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魂まで喰らいつくして  作者: 小土 反り
欠けた者達
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絶望の中の光

よろしくお願いします。

 私の目の前には訓練室の中で倒れた霧刃がいる。真白と融合したことで髪の一部が白くなり、背も少し高くなった。だが、まだ子供だ。強くなりたいと言っても、所詮遊びの範囲を出ないだろうと思っていた。


「最後の攻撃。本気で避けました。あれ、私を殺す気で打ち込みましたね?」


 沈黙が流れる。霧刃が私から目を逸らす。そして、ばつが悪そうに口を開いた。


「殺す気でいかないと、絶対に当たらないと思った…最初の攻撃はどこかで手を抜いてしまったと、思ったんだ…ごめんなさい。」


 霧刃が立ち上がり、頭を下げる。そのタイミングで融合が解除されて真白が出てくる。私はずっと疑問に思っていたことを霧刃にぶつける。


「どうして、そんなに強さを求めるんですか?霧刃はまだ若すぎます。強くなるにしてもそんなに焦らなくてもいいんじゃないんですか?霧刃は本当に強くなりたいんですか…?」


 さっきの戦闘で感じた。この子は病的なまでに強さに固執している。なのに今は殺気を感じない。


 矛盾しているのだ。


 簡単に力を求めるなら魂喰を使えばいい。なのに霧刃はそうしない。さっきも限界まで追い詰められて初めて殺意を向けてきた。


「……………」


 霧刃は下を向いたまま動かない。だが、何かを言おうと口が僅かに動いている。私は霧刃が話し始めるのを黙って待った。


「…急がなくちゃいけないんだ。」


「それは、何故ですか?」


「…いつか、ここも追い出される日が来る。あの日のように。俺が何もできないから。だから、そうなっても、真白と一緒に外で、生きていけるだけの力が、要るんだ。」


 霧刃の顔から涙がこぼれる。それを見て私は納得することができた。



 この子はもう真白以外、誰も信じていないんだ。



 一度都市に捨てられてこの子は他人を、大人を見限ったのだ。この子が私に殺意を向け無いのは元からの優しさだろう。でも、この子は魂喰の持ち主に相応しい冷酷さをしっかりと持っている。


 私達大人が彼のそれを目覚めさせたのだ。


 この子には今はもうどんな言葉も届かない。私達が何を言おうとこの子には関係ないのだ。この子の目的は真白を守ることと生きることだ。


 生きることが手段ではなく、目的になってしまっている。外での生活がこの子をそう変えたのだ。生きること以外考えられない状態だったのだろう。


「そんなの、悲し過ぎます…」


 私はこの子を抱きしめる。


 この子には力があった。真白と力を合わせれば外で生きられるだけの力が。その力がこの子をここまで追い込んだ。生きる事に憑りつかれて生きるのは死ぬよりもつらい。こんな状態になるなら死んだ方がマシだ。だが、それすらもう遅い。この子は生きる事を目的にしてしまっている。もう死のうとはしないだろう。


 今この子に必要なのは強さじゃない。人の暖かさだ。


 まだ、可能性はある。不幸中の幸いと言うべきか、この子は一人ではない。それにこの子は父親の愛に泣ける心をまだ持っている。時間を掛ければきっと優しい子に戻ってくれるはずだ。


「私達を信じてとは言いません。どうか、ここで一緒に暮らしてくれませんか?もちろん訓練にも付き合います。やりたいことがあったらどんな些細な事でも言ってください。私がなんとかしますから。だから、そんなにも悲しい未来を目指さないでください。」


 彼からの返答はなかった。なかったが、私の背中を少しだけ抱きしめてくれた。


 今はこれだけでもこの子の気持ちを推し量るには十分だった。




読んでいただきありがとうございました。

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