えられない。それを見て壁の中に居るサギルが笑う。俺がこの壁を突破できないと思っているのだろう。
「あと少しなのに…!」
俺は針理に通信を入れる。
「針理、悪いけどこっちに来てくれない?デスペラードを持ってきてほしい。」
「わかった。ちょうど雑魚も終わった。」
しばらくして針理がこっちに到着する。
「ふーん、籠城ね。というか、笑い方キモ…」
「多分俺たち全員で攻撃すれば突破できるはず。力を貸してくれ。」
俺はエスカとカイナを締まって針理に魔力回復薬を一つ渡す。
「了解。」
俺も自分で一つ飲んでアリアを構え、針理もデスペラードを構える。
「狙うのは頭だ。カウント行くぞ。五。四。三。」
カウントがゼロに近づくにつれて俺達はそれぞれの武器に魔力を込めていく。テクノには撃つことはできなかったが、これだけ時間に余裕があるなら溜め放題だ。俺は全魔力を注ぎ込む。サギルは自分が出した壁が壊れる訳が無いと思っているのか、まだ余裕の表情をしている。
「二。一。ゼロ。発射っ!!」
「ガアアアンッ!!」「ガイイイィン…」
二種類の凄まじい発砲音と共に超強化されたアリアの弾と、至近距離から発射された狙撃銃のデスペラードの弾が同じ場所に着弾する。二つの弾丸は透明な壁をいとも簡単に突破してサギルの頭を吹き飛ばした。このサギルは死ぬ瞬間まで自分の壁が防ぐと信じていたようだ。落ちてきたサギルの顔はあの嘲笑のまま固まっていた。
魔力を使い切ったことで融合が強制的に解除される。俺は意識を失わないように急いで最後の魔力回復薬を半分飲む。魔力が少しだけ回復し、意識もはっきりしていく。俺は残った半分を急いで気絶しそうな真白に飲ませる。
「真白、大丈夫?」
真白がゆっくり頷く。だが、少し顔が赤いような気がする。さすがに魔力を一度に使い過ぎた反動だろうか。真白も針理もこんな戦術ド素人が考えた作戦によく協力してくれたものだ。本当に感謝してもしきれない。
「ごめんね二人とも。相当無理させた。」
「別に大丈夫。こっちは被害ゼロ。あっちは全滅。上々。」
真白も針理の言葉に頷いている。
「そうか…良かった。二人とも本当にありがとう。このお礼はいつか必ずする。」
「気にし過ぎ。私達、仲間でしょ?これくらい、足り前。」
針理がそう言ってくる。
(仲間、か…)
今の今まで考えたことも無かった。真白以外に心の底から信じれる仲間なんて。でも、針理はこんなにも俺達を信じてくれている。なら、俺もそれに応えなければいけないだろう。それに針理には何度も背中を預けたんだ。
俺は針理に右手を差し出す。
「これからもずっと俺達の仲間でいてくれるか?」
その手を針理は迷わず取った。
「当然。これからも、よろしく。真白も、よろしく。」
俺の後に真白とも握手をする。どうやら真白も針理の事を認めたようだ。仲間が増えるのはとてもいい気分だった。まだ綾女と透蜜のことは心の底から信じれてないけど、以前よりは気を許すようになった。いつか、俺が彼女たちも仲間と呼べるようになる日が近い内に来るだろう。
そんなことを考えていると透蜜がこっちに歩いてきた。俺達の目の前まで来ると座って労いの言葉を掛けてくれる。
「三人共お疲れさまでした。その歳でこれだけ戦えれば中央都市も守護者として認めてくれるでしょう。本当によくやりましたね。」
「透蜜…ありがとう。…ん?守護者?」
俺は何か聞き逃せない単語を耳にする。一体何の話だろうか。
「あら、言ってませんでしたか?正式に私達の仲間になるってことは、守護者になるってことですよ。」
俺はポカーンとする。
(俺が、守護者…?あの英雄の?本当に…?)
俺は自分が一体何をしたのか理解するのにしばらく時間を要した。俺も守護者にっていうことは綾女と透蜜も守護者なのだろうかとか、二人は一体どこを守っているのかとかいろんな疑問が湧いてきた。
だが、それはともかくとして、サギルの街落としはこれにて完了になった。
やることが終わった俺達は綾女と合流することになったのだった。
読んでいただきありがとうございました。




