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翌日、またルド様に呼び出されて、なんだと思い、行くと。絶世の美女(の見た目にホログラムで成って居るだろう)とお話をさせられる事に成った。
「……それでわざわざルド様経由で呼び出して何の用ですか?」
「いえ、只、水霧様に選択肢を与えに来ました」
うわ、胡散臭さ……只まあ。
「……ルド様公認だとは思いますが、内容を早く言ってくれません?」
「その前にこの見た目に何か思いませんか?」
「グラフィックを被り仕事をする人を馬鹿にする訳では無いですが、確かにお綺麗ですね。只のホログラムですけど」
なんて言うか。色々と容姿を盛り過ぎてむしろ現実味が無くなり過ぎているのだ。個人的な意味での不気味の谷みたいな物か? 綺麗は綺麗なのだけどそれ故に不快感が有る。二次元のキャラが普通有り得ない髪の色をして居てもそう言う世界観だと受け入れられるけど、現実の人がそう言う髪の毛に染色しているのは正直な話個人的には苦手だ。似合う人のそれは別に良いけどね。
「酷いですね。こんなにも綺麗なのに」
「……」
仮にボッキュボンが最高だと言われてもコルセット装着した感じで砂時計の様な体型に無理矢理するのは有りなのかと言われると返答に困る。
「ま、まあ、良いでしょう。本題に入りましょう。水霧様、貴方はルド様の孫の滝宮仁柚との婚約を継続する為に火焔龍や光源龍等とまともに戦えるレベルに成りたい、と言う事で良いのですよね?」
「……それがどうした? ルド様に話を通して居るのだし、それはわざわざ確認が必要な話か?」
「いえ、此処からが提案なのですが、水霧様が条件を飲んでさえくれれば水霧様に酒池肉林をこれから先私達の出来得る限りの間酒池肉林を与えると約束しましょう」
「…………で、碌な対価の条件じゃ無いだろうけど、俺に飲ませたい条件はなんだ?」
「水霧様が滝宮仁柚様との婚約を破棄する事と、ルド様の後継者の候補の辞退です」
「……ふざけているのか?」
「いいえ、大真面目です」
継続的な酒池肉林を提供してくれる、か。……だがそれの期間設定も相手が勝手に決められる言い方だし、飲んだのに短期間しか酒池肉林が無い結果に成りそうで、それで婚約破棄は大損過ぎる。
「……其方のそれを俺に提供する事によるメリットが解らん。幾ら条件が上手かろうと、乗るのは不味い検案だと判断させて貰う」
「いえ、簡単ですよ。私は要するに他のルド様の後継者の候補者からの使いですから」
つまり、これから先の展開で俺と直接戦うのが嫌だから、先に俺を買収して継続的に飼い殺そうって事ね。
「……あのさぁ、此処で言う酒池肉林がルド様の後継者に成る事で得る物で実現される物だった場合、自分でそれに成った方が多くの物を得られる訳。それを渡すから諦めて妥協しろと言うにはこれだけじゃ足りないよね? 何時でも終了出来る待遇条件なのだし」
「……水霧様、貴方ホモだとか有ります?」
「失礼な。ノーマルだよ、俺は。女が好きだし、男だよ、俺は」
……身体を色々と自由に造れる都合上女の身体にも自分の身体を調整出来るから、もう両性扱いでも良いかも知れんがね。
「なら酒池肉林を普通蹴ります?」
「話を聞いて居なかったのか? 俺がそれで諦めるかどうかはともかくとして、もっと良い物を狙える環境を捨ててまでそれで妥協するに足る良い条件を持って来い。以上。話は終わりで良いな。それじゃ帰らせて貰う」
そしてこの件について外に居たルド様に文句を言い、その後帰宅した。
帰宅後、ケールハイトに交渉された件を話して、その相手の見た目が不気味の谷状態に成って居た事を話すと。
「人に貼り付けるホログラムの見た目を造る仕事と言う物も有るそうです。やって居る事はほぼゲームのグラフィックデザイナーみたいな物ですけど」
「へぇ、そんなのも有るのか。じゃあ何で不気味の谷状態に成って居たのやら」
「その不気味の谷が原因です。それをクリアする見た目を造る事がまず難しい上、他人に自分と同じ見た目を使われたく無ければクオリティにもよりますが、通常の見た目の相場の千倍以上の対価を払わないと駄目なのですよね」
「あー、成程。同じ見た目のグラフィックを売る側が他の奴にも売る権利を購入者に渡す対価が相場の千倍の対価、ね。千倍と言う事は千人其処らに売れる想定価格か」
