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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
欠けた者達
24/66

母からの愛

よろしくお願いします。

 俺は朝食を食べた後、真白と透蜜の二人と一緒に訓練室に来ていた。


「じゃあ、今日はテクノの偵察型を出しますね。」


「頼む。」


 透蜜が電子モニターの一つを操作して仮想戦闘の環境設定をしていく。


 周りの景色が森になり、周りに木が生えてくる。天井には青い空が映し出される。これらは当然本物ではない。訓練室によって作られた限りなく本物に近い偽物だ。環境設定では周りの地形や敵の種類などデータベースにあるものは全て再現可能だ。


 そして、目の前に異形種の内の一つ”テクノ”の偵察型が1体出現する。


 生き物の中で一番近い形は馬だろうか。だが、馬とは違い6本の足を持っており全身を装甲で覆っている。背中にはいくつものアームと小型の偵察機がセットされている。首の根本と背中の後方には重火器が積まれている。胴体からは太く、360度全てを見渡せる作りの長い首が伸びている。そして、その先に液体の中に浸かった頭と、それを入れておく”揺り籠”と呼ばれる部分がある。


 全身が合金でできており、生半可な攻撃は一切効かない。最低でもあの装甲を突破する攻撃を持たなければ勝負にすらならない。


「融合しなくていいんですか?」


 透蜜が全ての設定を終えて声をかけてくる。


「今回は二人に分かれてやりたい。俺一人の攻撃でも装甲を貫けるか試したいんだ。」


「わかりました。真白はこっちに来てください。一緒に観戦しましょうか。」


 真白がノロノロと透蜜の方に歩いていく。俺はその間に移動を済ませ、深呼吸をして心を落ち着かせる。仮想戦闘と言っても相手は殆ど本物と同じ行動を取ってくる。そのことを頭に入れて拳銃を抜く。


「じゃあ、始めますよ準備はいいですか?」


「うん。透蜜、お願い。」


 そう言うと同時に戦闘用ゴーグルを付ける。「リンクと接続済み」「訓練室と接続済み」「仮想戦闘中」と少しの間表示された後、いつもの視界になる。この視界に表示されているものの意味も全て教えてもらった。


「それじゃあ始め。」


 その言葉を皮切りに、俺は森の中を走りだす。視線を絶え間なく動かし、地形情報を集めながら敵を探す。


 するとゴーグルにテクノの足跡が縁どられて表示される。俺はその足跡を見失わないように慎重に追っていった。


────────────────────────


 私は扉を開けて訓練室に入る。リンクから「仮想戦闘に接続します」という電子モニターが表示される。すると視界が一気に森の中になる。


 私は観戦スペースに向かうと、座って電子モニターを見つめる透蜜と真白を発見する。


「私も観戦していいかしら?」


 そう聞くと二人がこちらに気づく。


「あら、珍しいですね。綾女が直接見に来るなんて。今いいところですよ。」


 真白もコクリと頷く。私は透蜜の横に座り電子モニターを見る。そこにはテクノと会敵する直前の霧刃が映し出されていた。


「あれ、最近発見された新型よね?霧刃一人で勝てるの?」


「見ていればわかりますよ。きっと驚きますから。」


 透蜜がそう返してくる。そんなことを言われると期待してしまうではないか。自然と口角が上がってくる。


「がっかりさせないでね。」


 そう独り言を漏らす。そして、戦闘が始まった。


─────────────────────────


 俺は素早く揺り籠に狙いを付けて拳銃を撃つ。だが、向こうは先にこちらを発見していたのか、大きく距離を取れれて躱されてしまう。


「最悪っ。」


 そう悪態をついて急いで木の後ろ側に隠れる。その直ぐ後に「ドオォン!!」という轟音が鳴り響きさっきまで居た場所の木がへし折られる。テクノからの攻撃だ。戦闘型より手数も火力も劣るが、だからと言って弱い訳ではない。今のも当たれば即死の攻撃だ。


 最初の頃は恐怖でまともに避けれずに何百回と当たったが、今はもう大丈夫だ。加速を少しずつ調整して素早く木の間を駆け抜ける。相手からの射線に気を付けながら距離を詰めていく。周りの木が全て破壊される前にこちらの攻撃範囲まで行けそうだ。


 そう思っているとテクノから銃を装備した小型のドローンが飛んでくる。


「何それ!?今までそんなの無かったじゃん!」


 思わず声が出てしまった。俺はドローンに囲まれる前に急いでもう一度距離を取る。近づいてきたドローンは10機。俺は走りながら拳銃を構えて、何発か外しながらだが、1機づつ撃ち落としていく。だが、動きが速く3機に囲まれてしまう。そして、3機から同時に銃撃が飛んでくる。


 俺は敵の銃撃の直前に跳躍を使って一気に上に飛び上がる。落下している最中にの1機を撃ち抜き、木の枝を蹴って次のドローンに狙いを付ける。地面に着地するとドローンからの攻撃が飛んでくる。俺はテクノの位置に注意しながら木を使って射線を切り、加速で移動する。そして、ドローンの後ろを取って拳銃で撃ち抜き、残っていた2機を破壊する。


 少し無駄弾が多かったがなんとか全て破壊することができた。俺は再び加速を使って森の中を駆け抜ける。もう無いと思うがまた囲まれないようにテクノの挙動に注意しながら接近する。激しい銃撃が飛んでくるが、木を貫通してくる程の威力の攻撃はリロードに時間がかかるようだ。


