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チームプレーをするには

近衛の三塁打でDチームが早くも先制点のチャンスを得た。


「ヨシ、これでノーアウト三塁…犠牲フライで1点。

いや、ボテボテのゴロでもオレの足ならホームイン出来る」




ピコーン…



すると頭の奥から音が聞こえる。



「ん?何だ、この音は」



目の前にステータスが表示された。



【特殊能力に《ミスタートリプル》が追加された!】




「ミスタートリプル??トリプルって…三塁打打ったからトリプルだってか?」



ミスタートリプルとは、三塁打になる確率が高くなる能力の事らしい。



ホームランより難しいと言われている三塁打だが、とにかく特殊能力が一つ増えた。





「さぁ、何としても1点取ろうぜっ!!」



塁上から檄を飛ばす。



(まぁ、1点は取ったも同然だな)




これが今までの世界ならば、近衛の読み通りだっただろう………………………………………………







しかし、ここは異世界。



後続の3人が揃いも揃って連続三振を喫し、チャンスはあっという間に潰えた。









「ウ、ウソだろ…」



近衛は塁上で呆然としている。




まさか、8番 9番 1番の三者連続三振だなんて、誰が予想出来よう。




「オイ、テメーら!」



近衛はベンチに戻ると、声を荒らげた。




「アァ!何だ、テメー!」



ゼッケン86番を付けた9番バッターが振り向いて凄む。




「何だじゃねぇだろ!せっかく三塁にランナーいるのに、何も考えずブンブン大振りしやがって!

もう少し、状況に応じたバッティング出来ねぇのかよ!」




どんな場面でもブンブン振り回すバッティングでは勝てないし、点も取れない。




アイリーンの言う通り、この世界は草野球レベル、もしかしたらそれ以外なのかもしれない。




「状況に応じたバッティングだぁぁ?!ああいう場面こそ、一発狙うのが当たり前じゃねぇか!

テメーこそ、ふざけた事言ってんじゃねぇぞ、コラァ!」




「な、何っ…」



開いた口が塞がらない。




(バカか…コイツら、チームプレーって概念が無いのかよ)




近衛自身もさほど勝敗には拘ってなかったのだが、あまりにも雑な攻撃に思わず腹が立ってしまった。




「おい、止めろ!何やってんだ試合中に!」



「早く守備につけ!」



コーチやチームメイトが仲裁に入った。




「クソっ、何なんだコイツは!マグレでヒット打ったからって、いい気になってんじゃねぇぞ!」



ゼッケン86番が吐き捨てるように言うと、グラブを持ってベンチを出た。






「ったく…これじゃ、勝ち目はないな」



どうせなら、敗けるよりは勝ちたい。



野球はチームプレーだ。



個人プレーだけでは勝てない。



勝つにはチームプレーが必要だ。




「とは言えなぁ~…やっぱ、勝ちたいし」



どうやったら勝てるか…レフトの定位置でそんな事を考えていた。



(ん、待てよ)



ふと後ろを振り向いた。



スタンドの最前列では、ミリアが書類を見ながら時折グラウンドに目を向けている。




(そうだ、いい事思いついた!)



「おーい!」



ミリアを呼んだ。




「ん?ちょっ、キミ…試合中よっ!試合に集中しなさいっ!」



「集中しろったって、コッチにボール飛んでこないからヒマなんだよ」



「だからと言って、試合中に話しかける選手なんていないわよっ!」



「ちょっと聞きたい事があるんだよ!」



フェンス手前まで近づき、背を向けながら話を続けた。



「何よ、聞きたいことって…」



「アンタ、トライアウトの責任者だろ?何人採用するつもりなんだ?」



合格の人数を知りたかった。



「えぇーっ?合格者の人数を知りたいの?

…それは、ホントは教える事は出来ないんだけど…」



「頼むよ、そこをなんとか教えてくんないかな?」



「え~っ…」



ミリアは困った表情を浮かべる。



「…分かったわ。その代わり、誰にも言わないでね」



「大丈夫だよ、信用してくれ」



「信用出来そうもないんだけど…まぁ、いいか。

一応3名の予定だけど、全試合終わってみないと何とも言えないわね」



合格人数は3名。アイリーンは近衛が合格するのは確実だと言う。



そうなると、残りは2名。



「なる程、3名の予定か…ありがとっ!」



「絶対言っちゃダメよ!」



近衛は手を挙げ、定位置に戻った。



(アイツを仲間に引き入れて合格させよう)



めぼしい相手を見つけた。


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