「はい、そうなります」
「……つまりそれを払わないなら自分で作らないと量産顔にしか出来んのか……あれは自分でやった結果か」
う、うん。グラフィックを自分にナノマシンで疑似的に貼り付ける事で自由な見た目に成れる。但し、相応の対価を払わなければその結果がアレな見た目に成らないとは言って居ない、か。世知辛い……。
「但し、それでも自分でやる人はそれなりに居ますね」
「なんでだ?」
「顔とかの整形手術を元の身体を残したままで幾らでも自由に出来る様な物ですから」
「そう言う事ね。それは確かに需要が有りそう。整形失敗を恐れる必要が無い訳だし」
「後、値段を抑える方法もなくは無いです。自分をグラフィックの元ネタにするのです」
「……他種族とかの本来有り得ない見た目に成れる事が見た目の変更の強みなのじゃ無いのか?」
「早い話有名なメイクリストとかに特殊メイクとかをして貰って自分の見た目を盛れるだけ盛って貰ってから、それを創って貰うグラフィックのベースとしてデザイナーに提出すれば良い訳です」
「つまり、オーダーメイドの依頼か」
「はい、そうですね。量産型の見た目を依頼するよりかは当然値が張りますが、ベースが零から依頼するよりかはかなり掛かる値段を抑えられます」
「ふむ、それならまだ現実的では有るのか……」
「ま、自由な見た目に成れるので大掛かりなコスプレが簡略化も可能に成りましたが、故にコスプレした状態で犯罪行為を行う事で見た目の変更を変装代わりに使う奴も居るそうです」
「それは不味く無いか?」
「ルド様がナノマシンを配布する際にナノマシン自体に仕掛けをして有るらしいので、基本的には特定は簡単だそうですが、他者からナノマシンを強奪なり横流しなりして貰い、それだけを使い犯罪を行う、くらいはされてしまう様です」
「……いやそうすれば簡単だとは言うがね、もし強奪パターンでそれをしたいなら、強奪に自前のナノマシンの利用をしたらそこから特定されて台無しだろ? ナノマシンでのアレコレをナノマシン無しで対処して倒して奪え……それで奪える奴がわざわざナノマシンに頼る意味有るのか?」
「横流しルートは潰せますから、問題としたら其方だけなのですよね」
「うわぁ……」
顔を隠した状態で犯罪を行うと言うのは割とテンプレだけど、見た目を変えられる物が有るのでそれで身元不明状態で犯罪します、は、ナノマシンの大本側つまり、ルド様がナノマシン自体に仕掛けをして居る為に不可能、か。
まあ、現物としてある以上はナノマシンに仕組まれて居る特定の為の物を排除した物を別に零から組み上げるくらいは出来そうでは有るが、一般品のナノマシンに特定の為の物が組み込まれて居るのなら、いきなり壊れた時とかもなんか情報取られてそうなので、そう言う物が有ると普通にバレそうだし、此方と微塵も関係無い他所で勝手に使うくらいは出来ても、ルド様がナノマシンを配って居る範囲の奴にナノマシンで攻撃したら即バレしそうでは有る。
「ナノマシンで大抵の事が出来る……としているとは言え、機構が必要な奴の全部盛りはナノと言う売りでは流石に難しいみたいなので、相性ゲー的な意味で奪って来る奴は居るそうです」
「……うーん、そう言われてみればルド様に戦わされた奴は全部盛りすれば良いのにされて無かったし、それっぽいな。だけど、壊したら即バレしそうだし、GPSも有るのも有り得るだろうから足も付くだろうし、それにどうやってナノマシンを壊れた判定に成らないレベルにしか分解せずにナノマシンの精査をするよ?」
「それは机上の空論的には機械で全部スキャンをしたら行けるのかも知れません。もっともそれで技術の丸パクリが出来る技術が現実に有るなら、大抵の商品を買うなりレンタルするだけで造れる事に成りますが」
「それは流石に盛りすぎだな。うん、色々と無理が有りそうだ」
完全な余所者がナノマシンを奪う行動を取る流れなら、最初はそもそも使い方も解らない状態なはずだから、奪われた奴は使い方を把握するために早々には殺すまい。ナノマシンが壊れたらルド様側に認識されると言うなら隠して置いたナノマシンを壊すだけでも擬似的な通報には成りそうだし。
ま、ナノマシンだけ奪って使い方を聞きすらせず持ち主殺して研究してどうにかするよ、と言うアレな奴も出る気はする。
