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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
欠けた者達
30/66

帰宅

よろしくお願いします。

 俺は何かが頭に当たる感覚で目が覚める。目を開けると真白が俺の頭を撫でてくれていた。とても心地よい。ずっとこうしていたいぐらいだ。しかし、そうしてもいられないので俺は起き上がる。ここはあの車の中だった。俺は後ろの座席に寝かされていた。前から針理が顔を出す。


「あっ起きた。大丈夫?」


「うん。もうがたがただけど、なんとか。ここは?」


 俺はどこに出たのか知りたくて窓の外を見てみる。どことなく見覚えがある街の跡がある。


(あの廃墟は確か)


「瀬戸だよ。ここまで地下道が通っているの。」


「そうだったのか。でもちょうどよかったよ。俺達の家この辺なんだ。」


 あの廃墟の位置からして、もう少し南にいけば擬人之塔に帰れるだろう。それはそうとしてさっきから針理がチラチラこちらを見てくる。


「ねえ、私も付いて行っていい?私、戦力としてなら役に立つよ?」


「え、それはちょっと…俺には決められないんだけど…」


 針理がとんでもないことを言い始めた。そんなことを言われても俺はいわば居候させてもらっている身だ。俺の一存では決められない。


「お願い。私、行く当てが無いの。」


 ここまでお願いされると断るのも悪い気がしてくる。どうしたらいいかわからない俺は一つの案を思いつく。


「じゃあ、俺から家主に交渉してみるよ。通信ができる場所まで移動してもらってもいい?」


「わかった。どこまで行けばいい?」


 俺は擬人之塔の近くの森まで移動するように針理に頼む。あそこまで行けば戦闘用ゴーグルの通信機能が使えるだろう。俺達三人は車で街の中を突っ切って移動する。この車大きくて物もたくさん載せてるはずなのにすごい早い。それを当たり前のように操縦している針理もすごい。一体どこでそんな技術の事を身に着けたのだろうか。最初にガラスタンクの中にいたとこといい謎な事ばかりだ。


「針理はなんでそんなに強いの?」


 なんとなく話を振ってみると、針理は運転しながら答えてくれた。


「サイボーグ化っていう技術。私はその完成形。脳以外全てナノマシンでできてる。どれだけ壊れても時間を掛ければ治る。脳が無いと無理だけど。」


「へぇー。」


 だめだ何言っているのか全然わからない。サイボーグ化技術なんて聞いたことが無い。もしかして俺の歳なら知ってて当然の事なのだろうか。俺が馬鹿なことがこんなところで影響してくることになるなんて。もっと勉強をしておけばよかった。


(帰ったら綾女に聞いてみるか。)


「着いた。お願い。」


 俺は戦闘用ゴーグルの通信を入れる。すると、綾女に繋がった。


「霧刃?外に出てまだ2時間くらいしか経ってないわよ?なにかあった?」


「綾女。ちょっと緊急事態なんだ。クイちゃんで俺のいるところまで来て欲しいんだけど、いい?」


 俺はとりあえず綾女に来てもらうことにした。話をするならお互いちゃんと顔を合わせた方がいいと思ったからだ。


「いいわよ。そこにいる子に何かあるのね。少し待っていなさい。」


「う、うん…お願い。」


 通信が切れてしまった。だが、最後に恐ろしいことが聞こえてきた。


(なんで針理がいる事知ってるの…)


「とりあえず来てくれるみたいだから降りて待とうか。」


「ありがとう。」


 俺達はベルトを外して車から降りる。そして、5分くらいで擬人之塔の方からクイちゃんが飛んでくる。


「あれだよ。おーい。綾女ー。」


 針理はクイちゃんを見て呆然としている。その気持ちは俺もよくわかる。最初に見たときにどれほど怖かったことか。リュウグイヘビトンボのクイちゃんが車の横に降り立つ。その上から綾女が黒いドレスで現れる。俺と初めて会った時と違い、白いフリルが付いたドレスだ。これもよく似合っている。


「来たわよ。それで、何があったか教えてもらうわよ。」


「わかった。」


 俺は何があったかを全て綾女に話していく。旧名古屋に行ったこと。変な建物に入ったこと。そこで針理に会ったこと。テクノと戦闘になりここまで逃げてきたこと。


「まあ、概ね合ってるわね。それで、あなたが針理?」


「はい。お願いします。私、行く当てが無いんです。」


 針理が綾女に頭を下げる。綾女の返事はどうだろうか。俺はまるで自分の事のようにドキドキしながら待つ。二度も一緒に戦ったのだから俺としてもできれば一緒にいたかった。俺からすればもう他人ではないのだ。


「俺は針理に命を救ってもらった。だから助けてあげて欲しい。俺からもお願い。」


 俺も綾女に向かって頭を下げる。


「一つ条件があるわ。あなたの事を調べさせてもらってもいいかしら?もちろん命の保証はするわ。」


「…痛くないなら、いいです。」


 少し間を開けて針理がそう答える。それを聞いて綾女が笑顔になる。


「交渉成立ね。今日からあなたも私の部隊の一員よ。改めて、黒井綾女よ。よろしくね。」


 綾女が右手を差し出す。針理も右手を出して握手をする。


「御鍵 針理(ミカギ シンリ)です。よろしくお願いします。黒井さん」


「黒井はやめて。綾女がいいわ。」


 綾女が呼び方を注意した。俺は最初から綾女って呼んでたから何も言われなかったようだ。


「わかりました。綾女さん。」


「じゃ、この超大型トレーラー運んじゃうわね。」


 綾女は腕の通信機を使って家にいる透蜜と連絡を取る。


「透蜜、A-3を開けてもらえる?ええ、かなり大きいの。クイちゃんに運ばせるわ。後部屋を一人分お願い。じゃあまた後で。」


 綾女が通信を終えてクイちゃんに指示を出す。すると、クイちゃんは車に覆いかぶさるように移動する。


「じゃあ、みんなクイちゃんに乗って。そのまま帰るから。」


「わかった。真白は針理を運んであげて。」


 綾女がクイちゃんの顎を下げさせ乗り込む。俺は跳躍を発動して飛び乗る。真白は針理を掴んで翼を出して飛んでくる。


「じゃあ、行くわよ!」


 たった二回の戦闘で限界を迎えた俺は、クイちゃんに乗って早々に帰宅したのだった。




読んでいただきありがとうございました。

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