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後悔
そこで私たちは交わした契約を調べ直してみた。
“鬼”とは要するに神の左腕。悪魔の頂点と言えばわかりやすいでしょうか。右腕が善で左腕が悪。魂を捧げるということは生け贄にするということだった。
今になって私たちは本当にとんでもないことをしてしまったのだということに気づいた。これから先、一体息子はどうなってしまうのか・・・。今の私たちには激しい後悔と底の見えない恐怖しかなかった。
この事態を知った義母は必死で契約を解除しようとした。しかし、どんなことをしても息子が救われる様子はなかった。
自分たちで対処できることではないとわかった以上、もう神様に祈るしかなかった。黒くなるたび何度も何度も教会に足を運び、ひたすら救いを求め続けた。こんなことになってしまうなど義母にもまったく予想外のことだったらしく、改めて黒魔術の恐ろしさを知った義母はそれっきり一切黒魔術を使うことはなくなった。
それからしばらくの後、目が黒くなることもなくなり私達はようやく救われたのだと思い安心しきっていた。しかし、そんな甘いものではないことだと知るのは何年も先の事だった。




