ギリギリの戦闘
よろしくお願いします。
戦闘を終えた俺達は吹き飛ばされたテクノの残骸を漁っていた。
「あっ。あったあった。砕けてなくてよかった。」
俺は瓦礫の中から魔石を探し出す。異形種の魔石なので大きさとしては中くらいだ。ギフトを持っている獣や異形種の魔石が一番大きいとされている。
「それ、私がもらってもいい?」
針理が魔石を指差して聞いてくる。
「いいよ。元々針理が倒してくれたやつだから。はいこれ。」
「ありがとう。」
俺は針理がに魔石を渡す。何に使うのか少し気になるが今は置いておこう。周りを見渡すと戦闘での銃撃で部屋の壁はボロボロになっていた。ここから早く出なくてはこの部屋は崩れてくるかもしれない。
「とりあえず危ないから早くここから出よう。」
「ちょっと、待って。こっちに施設放棄用の脱出経路がある。でも、装備をトレーラーに運びたい。手伝ってほしい。」
針理はテクノが壊して入って来た通路の反対側にまだ通路が続いており、そっちを指さした。装備というのはさっきのコンテナのことだろう。
「わかった。真白、融合お願いしてもいい?」
真白が戦闘体のまま歩いて来て、頷いて俺に触れる。真白と体が一つになり、力が漲る。
「すごい…霧刃、何者?後でちゃんと教えて。」
「わかってる。今は早く運んじゃおう。」
俺達はコンテナの側まで行く。
「私が引っ張る。後ろから押してほしい。」
「わかった。」
二人で力を合わせてコンテナを運ぶ。コンテナの下には車輪が付いていて瓦礫を避けながら押していく。暗い通路をしばらく進む。すると、さっきのような大きい部屋に出る。だが、さっきと違い、何か大きな乗り物が置いてある。
「あれで脱出する。コンテナは後ろから積み込める。」
「わかった。持っていくのはこのコンテナだけ?」
二人でコンテナを運び込む。荷台のスペースはまだまだあった。
「残りのコンテナも頼みたい。一つもロストしたくない。いい?」
「いいよ。それなら早く積み込もう。この姿でいれるのってあんまり長くないんだ。」
「わかった。急ぐ。」
そんなやり取りをしながら俺達は通路を往復する。何回もコンテナを運び込み、だんだんと魔力が無くなっていく。それに一つ一つの重さがかなりあって、この体ですら疲労が溜まってくる。針理の装備はどれだけ重いのだろうか。そんなことを考えながら最後の一つを運び終わる。
「はぁ、はぁ…これで…終わり…?」
「うん。ありがとう。ちょっと待ってて。最後の仕上げ、してくる。」
「いってらっしゃい…」
針理がどこかに走っていく。あんなに動いたのにまだ体力があるようだ。一体どんな訓練をしたらああなるのだろうか。俺達はすでに魔力を半分近く使ってしまっている。
「針理凄すぎ…真白、ありがとう。」
融合が解除され、二人に分かれる。俺は真白を抱きかかえ、荷台から降りる。この乗り物を改めて見てみるが本当に大きい。車輪が片側だけで10個はある。その車輪も一つ一つが俺よりも大きい。こんなに大きい乗り物は見たことがない。
「多分車だよね。こんなに大きくて動くのかな?」
抱っこしている真白も首をかしげている。普通に考えてこんなに大きいものが動くとは思えない。でも、針理がここに連れてきたということは多分動くのだろう。
俺達はこの大きな車を外から眺めながら、針理を待っていようと考えていた。
すると、急に「ドガアアン!!」という音と共に通路が爆破される。
「今度はなんだ!?」
そこには土埃を上げながら大きな人型の何かが立っている。
「嘘だろ…まさか…!真白融合!!」
俺はそう叫ぶと同時に急いで柱の陰に隠れる。だが、さっきのテクノと違い、あっという間に柱が銃撃で破壊される。
「うわあああ!ぐぅっ。くそっ!」
俺は吹き飛ばされながらも態勢を立て直し、土埃の中に隠れながら別の柱に隠れる。
「はぁ、はぁ…」
そいつは人型で全身を金属鎧で固め、大量の重火器を装備して立っていた。体長は3m以上あった。背中には大型の銃を4本背負っており、さっきの柱を吹き飛ばしたのはあれだと予想できる。俺の中に焦りが募っていく。
(一瞬しか見えなかったけど、間違いない。あいつ、援軍を呼んでいたのか。どうする?どうすれば勝てる!?)