現地で即座に解析完了してナノマシンを捨てていくのでも無ければ強奪犯がわざわざGPS抱えて逃げる様な物だからアレだけども、即座の完全解析が出来るならそもそも遠目に見るだけで済む能力持ちかも知れんから強奪犯に成る必要自体が無いパターンも有ると言う。
ナノマシンの群れはそもそも攻撃の当たり判定が極小+電子シールド持ち。だけどそもそもの話として電子シールドを貫通出来るレベルの高火力な範囲攻撃をされたらアレでは有るし、破壊自体は能力や特殊な武器が無くとも電子シールドを壊せるレベルの広範囲に爆風が行く爆弾を頻繫に使えば済むと言う意味で絶対では無い。そう言う意味でメタ創作的には攻略自体は簡単で有る。まあ、現実で高威力爆弾の大量所持とかアレだと思うし、電子シールドの防御力なんてそれを壊せる威力が有る、で、無視されるだろうからね。ま、この理屈を是としたら耐久力や防御力で如何にかしているタイプの奴は全員一律で産廃な訳だが。そう言う意味に置いて俺は理由付けも何も無い水掛け論での回答は創作的にはゴミだと思う。作者の匙加減次第で決まる事だろとも思うしね。
「それはともかくとして、他の後継者候補対策をやりませんか」
「実際、初手に搦め手みたいな事されているのに普通に勝てるしとか主張されても……って感じでは有るが、一応候補者に選ばれるだけの事は有るのだろうしね」
「別に騎士道こそ至高と言う訳でも無いですよ」
「普通に戦って倒せば良いじゃ無く、搦め手をする事を前提に考えて居るのに無条件で格上だ、みたいな主張をされても違和感が有るのだよね」
「別に作戦を組むのが悪い訳でも無いですし」
「ま、そりゃそうだが、仮に歯牙にもかけないレベルで此方を雑魚認定にしていたら普通酒池肉林を与えるなんて言うか? まあ、早々に取り止めに成るだろう条件だったけど」
「戦わずにして勝つ事が出来れば上々では?」
「……あー、ならダメ元で試されたパターンかね? まあ、それは良いや。ナノマシン関連の此方が使って無い方法を使って居るならアレでは有るのだが、どんな物を使って来るか」
「ルド様に聞けば解るとは思いますが、それだと公平では無いですよね」
「ダメ元で聞いてみよう。他は聞いて居たのに自分側だけが聞いて居ませんでしたとか成るとアレだし」
「解りました。じゃあ今日は聞く話を色々と煮詰めて明日ルド様に会いに行きましょうか」
「了解、じゃあ先ずは……」
そして話し合いを行い、聞く事を決めて行く事にした。
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翌日、ルド様に俺だけ会いに行く事にした。……と言うかルド様がケールハイトには来るなと言ったのだ。……ケールハイトに聞かせたく話でもするのだろうか? まあ、良いそして現地に着きルド様に話を聞くと。
「ある程度の基本的な話はして居るが、基本的には聞いた奴が対象の専門メタを貼れるレベルには話してはいない。だが、候補者同士での連携に依る情報共有が有るなら、其方は知らん」
「……ふむ、では基本的な話を聞いても良いでしょうか?」
「大筋ナノマシン関連の利権狙いの奴が多いかな」
「では仁柚の件は?」
「……まあ、好きだと主張しては居る事は居るが、大方後継者を名乗る上で俺の孫の嫁に成るのは都合が良く、悪く言えば政略結婚狙いだろう」
「……それが成立するとアレな事に成りませんか?」
「まあ、そうだな。俺のコネ狙いなら彼女に下手な事やれば、俺に泣きつかれて身も蓋もねーから、酷い事には成らない気もするけど」
「……いや、政略結婚狙いだろと言うのが解るなら何故止めさせないのですか?」
「それを頑張るのは水霧の仕事だろ。それとも水霧に彼女を嫁にやる事の意味を無くせとでも?」
「……それで俺がミスした場合に仁柚が酷い事に成っても良いと?」
「俺頼りで自分では彼女を守れないのなら、そもそも仁柚をお前の嫁にする意味がない事は忘れるなよ?」
「…………ナノマシン関連の利権狙いと言う事はナノマシン関連の技術が凄いと言う事で良いのですよね?」
「さて、どうだろう?」
「一度帰らせて貰います」
「明日例のから再交渉の話が来ているから同じ時間にまた来い」
「……はぁ、解りました。ではまた明日」
そして帰宅してケールハイトと話し合う事にした。




