ワタシワタガシ
どうしてまだ来ないのよ。約束の時間、五分過ぎてるわよ? イライラしてラインを送ると、あんたはこう返してきた。
「駐輪場が空いてないんだ。できるだけすぐ行くから、綿菓子でも買っておいてよ」
はあ?
綿菓子はあんたの好物。お祭りなんだから混雑することはわかってるはずなのに、謝らないどころか人を使い走りにするつもり? 私はお金を投げつけるようにして、困惑するおじさんから綿菓子を二人分ひったくった。
「どうしたんだ? 彼氏と喧嘩か?」
おじさんの言葉は茶化しているようにしか聞こえない。
綿菓子は嫌い。ほとんど割り箸の重さしか感じられないし、同じ額を払ったのに左のほうが少し大きく見える。口にすればほんの少しの甘さだけを残して消えちゃう。まるで軽い男みたい。食べ終わったと思えば口周りがべたべたして、いつまでも忘れさせてくれない。少しはダイエットにも関心を持ち始めてるのに。
……あ、やっと来た。今さら頭を下げるバカに、私は左手で持っていたものを押し付けた。提灯が境内を明るく照らし、今しがた渡したものをキラキラと映して見せている。どうして今、一瞬でも一緒に食べればよかったなんて思っちゃったんだろう。言っとくけど、私は綿菓子みたいにフワフワしてないんだからね!