表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
欠けた者達
34/66

待ちに待った日

よろしくお願いします。

 神楽章斗は自分の電子モニターを確認し、部屋から出る。


 時間は霧刃達が訓練に明け暮れていた8月18日の昼頃まで巻き戻る。


─────────────────────────


(やっと終わったか。最高指揮官だから仕方ないが、やはり会議は疲れる。)


 俺は最後の会議を終えて自分の執務室に帰ってくる。


 いよいよ、乗鞍岳周辺の大規模調査は明日からだ。大分時間が掛かってしまったが、その分捜索範囲を大正池という場所を中心に半径20キロまで広げることができた。中心が乗鞍岳からズレたとこで、周りの人からはあれこれ言われたが今回は頑として譲らなかった。


 都市の戦力を自分の為に使うなんて最初は心が痛んだ。だが、自分の息子の生存が掛かっているんだ。きれいごとを言っている場合ではなかった。


 椅子に腰かけて引き出しからあの写真を取り出す。最後に霧刃が写った写真だ。海が持ってきてくれたあの日から毎日見ている。この写真を見ているとどんどん希望が湧いてくる。


 霧刃が座っている。手を差し出している。それがどれだけ嬉しいことか。もしかしたらもう歩けるようになってるかもしれない。喋れるようになっているかもしれない。そんなことばかりが頭をよぎり、自然と笑みがこぼれる。


「最近お父さんすごい楽しそう。ちょっと前まであんなに落ち込んでたのに。何かいいことあったの?」


 娘からもそんなことを言われてしまった。自分では顔に出さないようにしていたつもりなのだが、抑えきれていなかったようだ。


 娘にはちゃんと説明した。お前の弟が処分されたこと。もしかしたら動けるようになり、生きている可能性があること。今まで娘と息子は会わせたことがない。だが、息子が寝たきりで動けないことは教えていた。おばあちゃんと自分の力で無理やり都市の病院に置かせてもらっていたので、面会できる人間も限られていたからだ。


 海が何回か来たことがあったが、どんな手を使ってあそこまでたどり着いたのかは聞かなかった。あいつにはたくさんの人の繋がりがある。おそらくそれを使ったんだろう。


 そんなことを考えていると扉の外からノックされる。


 俺は写真をしまい。姿勢を整える。


「どうぞ。」


 入って来たのは海だった。あいつがここに来たということは何か朗報を持ってきてくれたに違いない。


「今、時間あるか?」


「ああ。ちょうど会議が終わったところだ。かけてくれ。」


 俺はソファに座るように促す。俺は逆さになっているマグカップを起こして、インスタントの緑茶を淹れる。二人分の湯を沸かして両手に持って海が座っているテーブルまで持っていく。


「ほれ。」


「ありがとな。」


 お互いに緑茶を飲んで一息つく。落ち着いたところで海が口を開く。


「今回の大規模調査な。中央都市が守護者を一人寄こしてくれることになった。」


「本当か!?」


 俺は驚きを隠せずに思わず立ち上がる。守護者は基本的に各要塞都市の主戦力だ。文字通り一騎当千の力を持ち、ギフトの種類によっては一人で都市の防衛全てをこなせる人もいる。


「一人だけとはいえよく許可が出たな…」


「まあな。あちこちのやつらに大分無理を聞いてもらったぜ。本来そいつは日本の最後の砦と言われる施設を管理しているらしい。どこにいるのかは俺も知らん。だが、実力は守護者の中でもトップクラスだそうだ。俺ができるのはここまでだ。そいつの配置はお前が決めてくれ。」


 そんなすごい人が駆けつけてくれるとは心強い。しかも、配置までこちらが指示を出せるとは。海には本当に感謝してもしきれない。


「海。いつも助かる。本当にありがとう。」


「それは全部終わってからだと前に言っただろ。それで、俺の部隊はやっぱり河童橋跡か?」


 俺はリンクから作戦地域の地図を出す。


「そうだ。綺麗な水が豊富に手に入る場所を考えれば大正池(たいしょういけ)、明神池(みょうじんいけ)、そして、付近を通る梓川(あずさがわ)だ。その守護者もお前に同行させる。このあたりの地理でお前に勝るやつはいない。」


「任せろ。今度こそ絶対に連れて帰ってやる。」


 海が右手を差し出してくる。俺は慣れた手つきでその手を掴む。


「俺は大正池の拠点から動けない。頼んだぞ。」


 俺達は笑いあって明日の出発に備えることにした。


────────────────────────


 そして、いよいよ作戦開始当日、8月19日になった。俺の前にはたくさんの防衛隊員が整列している。その中に海の姿もあった。隊長たちを先頭にこの都市の調査部門、研究部門、戦闘部門のエキスパート達を集めた。


「高山都市防衛部隊の諸君。よく集まってくれた。今日から3日間大正池を拠点として、周辺の大規模調査を実施する。配置は事前に通達したとおりだ。今回の作戦はあくまでも調査。異形種を発見してもその実態を把握することに専念すること。そして、各隊長の指示をしっかりと守るように。以上だ。それでは、作戦開始!」


「「「了解!」」」


 全員が一斉に敬礼をして返事をする。まず一日目は調査拠点を築く。本格的な調査は二日目からだ。その日に守護者も合流してくれるそうだ。


(待っていろ霧刃。絶対見つけてやる。)


 俺達は大正池を目指し高山都市を出発した。

読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