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デッドボール

群馬ブルーソックス対名古屋レッドウィングス


前橋グリーンフィールド




6回の裏、1対2でレッドウィングが1点リード。


レッドウィングスの先発はローテーション2番手の石田。


今年は8勝を挙げ、防御率は2点台と安定した成績。



ブルーソックスはツーアウトからフォアボールでランナー一塁という場面。



ここでブルーソックス塩田監督は代打に近衛を送った。



「いいか、カツヤ!何がなんでも塁に出ろっ!!出なきゃ、二軍行きだからなっ!分かったか?」




パワハラまがいの激励に近衛は萎縮してしまう。




(オイオイ、マジかよ?今まで代走や守備固めばっかで打席に立ってないのに、何がなんでも塁に出ろって…)




近衛は一軍に帯同してるが、その殆どは代走や守備固めで一度も打席に立っていない。



まぁ、それだけ近衛のバッティングに期待が持てないという証拠なんだが。




「は、はぁ…」



バットをギュッと握り、深いため息をつきながら左打席に向かう。




【ブルーソックス、選手の交代をお知らせします。

7番山田に代わって、近衛…7番ライト近衛。背番号59】




場内アナウンスが近衛の代打を告げる。



ブルーソックスというだけあって、ヘルメットからユニフォームまで青で統一されている。



打席に入り、やや緊張の面持ちでバットを上段に掲げる。



近衛のバッティングフォームはスタンダードなスクエアスタンスからグリップの位置を顔の高さまで上げる。



右腕が口元を覆い、表情が見えないせいか、相手投手には不気味に感じる。



とは言え、それは二軍相手に通用するのであって、一軍の投手相手には単なる小細工にしか感じない。



これが一軍初打席となる近衛、心臓の鼓動は速まるばかりで平常心でいられるハズが無い。




(打てなかったらどうしよう…三振したら、凡退したらどうしよう…)




こんなネガティブな気持ちで打席に立ってヒットなど打てっこない。




対するマウンド上の石田は余裕綽々で近衛を見下ろす。




「打てっこねぇよ、一軍半のヤツにオレの球は」



石田がサインを出した。



いつもなら、正捕手の関本がサインを出すのだが、ルーキーに等しい相手なら問題ないだろうという事で容認した。




(ヤッパ、最初はストレートなのかな)



自分みたいな実績ゼロの選手に変化球から入るなんて有り得ない…そう思い、ストレートにヤマを張った。



近衛の得意なコースはインコースやや高めのゾーンだ。



もしこのコースに投げたら、初ヒットも夢じゃない。




そう思い、微かな期待を胸にバットを握る力が強くなる。




石田は一塁ランナーには目もくれず、セットポジションからのクイックモーションで初球を投げた。



案の定、ストレートだ。



(ストレートだ、よしもらった!)



スイングの始動に入った。



だが、石田は力んだのか、ボールは近衛の顔面付近へ。



「や、ヤバっ…」




次の瞬間、「ドゴッ!」という衝撃音と共に近衛が崩れ落ちた。



右側頭部へボールが直撃。ヘルメットが吹っ飛び、その場に倒れ込んだ。



「おい、大丈夫かっ!」



「しっかりしろっ!」



チームメイトやトレーナーが倒れている近衛に駆け寄る。



たが、近衛は倒れたまま動かない。




「石田っ、危険球で退場だ!」



主審が危険球退場を宣言する。



「クソっ、やっちまった…」



帽子を取っていた石田は近衛を一瞥すると三塁側ベンチへ引き揚げた。










(うぅ…頭がグヮングヮンする…おまけに身体が言う事きかない…まさか、オレここで死ぬのか?)



耳鳴りがして、周りで何を言ってるのか聞き取れない。



しかも脳震盪を起こしているせいか、動かしたくても動かせない。




(あぁ~、何だか視界がボヤけてくる…)




視界の端から徐々に暗黒が覆い、やがては視界全体を覆った。





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