 俺は一瞬だけ敵の射線が通る位置に身を晒す。テクノが待ってましたと言わんばかりに銃撃を飛ばしてくる。その中にあの高威力の攻撃もあった。俺は加速を使って直ぐに木の後ろに隠れた。高威力の攻撃を使ったのを確認したので少し回り込み最後の僅かな距離を詰める。木を跳躍の足場にして真横に跳ねるように移動していく。体への負担が大きいがこれが一番早く動けるのだ。


 そして拳銃の射程範囲に入った瞬間、俺は拳銃の能力を発動して引き金を引いた。


─────────────────────────


「すごいじゃない。」


 私は観戦スペースに戻って来た霧刃に賞賛の言葉を贈る。


「綾女見てたの?」


「ええ。”アリア”もちゃんと使いこなせてるみたいね。」


 アリアとは霧刃が持っている拳銃のことだ。魔力を余分に込めることでそれに応じて魔力弾の威力が上がる。透蜜が作ったもので、使い方を覚えればかなりつよい武器だ。馬鹿が使うとただの砲台にしかならないので霧刃はちゃんと扱えている方だ。


「まだまだだよ。今日も何発外したのか数えきれないくらいだし…」


「40発近く撃ってましたよ。」


 透蜜がすかさず発砲数を教えてくる。命中率は大体4分の1ぐらいということだ。


「霧刃の歳を考えればそれだけでも異常なくらいよ。おまけにギフトもちゃんと使えるようになってるし。」


「毎日狂ったように訓練していましたからね。そのおかげでしょう。」


 霧刃はまだ5歳なのに単独で異形種に勝てるだけの戦闘力を持っている。いくら全ての時間を訓練に使えるからと言っても、成長速度が速すぎる。


「なんか他の強くなれるギフトを持ってるんじゃないでしょうね?」


 茶化しながら聞いてみる。


「……ある。」


「…え?」


(今、あるって言った?)


「前に魂喰が渡してくれたギフト”成長”のせい」


「……………」


 霧刃はここに来てから1度も魂を食べてない。まさかギフトが力を隠し持っていた、とでもいうのか。ギフトが持ち主に悟れることなく力を隠すなんてできる訳が無い。ギフトは持ち主に逆らうことはできない筈だ。そんなこと今まで見たことが無い。


「魂喰がくれたってどうゆうこと?それは霧刃が喰った魂なの?」


「うん。俺が食べた奴。昔過ぎて俺も覚えてなかった。」


 一応霧刃が喰ったということは魂喰が自分で動いたという訳ではなさそうだ。私は一先ず安心する。


「でも、それっていつ食べたんですか?霧刃が初めて魂を食べたのって3か月前が初めてじゃなかったですか?」


「それよりももっと昔に一回だけ食べてたんだ。もう全然覚えてないけどこれは俺のお母さんの、ギフト…」


 霧刃の母親はもう死んでいる筈。つまり、彼の母親は…


「あなた、が魂を食べたの?」


「そう。」


 なんて言葉をかければいいかわからない。霧刃の異常性の一部を垣間見た気がする。普段は人懐っこい子供だが、やはり魂喰の持ち主だ。自分の母親の魂すら喰うとはなんということか。


「霧刃、そのギフトがあなたの手にある理由、わかるわね?」


「うん。魂喰から聞いた。俺のお母さんは自分から俺に魂を差し出したって。もう衰弱してて体力も限界で、俺の為に魂喰に魂を喰わせたって。俺、お母さんからもちゃんと愛されてた。こんなにも大切な力をくれた…!」


「……………」


(あれ…?)


 なんか想定していた答えと違う。落ち着いて今の霧刃の言葉を考える。霧刃は成長を母親からの愛だと言った。もしかして、母親は自分から望まれて霧刃に喰われたということだろうか。


「なんで、お母さんはあなたに食べられたの?」


 霧刃はすごく悲しそうな表情をしている。


「俺のせい。俺を産んでもう限界だった。それで俺が殺したことになって魂喰が発動したらしい。でも、生まれてすぐの状態で喰えたのはお母さんが抵抗しなかったからだって。魂喰は母親がお前に残した最後の愛だって言ってた。」


 なんということか。彼の母親は霧刃の出産で命を落としたという。そして、自分の魂を息子の為に捧げたのだ。彼の家族は本当に彼の事を心の底から愛していたのだろう。どれだけ障害を持っていたとしても、その出産で母親が亡くなっていても。それでも彼は愛されていたのだ。


「そう…その力、大事にしなさい。」


 そう言って私は霧刃の頭を撫でる。


 彼はもし、家族の元に帰れると知ったらどうするだろうか。ここから去ってしまうのだろうか。


 それは寂しい。


 まだ一緒に料理もしていない。一緒に遊んであげてもいない。一緒に戦ってもいない。まだ話したい事もたくさんあるし、私だって霧刃の訓練を担当したい。


 身勝手な事だが私は彼らがいる今の生活を続けたい。


(やっぱり、黙っておこう。)


 私は朝に中央都市から届いた「乗鞍岳周辺の大規模調査の参加命令」を透蜜にだけ言おうとを決めた。



読んでいただきありがとうございました。

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