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上書きされた僕の血筋  作者: pipoca
僕の事
34/44

妊娠と薬

それは彼女の妊娠が発覚してからのことだった。実は彼女は半年ほど前に一度妊娠している。


本来死人の彼女に自然に妊娠することはもちろん不可能なことなのだが、ひとつだけ妊娠する方法があった。


それは戦使である息子が赤ん坊を呼んだとき。


この頃彼女はもう一人子供が欲しいと思い始めていたらしく、息子はその母の気持ちを叶えたというわけだ。ところがまさか妊娠できるわけがないと思っていた彼女は相変わらず鎮痛剤を飲み続けていた。そして生理が遅れて四日目に「まさか」とは思いつつ、念のために妊娠検査薬を使ってみた。すると陽性反応がでた。


彼女はすぐに一切の薬を飲むのをやめたのだが遅かった。残念ながら流産という結果になってしまった。彼女は自分を責めたが、流れてしまった赤ちゃんは誰も責めてはいなかった。


産まれても兄である息子と遊べないことが嫌で自ら帰ることにしたのだという。つまり薬のせいで身体に障害がでてしまったということだ。かわいい女の子だった。


そしてまた呼ばれたら来ると言い帰って行った。それからの僕と彼女は、もう一度来てくれた時この世に元気に出てこれるために薬に関して非常に慎重になった。


むこうの世界に行けばこの世では作ることのできない薬を作ることも可能で、今までにも何度か彼女に頭痛用の薬を作って飲ませてみたのだが、何せ約二百種類もある中からチョイスするため、なかなか彼女の頭痛に合う薬が見つからなかった。


一つ薬を作るにも数週間はかかり、なおかつ手間がかかる。そうなってくると僕にも他にやることが沢山あるため、次第に薬作りから遠のいていってしまっていた。


だが、この世で出回っている薬よりはるかによく効き、身体に残りにくい薬が今回のことでいかに彼女に必要なのかがよくわかった今、もう一度真剣に探すことにした。


まず最初に作った薬は僕の管理ミスで知人が飲んでしまった。その知人は信じられないほど良く効くと興奮し、その薬を売ってくれと懇願した。


結局その薬は知人の手に渡ることとなってしまったのだが、それを聞いた彼女は激怒した。やはりどこかでまだ流産してしまったことを自分で責め、薬に関して慎重というより神経質になっているようだった。


そして僕はもう一度同じ薬を作り直し、今度は少し強めに作った。だが、彼女には今回も効かなかった。僕はめげずに他の薬を探し、かなり強い毒花から作る薬を飲ませてみた。


すると、やっと彼女に合ったようでよく効いた。それからの彼女は市販の薬や病院で処方された薬は飲まず、僕の作った薬だけ飲むようになった。


彼女に効いてくれるのはいいのだが、作る工程で少しでも気を抜くと素材が素材なだけに飲んだ彼女が死んでしまう可能性があるため、一時も気が抜けない。人間社会での仕事プラス薬作りで日々の疲労感は増す一方だった。だがこれでいつ赤ちゃんが戻ってきても前回のようなことだけは避けられるようになった。


そして前回の妊娠から半年後、彼女は再び妊娠した。


もちろん順調に育っている。ところが妊娠三ヶ月に入る頃、戦使の呼んだ子がどんな子なのかに興味を持った兄貴が出産後の未来を見に行ってみると、そこに僕の姿はなく、兄貴自身もいなかった。


それどころか彼女も赤ん坊もいない。つまり皆死んでしまっていた・・・。

平日14:00~17:00の時間帯で投稿を続ける予定です。

最後まで読んでいただけますと幸いです。よろしくお願い致します。

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