力の事
「答えは簡単だ。お前が鬼の子だからだ。普通の人間ならば生まれた年、日付、時間で決まるのだが、お前は普通の人間とは違う。それに、お前は力の使い方をまったく知らない。まずはそこからだな。力の使い方さえわかれば聞きたいときにだけ聞け、見たいときにだけ見ることができる。今のお前はあの者達のことを認識できる波動を出し続けているがために、自分を救ってもらえるのかもしれないと寄ってくるのだ。普通の人間にどれだけ訴えても決して届かぬ声だからな。
よく霊を見たと言っている人間がいるが、それは時間による偶然だ。おそらく昼夜両方の十二時と六時のいずれかに偶然見えたのだろう。しかし偶然は偶然。本当に見えるのならばまず普通の生活はできんだろう。気配を感じるくらいはできるだろうが見ることはまず不可能だ。
生まれた年や日付、時間の合致する霊的力を持つ者がふと霊の声を聞いたとする。そこで気のせいだと思いそのまま過ぎてゆく者と、「何だ今の声は?」と探り出し、もしかしたら自分は霊が見えるのかもしれないと、興味本位に神経を集中させ見ようとすると、やはりその素質があるために、やがて声も鮮明に聞こえ出し姿も見えるようになっていく。
まず普通の人間でここまできた奴に今まで通りの生活を送ることは不可能だ。だからといって後戻りもできん。力の使い方もわからなければ抑えることもできん。やがて九割の人間は精神に異常をきたし一生病院生活だ。
一度とんじまうと、もう二度と戻ってくることはないからな。そして残りの一割はこっちの世界に通ずる人間から力の使い方を教わり、うまく自分自身で力を操れるようになれば、まだ普通に生活することは可能だろう。まず本物と知り合う事自体が難しいがな。」