疑問
お前は知らなくてはならないことが山ほどある。まず、お前にはここがどう映る?。」
「・・・・・地獄?」
「そうだ、ここにいる無数の者達は全て罪人。愚かな者達だ。毎日毎日、何百何千、時には何万という数の者達がここに落とされる。天国に行ける者など、ほんの一握りだ。お前は地上にのさばる者達がすでに見えているな?そういう者達も行き着く先はここか、無だ。人間がいかに醜い生き物なのかを神に知らしめるべく、俺はこの地獄を創ったのだ。」
確かに俺は17歳のある日を境いに霊の声を聞いたり姿が見えたりしだした。最初にはっきりと聞こえたのは女の泣き声だった。
恐怖でパニックになり、それから眠れない日が延々と続いた。日に日に複数の声が聞こえだし、枕元に来る数も増えていった。目を開けると鼻先まで近づき助けを訴える者までいた。ベッドを何体もの霊で囲まれ、皆自分の言いたいことを好き勝手に朝まで言いまくっていた。
バラバラにされ殺されたであろう者は、まだ見つかっていない体の部分を捜してほしいと自分の頭を手に持ち、血まみれで訴えてくる。それは体験した者にしかわからない恐怖だ。
誰に話したって一人として信じてはもらえなかった。だが、あまりの怖さに感覚が麻痺してきたのだろう。徐々にそんな生活にも慣れつつあった。いや、慣れなくては生きていけなかった。俺自身、なぜ自分が急に霊の声が聞こえ、見ることができるのかずっと疑問ではあった。聞いて見える以外は何ができるということもなく、ただただ恐怖に耐えるしかなかった。
「なぜ俺は霊を見ることができるんだ?俺に助けを求めにくる奴は、どれだけ聞こえないふりをしたって俺が見えていることも、声が届いていることもわかったうえで近づいてきているようだ。なぜ俺なんだ?」
この恐怖をわかってもらえる人もいなければ、救ってくれる人もいない。ずっと一人で耐えてきた。だが今、少なくとも自分の抱いていた疑問だけは晴れそうだ。