表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
欠けた者達
23/66

生きてる

よろしくお願いします。

 何かが顔の前にある。俺は確認する為にぼんやりと目を開く。目の前に真白の顔がある。このさらさらした感覚は真白の髪の毛だ。いつ触っても綺麗な髪だ。世界一綺麗な白髪だと思う。


 白い髪の毛を触っていると真白が目を開く。


「おはよう真白。」


 真白も頷いて返してくれる。だが、まだ眠そうだ。昨日も一日中戦闘訓練をしていたのだ。それもしかないだろう。


 俺は体中の痛みを我慢してベッドから立ち上がる。透蜜がいうには筋肉痛と言うらしい。これが起きているということは体が鍛えられている証拠なのだそうだ。そうだと分かっていても痛いものは痛い。


 俺は真白を抱えて洗面所まで行く。専用の台に真白を下ろして水を出して顔を洗い、その冷たさでボーっとする頭を無理やり起こす。俺が顔を拭いていると横で真白も顔を洗い始める。髪が濡れないように後ろから抑える。真白が顔を洗い終えたらタオルで拭いてあげる。真白はとても気持ちよさそうな顔をしている。その気持ちはよくわかる。このタオルはとてもふわふわで気持ちがいいのだ。正に極上の肌触りだ。


 今日の服は黒いジャージだ。真白は灰色のパーカーを着ている。リンクを装着して武器が付いたベルトを付ける。透蜜から武器の手入れについても教えてもらった。磨いている内に愛着がわいて来て自分の部屋に保管するようになったのだ。


 俺達は身支度を済ませると真白を背負って、玄関のドアを開けて食堂に歩いていく。


 今日は8月13日。俺達がここ「擬人之塔(ぎじんのとう)」に来て3か月が経っていた。もう大体の施設がどこにあるかは覚えた。俺達は毎日朝から晩まで戦闘訓練に明け暮れた。この3か月でいろいろあったが一番はやはり、強くなったことだろう。


 俺は加速も跳躍も戦闘で使えるようになったし、短刀と刀、あと魔力銃の扱い方も覚えた。ライフル型はまだ一人では持てないので拳銃型のものを透蜜からもらった。少し、変わった形ではあったが使えるギフトも3つになった。


 真白は俺と同じ種類の武器を使えるようになった。それに加え融合を使った戦闘のバリエーションが増えた。今まで取り込んだ生き物の部位をより精密に細かく再現することができるようになった。前に比べれば俺の前で体を作り替えることも慣れていった。だが、足も太くてしっかりしたものが作れるはずなのに何故か真白は基本の体を作り替えようとしなかった。


 たまに人に近い形になっている時もあるが、まだ納得できる形じゃないのかいつも試行錯誤している。いつか人間に近いのが完成したらそれで生活するようになるのだろうか。そうなったら少し寂しい気もする。


 俺は食堂に付くといつもの席に向かう。


「透蜜、綾女、おはよう。」


 先に食堂に来ている二人に挨拶をする。


「あら、おはよう。もうすぐできるわよ。」


「おはようございます。今日は早起きですね。」


 今日は綾女は赤いエプロンを着てキッチンで何かを作っている。透蜜は灰色のレギンスにパーカーを着て、お茶を飲みながら座ってゆっくりしていた。今日はもう情報収集は終わっているようだ。俺は透蜜の前に座り、日課となった雑談をする。


「透蜜、今日やりたいことあるんだけど時間ある?」


「はい。大丈夫ですよ。何をしたいんですか?」


「実は──」


 今日の訓練に付いて話しながらこれまでの日々を振り返る。ここで生活していて分かったことがいくつもある。


 綾女は服はスカートやドレスみたいなひらひらしたものが好きみたいだ。あと、彼女が食事当番の時は白飯がよく振舞われた。


 そして、ここの最強は綾女だ。1度見回りについて行ったが見つけた異形種を片っ端から虐殺していた。実際に俺が見えるくらいまで近づいた時にはもう肉片や鉄屑になっていたので実際にその力を見たわけではない。だが、「今日もゴミしかいないわね。」というセリフで全てを察した。