俺達の前に現れたのはテクノの戦闘型だった。
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霧刃達と別れて、私は制御室に急ぐ。これだけ動いても一切疲れない。
(この体はやっぱりすごい。)
昔の私はベッドの上から動くことができなかった。私の親がこの研究所で一番偉い研究員だったおかげで、私はこうなった。最終試験機として様々な実験に協力することを対価に私は自由な体を手に入れた。だが、あることがきっかけで私はスリープ状態でずっと眠っていた。走っていた私はとある扉の前で止まる。そこのプレートには「制御室」と書いてあった。
(あの時のままだ。)
制御室に入った私は感傷に浸りそうになるのを抑えて、非常用電源のレバーを上げる。モニターに電源が入って施設が一時的に復旧する。私は急いで施設のとあるシステムを起動する。
ここの研究は人類の絶滅の危機に対する一つの解決策として立ち上げられたものだった。だが、研究データの流出によってその研究は最悪な形で達成されてしまった。これ以上間違えを犯さない為にもここの研究データをこのままにしておく訳にはいかない。
私はシステムの起動を確認して、急いで霧刃達のいるところに戻るために走り出した。
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俺は戦闘体に接近戦を仕掛ける。距離を開ければ遠くから銃撃によって削り倒されるだけなので、苦肉の策だがこうするしかなかった。
「うおおおおお!」
俺は加速を全力で使い、エスカとカイナで斬りつける。だが、どれだけ攻撃を叩き込んでも全く手ごたえが無い。テクノの持っている銃からは魔力でできたエネルギーブレードが伸びている。エネルギーブレードは湯水のごとく魔力を消費するはずなのに全く意に介す様子が無い。
(落ち着け。斬撃の速度はギリギリで見切れる。絶対に離されないようにするんだ。でも…)
テクノから放たれる斬撃を全て回避していく。この体でも受け止めきれない程の攻撃力だからだ。長い刀身から繰り出される斬撃をスレスレのところで回避する。当然一撃でももらえば致命傷だ。
だが、さっきからこの攻防をずっと続けていた。このままではいずれ魔力が無くなってこちらが負ける。
テクノには魔力融合炉という機関が全ての個体に搭載されている。それによって半永久的に魔力を生み出すことができる。毎秒作り出せる魔力量には制限があるので、こちらの魔力量が多ければ削りあいで勝負もできた。しかし、俺たち二人の魔力量ではそれをするには全く足りていなかった。
(このままじゃ、だめだ。何とかしなきゃ…!)
実をいうと倒せる可能性はあるのだ。それはアリアの火力上昇能力に残った魔力を全てぶち込んでの銃撃という手だ。だが、それをするには何とかしてアリアを抜いて構える時間がいる。それを許してくれる相手ではなかった。それに今はエスカとカイナで二本でギリギリ均衡を保てているのだ。それが一本になれば押し負けるのは明らかだった。
しかし、そこでずっと待っていた彼女が戻ってくる。
「霧刃!大丈夫!?」
「針理!急いでさっきの銃で攻撃してくれ!時間を稼ぐがもう魔力が持たない!!」
俺は息を切らしながら針理にそう叫ぶ。どうやら今の短い言葉だけで察してくれたようだ。
「待ってて。何とかする!」
その言葉を聞いた俺は最後の力を振り絞り、斬撃の手数を増やしていく。本当は頭部にある揺り籠を攻撃したいが、高くて攻撃が届かなかった。
「うおおおおおお!」
そして、ついに攻撃し続けた胸部装甲の一部に小さな亀裂が入る。その奥にエスカを突き刺す。だが、その中には更に硬い装甲があのか弾かれてしまう。
「これでもだめか!」
息が上がってきてだんだんと動きが鈍くなってくる。そこに魔力切れが近づいて来て更に追い打ちをかける。ゴーグルの魔力量は残り5%になっていた。
「はぁっ、はぁっ…」
(このままじゃ、死ぬ…!)
そう思ったその時、あの車の方から声がかかる。
「霧刃!私が撃ったら乗って!!」
針理はそう言うと同時にさっきとは違う銃をテクノに向かって撃ち込む。その弾丸はテクノの胸部の傷に命中し、通路の奥まで吹き飛ばした。俺も巻き込まれて飛ばされそうになるが、真白が翼を出してそのまま車まで飛んでくれた。
「二人とも助かった。」
「座席について。全速力で出る。」
俺は席に着いて。針理の真似をしてなにかベルトのようなものをつける。すると、次の瞬間とんでもない速度で車が走り出す。
「ぐぅぅぅっ…!」
体が後ろに引っ張られて苦しくなる。そのまま車は加速していき通路を突き進む。そして、長い長い通路を抜けてとうとう外に出た。空が見えたのと同時に後ろから凄まじい爆発音が鳴り響く。さっきの戦闘体からの攻撃かと思ったが、針理から安堵の声が漏れる。
「もう大丈夫。研究所ごと爆破した。あの機械人も多分死んだ。」
頭がボーっとする。車の速度を落としてくれたのか、苦しさが引いていく。そして、いよいよ魔力が限界になり、融合が強制的に解除される。
「ごめん…少し、休む…」
その言葉だけなんとか口にして俺はそのまま気を失った。
読んでいただきありがとうございました。




