心配事
いくら身体に戻ることができたといっても、ずっといられるわけではない。
一日のうちに何度も何度も鬼と入れ代わる生活だ。今はいられても一時間先はわからない。そんな生活の中、どうやって鬼を封印させるのかが問題だった。
それに俺と妻の二人だけでは力が足りない。どうしても義妹の協力が必要だった。話しを持ちかけてみると、姉妹の仲を少しでも修復したい気持ちがあったのだろう、あっさり承諾した。
すべての準備は整った。まず俺を円陣の中に座らせ、そして義妹が鬼の名前を呼び、鬼は姿を現した。ところが円陣からは出られない。
これが何を意味するのか鬼はすぐに察したようだった。封印を行なう最中、少しの気の緩みが命とりになるため全神経を集中させ、ただひたすら儀式を進めていった。
結果、苦しみもがきながら鬼は地獄に戻っていった。最後にこんなことを言い残して・・・。
「これで終わったわけじゃないぞ。俺をこんな目にあわせてただで済むと思うな。俺は必ず復讐しにくる。必ずお前達に復讐してやる!」
とりあえずは成功したのだが、ひとつ穴があった。それは義妹。
彼女はやはり黒い人間だった。鬼を地獄に帰すことで自分の持つ力を失うことを恐れたのだ。
そのため鬼がこの世に再び来ることのできる扉を残してしまった。つまりは彼女次第で戻ってくることも可能だということになる。
もちろん俺達はそんなことをしないように重々言い聞かせたが、どうしても力が必要となると呼んでしまう気がしてならない。彼女は黒い人間だから。
果たしてどこまで彼女が我慢することができるのかはわからないが、とりあえずは鬼に身体を支配されることはなくなった。
だが、これで元の生活に戻れるわけではなかった。俺はこれから眠りにつかされる事が決まっていた。いつ身体に戻れるかはわからない。
俺は妻に自分と別れるように言った。だが妻は待つと言った。その言葉だけが俺の励みとなり、静かに眠りについた・・・。




