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上書きされた僕の血筋  作者: pipoca
僕の事
29/44

誕生

その日は二月だというのに、とても暖かで空気が澄んだ気持ちのよい日だった。そんな日に天使は産声を上げた。


妊婦検診で難産になるであろうと医師に言われ、帝王切開を薦められていたのだが彼女は迷っていた。迷う原因は腹に傷が残ることだと僕は思っていたが、そうではないようだ。


天使を帝王切開で産んでもいいのかどうかだった。正直彼女にそう聞かれても答えに困った。なんせ神様のことや天国のことは文献でしか知り得ないことで、天使のことも僕にわかるはずもなく、一つ明確にわかっていることと言えばこの天使は僕の天敵だということ。


兄貴の話のくだりに少しあったが、鬼の頭は七人揃わなくてはならない。


僕と兄貴もその頭のひとつだが、天使も七人揃わなくてはならない。天使とひとくくりに言ってもいろいろな役割を持った天使がいて、この場合戦う使命を持った天使だ。ここでは仮に“戦使”としておこう。


この戦使は天使の中でもかなり特殊な天使で、普通天使といえば決して他人に危害を加えず、例え右の頬を殴られたとしても左の頬を差し出し、殴っている人間を哀れみ神に救いを求めるものだが、戦使は違う。右の頬を殴られたのなら殴り返す。そういったことができるには黒の血が必要なため、白の人間と鬼の頭との間にしか産まれることができない。


その戦使の一人が我が子というわけだ。では一体お互いに七人揃うとどうなるのか。それはこの世の終わりが来るということ。


某有名な預言者がこの世の終わりを予言し後世まで語り継がれ、人々はその予言の真相を追い続けた。そしていよいよその予言の日を迎えるのだが、結果は何も起きなかった。


ではなぜ予言は外れてしまったのか?そう、七人が揃わなかったため。その預言者は決してインチキだったわけではなく、彼には世界の終わりが見えていた。だが、物事に必然はない。神の気持ち一つでどうとでも変えられる。


彼が予言した後に神の手が加えられ、もう少し先までこの世界は延ばされたのだ。だが、双方七人ずつ揃うことは何百、何千年かかるかというぐらい、なかなか揃うことがない。たまたま現代に揃うことになっていたがそれも延び、僕たちが鬼の頭から外れればまた延びる。


天使の方も息子が外れることによりさらに延びるだろう。どんな力を持ってして世界の終わりが見えようとも“いつ”なのかは決して誰にも知ることができないのだ。


ここでなぜなかなか揃わないのか一つ。


鬼の頭と白い人間との間にしか決して産まれることのない戦使だが、産まれてすぐ子供のうちに殺してしまわなくてはならない。これは我々の決まり事で絶対だ。


しかし、皆が皆実行に移せるのかといえばそれはまた別だ。大抵、我が子を手にかけることができず姿を消すことが多い。しかし、直に手を下す者が去ったとてそれで終わりとはいかない。常に隙さえあれば殺ってやろうという者の目が向けられている。七歳の誕生日を迎えるまではよっぽど気をつけなくてはいけない。


七歳になれば自らの役割などを導くものがつくらしく、ここで初めて普通の子供と変わりない生活を送らせてやれることができる。つい最近も六歳の戦使が殺られたばかりだ。母親の気が緩み、目を離したその隙の一瞬のことだった・・・。


幸いにも僕の場合は我が息子を手にかける使命はあれど、なんせ不完全な頭であるため、その使命からは何とか逃れられている。しかし、問題はそれだけではない。戦使を育てるうえで一番気をつけなくてはならないことがある。それは決して道を外させないこと。


もしも悪い道に逸れてしまった場合、力を持っている分とんでもないことをやらかすだろう。普通の人間が道を外すのとはわけが違うのだ。


そうならないためには一番そばにいる母親が白くあり続け、正しい道に導いてやらなければならない。正直今の彼女では不安だ。成長段階ではあるけれど、まだ元の道に戻ってしまう可能性が多いにある。きっと本当に大変なのはこれからだ。息子が産まれたことでやっとスタート地点に立ったに過ぎない。どのようにすれば頭から外れ、一人ずつの身体が持てるのか具体的なことはまだわかっていない。僕たちが頭から外れることは同時に息子も戦使から外れるということ。息子のためにも早くその方法を見つけたい。

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