無敵
いつもは起こされてもなかなか起きない俺が妻より早く起き、妻と娘を起こしてまわった。
「こんな早くにどうしたの?」
「今日出かけるって言っただろ?忘れたのか?」
「だからってこんな早起きしなくてもいいじゃない。遠出でもするつもり?」
まったくもって計画は立てていなかった。どこに行くのかが目的なわけではない。
夫は頭がおかしいかもしれない・・・。
と1パーセントでも思われているのが嫌で嫌でたまらなかった。せめて妻にだけは100パーセント信じてもらいたかった。
とりあえず家族連れのたくさんいる公園へと向かった。
「なあ、あそこにいる家族が次に向かう遊具は何だと思う?」
突然の俺の問いに妻は少し戸惑っているようだった。
「いきなりどうしたの?そんなことわかるわけないじゃない。」
「俺が当てたらどうする?俺の力のことを信じてくれる?」
「・・・そうね。でも仮に当たってもマグレかもしれないじゃない?ここにある遊具の数は知れてるわ。」
「でも少なくとも主要な遊具や乗り物は八つはある。その中でも滑り台だけでも大小合わせれば四つある。そこまで細かく言い当てれば信じるか?」
「本当にそこまで細かく当たればね。信じるわ。」
「よし。」
俺はその家族に神経を集中させた・・・。
「上の子は、あそこにあるローラーの滑り台に行きたいと言うけど、下の子は汽車に乗りたいと言う。そこで、まずは汽車に乗りに行ってから滑り台に向かう。」
はっきりと見えた。間違いない。その家族が動くのを待った。
「動いたわ。」
こっそりと後をつけた。すると、やはり汽車に乗りに行った。その後も俺が見えたとおりローラーの滑り台に向かった。
「信じてくれた?」
「・・・う、うん。」
なんだか歯切れの悪い返事に納得ができなくて、もう一度別の家族で試してみることにした。
「また・・・当たったわね・・・。」
「もうさすがに信じてくれたっていいだろ?」
「すごい!すごいよ!それで他にはどんなことができるの?」
それからというもの、ことあるごとに力を使いまくり二人で遊んだ。
自分たちの知り合いのほとんどの人生も見まくった。普通に会話しているときだって本当は何を考えているのか、嘘をついているのかさえも俺にはわかる。
力を使えば使うほどできることも増えていった。そしてできることが増えればまた使う。普通の人にできないことができるということは、なんともいえない優越感が味わえた。
この頃の俺に怖いものなど何もなかった。力を持つ本当の恐さ、意味、そして鬼の企み。無知ゆえに乱用しまくってしまったのだ・・・。
 




