本題
よろしくお願いします。
俺達はホットケーキを食べてお茶をもらい、ソファでボーっとしていた。前の二人も座って静かにお茶を飲んでいる。
ガラスがない窓からは光が差し込み、鳥の鳴き声が聞こえてくる。
外に捨てられてから今日までこんなに安らかな気分になったことはない。
「さて、じゃあそろそろ本題に入ってもいいかしら?」
綾女がそう切り出して、コップを机に置く。
「…俺達は子供だ。毎日生きるのに必死なだけのただの子供だ。そんな俺達に何が望みなんだ。」
俺は綾女の目を見て質問をする。怖いが、今は我慢の時だ。
「簡単な話よ。あなた達ここで一緒に住まない?」
「……………」
また話が分からなくなったぞ。ここに住むって言ったのか?
「理由を聞いてもいいか?」
「理由は2つ。一つは私たちの手伝いをしてほしい。あなた達にはそれができるわ。もう一つはあなた達を異形種から守る為よ。」
「…守るだと?一度捨てたのにか?」
俺は守るという言葉に反応した。外に置いて行かれたあの時は酷い気分だった。あんな思いをさせておいて今更なんだという思いが俺の中にあった。
「そうね。霧刃は一度捨てられた。それは否定しないわ。でもそれは私たちじゃなくて都市が捨てたのよ。」
「え…都市は人間を守るためにあるんだろ?なんでその都市に捨てられるんだ?」
俺が次々に飛ばす質問に綾女は丁寧に答えてくれる。
「都市は確かに人間を守っているわ。でもそれは人類が生き残るために有用な者だけなの。あなたが都市に居た時、何もできなかったんじゃない?」
俺はその理由を聞いて何故かすんなり納得することができた。病室で最後に聞いた声を思い出す。
(そうか。あの時のおばあちゃんの言葉はそうゆう意味だったのか。)
「おばあちゃん…」
最後のあの朝。おばあちゃんはどんな気持ちだったのだろうか。俺は今まで想像したことも無かった。少し間を開けて俺は最後の質問をする。
「なんで、俺達だけ助けるんだ?他にも捨てられた奴らはいただろう?」
「ええ。捨てられた子達ならたくさんいたわ。でも、もうあなた達以外は全員死んだわ。何もできない者が捨てられるんだもの。普通死ぬわよ。あなた達が生きているのは異常と言ってもいいわ。」
信じたくはなかった。だがここで綾女が嘘を言っていたとしても俺には確かめる術がない。それに俺は見てしまっていた。狼に襲われて死んだあの子供。俺はあの光景を忘れることができなかった。
「俺は、俺はまだ死にたくない。この提案を受けようと思う。真白もいいか?」
真白は指を一本突き立てる。どうゆう意味だろうか。
「そういえば真白は話せなかったわね。ほら、紙とペンよ。文字は書けるかしら?」
真白は頷きペンを手に取って何かを書き始める。俺の膝の上で座って書いているのでなんて書いているのか俺にはわからなかった。
真白のペンが止まり、紙を綾女に見せる。
「なるほどね。いいわよ。この条件も飲んであげる。」
その答えを聞いて真白はこっちを向いて頷いた。なにを条件にしたかは分からないが真白がいいというのだから、そこまで気にする必要もないだろう。
「真白もいいと言ってくれたなら俺も文句はない。今日からよろしくお願いします。」
俺は真白を膝から下して立ち上がり、二人に向かって礼をする。おばあちゃんが看護師の人と話しているときよく礼をしていた。なんとなくだが俺は光景を覚えていた。
お世話になる人とお願いをするときは頭を下げる。これもおばあちゃんに教えてもらったことだ。
横で真白も頭を下げる。
「よろしく!」
「よろしくお願いしますね!」
二人は笑顔で返してくれた。
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