帰還
そして、俺は鬼から自分の持つ力の使い方を教わった。
霊を見えなくするだけではなく、人間の心が読めたり過去や未来を見ることだってできるようだ。そして鬼は
「今から戻してやる。また近いうちに呼ぶ。」
そう言うと俺を今までの世界に帰した。
目が覚めるといつもの見慣れた光景が広がっていた。いつも早起きの妻は今日も変わらず朝食の支度をしている。少し朝寝坊の娘はまだ寝ているようだ。何ひとつ変わらぬいつもの朝の光景。俺にとっては天と地がひっくり返ったような朝だが・・・。
昨夜の出来事は夢だったのだろうか・・・?それにしては、やけにリアルすぎる。悶々と考えこみ、なかなかベッドからでてこない俺を心配し、妻が寝室にやってきた。
「まだ具合悪いの?今日は仕事休んだら?」
「・・・いや、仕事には行くよ。大丈夫だ。」
心配そうな顔でこっちを見つめる妻に昨夜のことを話したかったが、自分自身まだ整理ができていなかったため、上手く話せる自信がなかった。
「お誕生日おめでとう。」
「ありがとう。」正直、誕生日などどうでもよくなっていた。
「・・・あのさ、君に聞いてもらいたいことがあるんだ。でも、今すぐじゃない。仕事から帰ったら話すよ。」
「何?何の事?なんで今は話せないの?」
「とにかく時間もないしさ、帰ったら話すから。」
妻はあきらかにムッとしていたが、しぶしぶ了承した。きっと浮気かなにか悪いことをしたと思ったに違いない。夜までに頭の中を整理しなくては・・・。
 