 透蜜は逆にレギンスとかスポーツウェアみたいな体のラインが出る服が好きだ。特に下はほぼレギンスかスパッツだった。酷い時は下はパンツだけの日とかあった。さすがに人としてどうなのって指摘したらスパッツを履いてくれた。それ以来パンツだけの日は無くなった。


 パンが好きで透蜜が食事当番の時はパンが出ることが多い。


 透蜜は今日までほぼ毎日俺達の訓練に付き合ってくれた。戦い方の右も左も知らない俺に基本を教えてくれた。まだ一度も攻撃を当てることはできてないが、毎日の訓練で強くなっていることを自覚できるのが嬉しかった。


 そして、俺はこの二人に心を許しつつあった。


 ここでの日々はとてもキツく、楽しかった。毎日が充実していた。二人に守られ、死の恐怖に怯えることもない。毎日おいしい食事と暖かいベッドがある。


 どこまでも満たされた日々だ。


 何より、透蜜が俺の成長を認めてくれるのが嬉しかった。何もできなかった俺にできることがどんどん増えていく。


「出来たわよ。さあ、今日の朝は豪華よ。」


 考え事をしている内に朝食ができたようだ。俺は席を立ちキッチンの方に歩いていく。


「手伝う。」


「ありがとう。いつも助かるわ。」


 俺は茶碗に盛り付けられた白飯や皿に載った魚を運んでいく。今日のご飯は白飯、みそ汁、鮎の塩焼き、ほうれん草のおひたし、ポテトサラダ、ヒジキの煮物だった。


「美味しそうですね。今日はどうしたんですか?」


「昨日デカいのを倒したから気分が良くてね。つい興が乗ってたくさん作っちゃったわ。」


 そう言って綾女が笑顔で答える。何を倒したのかは聞かなくてもわかる。


(どの異形種だったんだろうな…)


 そんなことを考えながら慣れた手つきで配膳を済ませていく。別に可哀そうとも思わない。俺はあの時サギルに見つかっていれば確実に死んでいた。どれだけ無様でも死にたくなければ強者からは逃げ隠れするのが正解なのだ。


 俺は隠れ切って生きることができた。外では弱肉強食だ。生きる為には手段を選んでいる場合ではない。


 俺は席に座る。


「「「いただきます。」」」


 今日も自分の糧にする生き物に感謝して食べる。これも日課だ。外で食べ物が如何に大事かということも俺は思い知った。だからこの感謝の思いは忘れないようにしていた。


「うーん。もうちょっと塩を振っておいてもよかったわね。」


「そうですか?十分美味しいと思いますが…」


「綾女、最近しょっぱいもの好きだよね。体、大丈夫?」


「大丈夫よ。ちゃんと栄養も考えてるわ。霧刃と真白の為にもそんなに偏った食事は作ってないでしょ。」


「それはそうなんですが…まあ、仕方ないですね。ご飯には塩が合いますしね。」


 真白が頷く。


「二人のご飯は毎日おいしいよ。俺も、料理やってみたい。」


「それなら今日のお昼は一緒にキッチンに立ちましょうか。霧刃が食事当番のテーブルに加われるようになる日が楽しみだわ。」


「料理は覚えるととても楽しいですよ。霧刃が新しいことに興味を持ってくれて嬉しいです。」


「…まだやるって決めたわけじゃない。ちょっとやってみたいって思っただけだし。」


「それでも嬉しいです。」


 いつも通りの賑やかな食事だ。毎日、毎回いろんなことを話す。分からないことが話題になるとその度に質問をした。二人は嫌がることなく俺の質問に答えてくれた。おかげで様々な知識を得ることができた。


 このなんでもないような時間が大好きだ。みんなで笑いながら食卓を囲むこの時間を俺は噛み締めながら過ごすのだった。


読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